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公務員のデジタルリテラシー [ブータン]

デジタル王国ビジョン実現にはデジタルリテラシーが課題
Research finds digital literacy vital to achieve Digital Drukyul vision
Kuensel、2022年1月22日(土)、
https://kuenselonline.com/research-finds-digital-literacy-vital-to-achieve-digital-drukyul-vision/
【要約】
1)王立ブータン研究所(CBS)が行った「国王の掲げた『デジタル王国(Digital Drukyul)ビジョン実現に向けたブータンの準備状況」という調査研究によると、公務員の80%以上が自身のICT技能は基礎なしし中級レベルだと回答、デジタル王国実現に向けデジタルリテラシー向上のための研修を情報通信技術局(DITT)が行っているものの、その有効性には疑問符が付く結果となった。

2)調査を主導したCBS研究員によると、デジタル化に向けた準備として、信頼と自信が一体となった学習環境の提供が必要であり、もはやデジタルディバイドとはデジタル技術へのアクセスの度合いに限定されるものではなくなってきているという。デジタルリテラシーはより包括的に、知識の融合やデジタル技術の利用、操作といった面も含めて、デジタル的に包摂的なコミュニティを作るための個人レベルでの受入度合いを示すものであるべきで、それがデジタル王国の実現に寄与するのだと指摘する。

3)この研究は質的調査手法を用いて行われ、100人が参加。うち公務員は50人、非公務員50人から構成される。参加者は、コンピュータとインターネットのスキル、オンライン上のセキュリティや保護への意識、インターネットバンキング、メディア活用スキル、電子政府などについて、その理解度が比較された。

4)結果として、情報探索に必要なデジタルスキルの欠如や、教育、ビジネスサービス、異議申立、市行政サービスといった政府の提供するオンラインサービスを利用していない現状が確認された。こうしたオンライン化されたリソースがあるにも関わらず、国民があまたあるインターネットのサイトを効率的に活用するためのナビゲーションを困難にしている。人々がこうしたサービスを利用するよう訓練されていない現状が指摘されている。報告書は、政府がこうした技術の利活用を適切にガイドし、官公庁において追加的な人的能力開発の取組みを進めるようイニシアチブを取るべきだと提言する。
*後半に続く

5)また、デジタルリテラシーが最も低かったのは、データベースアプリの利用とネットの安全性への意識だと報告書は指摘している。いくつかの文献レビューによると、デジタルリテラシーのある側面についての向上は他の側面でのリテラシー向上にもつながるという。特に、ネット閲覧やデータ共有中のネットの安全性の普及啓発の必要性が強調される。

6)ブータンではオンラインによる公共サービス提供の改善に向けた努力として、各種電子政府イニシアチブを採用してきたが、調査結果によると、インフラとアプリとシステムが整備されたからといって、これらのイニシアチブの成功は保証されないとも指摘されている。政府機関の間で会ってもデジタルリテラシーは低く、電子政府イニシアチブの実行を妨げている。

7)デジタルリテラシーは、農村部で低い。政府は様々なICTイニシアチブを打ち出してきたが、農村人口の大半はそれらのサービスやイニシアチブを承知していない。e-Kaasel、BoLT、司法サービス、教育サービス、市役所行政サービスといった、一部の特定のサービスは確かに利用されているが、農村部ではこれらはほとんど利用されていない。これらのことから、報告書は、「単に技術へのアクセシビリティの改善だけではデジタル王国の目的達成にはつながらない」と結論付ける。

けっこう長い文章だったので、適当に段落をつまみ食いしてお茶を濁します。まあこの報告書の全文が読めたらもっといろいろわかるのだろうけれど、現在のところ、Digital DrukyulのHPにも、CBSのHPにも、それらしい報告書アップロードはされていない。

公務員の大半が自身のICTスキルを初級中級レベルだとしているのは、どこの国でも同じで、それほどブータンが悲観することでもない気がする。素朴な疑問として、1つはどんな質問項目で訊いたのかということ、もう1つはその質問項目に対して、残りの20%弱の回答者はどう答えたのかというのがある。「上級レベル」と答えていたなら、8対2の黄金律からいって想定の範囲内だと思うのです。

それでもこれが不十分だというのであれば、そもそもDigital Drukyulがどういったビジョンを描いているのか、何が目標達成を計測する成果指標と言えるのかを確認する必要があると思う。前述のHPを見てみたけれど、掲げられている成果は「~に取り組んだ」という投入ベースの指標になっていて、これをやったからブータンが「スマートで包摂的な社会に変革される」というのは、ちょっと理解しにくい。

もっと言うと、政府の「フラッグシッププログラム」というのはDigital Drukyulだけではない。例えば僕がこちらで関わっているプロジェクトは、「デジタル」と銘打っているけれどもDigital Drukyulというカテゴリーには紐づかないが、他のフラッグシッププログラムのコンポーネントとしてなら位置付けが可能である。そもそも使いようによってはいろいろな分野や課題で利活用が可能なのだ。

なんだか、デジタル技術を利用してスマートで包摂的な社会を実現していく取組みというのを、Digital Drukyulだけに担わせて、それで「公務員のデジタルリテラシーが足りない」と批判するのでは、Digital Drukyulがかわいそうな気もしてしまう。
タグ:ICT デジタル
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