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『最前線のリーダーシップ』(その1) [読書日記]


最前線のリーダーシップ

最前線のリーダーシップ

  • 作者: ロナルド・A・ハイフェッツ、マーティ・リンスキー
  • 出版社/メーカー: ファーストプレス
  • 発売日: 2007/11/08
  • メディア: 単行本

内容紹介
ハーバード大学ケネディ・スクールの英知を竹中平蔵が監訳。
変革プロセスの最前線に身を置きながら、そのプロセス全体を鳥瞰し、反対派のさまざまな行動に対して戦略的に対処して、変革プロセスを生き永らえさせ、人々が課題と向き合って自らを変えていくための環境をつくりこんでいくという、リーダーシップの本質的な作業を非常に的確にとらえている(竹中 平蔵)。

まだ読み終わっていないのだが、この本は相当に面白いので、今回は第1部として途中まで読んで気になったところを幾つか紹介してみたいと思う。

実はこの本、竹中平蔵氏監訳となっているが、実際の翻訳作業をやったのは「ハーバード・MIT卒業生翻訳チーム」である。このメンバーの中に、僕の元部下がいて、紹介されたので読んでみることにした。その元部下は社員としてはとても有能で、うまく育ってくれれば僕なんかよりも数段いい仕事をして会社の業績に貢献してくれるだろうと期待していたのだが、会社の留学支援制度を使ってハーバード大学に行き、留学期間中に転職を決断した。我が社にとっては大きな損失だが、他方でこういう本の著者の講義に触れてしまうと、我が社のやっていることが見劣りしてしまい、もっと広いマーケットで勝負してみたいと思ったとしても仕方がないだろうなと思ってしまった。

幾つか印象に残った記述を挙げておきたい。

トップのリーダーシップ不足に不満を述べるだけで、権限のある職に就くまで行動を先延ばしにするようであってはならない。どこで働き、どんな生活をしていようとも、自らのできる範囲で困難な挑戦に取り組む人々が、組織や社会には必要なのである。(p.17)

我が職場を見回してみても、リーダーシップを発揮して欲しいなと思うような人が、管理職にその役割を押し付けてしまっているというケースがよくあるような気がする。「そんなのは担当の仕事でしょ?なんで忙しい管理職を駆り出すの?」と思うことは多いし、往々にしてそうやって駆り出された管理職の対応振りに不満を述べられることや、そもそも会社の体制が悪いという話になってしまうことが多い。

それに輪をかけるのは、そうやって自らが駆り出されることを是とする管理職がかなり多いことである。僕の業界でよく耳にする言葉の1つに「マイクロ・マネジメント」というのがあるが、現場で起きていることを全て把握していないと気がすまない、部下の仕事振りの一挙手一投足が気に入らなくて直しを入れるというタイプの管理職は結構いる。

責任ある立場に立てば、いつでも答えを知っていることを期待される。問題の解決を期待された責任者は、多くの場合、そのプレッシャーの中で、根本的な解決につながらないまやかしの答えを提示してしまう。あるいは、人々を失望させ、別のリーダーなら問題を解決してくれるという期待のもとに排除されてしまう。(中略)適応を必要とする問題を、あたかも技術的な問題であるかのように扱うことで危険を避けようとする場合が非常に多い。これが社会にリーダーシップよりも日常業務のマネジメントがあふれている理由である。(中略)リーダーシップを発揮しようとして失敗する最大の理由は、適応を必要とする問題を技術的な問題のように扱ってしまうことにある。とくに権威ある立場の人が、この間違いを犯しやすい。難しい局面で、皆が指示と保護と秩序を期待するとき、この判断ミスへの誘惑は強力だ。(中略)適応を必要とする問題に立ち向かうには、人々が持つ権威への誤った期待を改め、現実と向き合い、能動的に学習と変化に参加するように人々を促さなければならない。過度の依存心を是正し、彼ら自身に備わった問題解決の資質を呼び覚まさねばならない。これには並外れた存在感と巧みなコミュニケーション、時間、そして信頼が必要になる。(pp.30-31)

ここで取り上げられているエクアドルの元大統領の事例は特に示唆に富んでいた。僕はこれを、リーダーなら技術的な問題は部下に任せて、自分自身は組織の適応を助ける仕事に専念すべきだというメッセージと受け止めたが、こうした点から見ると、僕が今まで仕えた上司の中に、こうした使い分けがそこそこできたという人は非常に数が少なく、管理職の端くれである僕自身も、そうした意識は持ちつつも結局のところは技術的な問題に埋没してしまっているような気がしてならない。

組織は社会において権威ある立場にいると、問題の技術的な側面に注力することを求める強いプレッシャーを内側から浴びることになる。(中略)一方で、正解のない、人が触れたがらない問題に手をつけることは、少なくとも短期的には報われない。喝采のかわりにブーイングをうける。(中略)リーダーシップには、そうした敵意にも耐えながら、人々との心のつながりを保つ力が必要だ。(中略)問題が技術的であるということは、確立された解決策が仕えるということである。一方で、適応が必要な問題を解くには、組織や人が変わるしかない。(pp.34-35)

実際、適応が必要な問題の本質はわかっているつもりでいても、具体的な方法論になってくると僕自身の努力が足りないと思うところも多い。僕が最も苦手とするのはおそらく仲間を増やしていくことだろうと自己分析している。

たとえ絶大な権限と強力なビジョンを持っている人であっても、コミュニティのなかに根本的な変革をもたらそうとするときには、パートナーを必要とするのだ。(p.118)
物事を1人で進めるのは間違っている。あなたも事前打ち合わせのような周到な準備をすることで、自分自身と自分のアイデアを生き延びさせる可能性を高めることができる。(中略)その過程で、自分に協力してくれそうな人々に何を求めるのかをはっきりさせておく必要がある。そして彼らがどこまでなら協力してくれるのかを把握するためには、彼らがすでに持っている協力関係やその協力相手に対する責任感の度合いを知っておく必要があるのだ。(p.123)

同様に、僕は自分のアイデアに対して反対の立場を取りそうな人に対するアプローチの仕方が下手くそである。誰だって耳障りの良くないことを言いそうな人とは付き合いたくないし、できれば避けて仕事できればと思ってしまうのは真情だろうが、そこを克服していかないと組織に新たな変革をもたらすことはできないのだと本書は示唆している。

たいていの場合、あなたの取り組みに反対するのは、あなたの成功によって最も多くを失う人々だ。逆にあなたの協力者は、失うものが最も少ない人々だ。反対する人々が立場を変えることは、自分の帰属するグループや仲間を裏切ることになり、それは大きな犠牲を伴う。一方で、あなたとともに歩む支持者は、そうした犠牲を払う必要はない。だからこそ、思いやりという意味でも、生き残り計画を成功させるための戦略という意味でも、反対する人々に対してより多くの注意を払うべきなのだ。(p.129)

続きは別の記事としてまた紹介する。
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コメント 1

marukyuu

自分も買いました!
リーダーシップを研究するには
最高の一冊です!
by marukyuu (2008-05-25 21:53) 

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