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『問いのデザイン』 [仕事の小ネタ]

問いのデザイン 創造的対話のファシリテーション

問いのデザイン 創造的対話のファシリテーション

  • 出版社/メーカー: 学芸出版社
  • 発売日: 2022/10/21
  • メディア: Kindle版
内容紹介
ワークショップのファシリテーションとは「問い」と「対話」を戦略的にデザインすること。問題の本質をどう見抜くか。固定観念をいかに壊すか。どうすれば課題が自分事になるか。商品開発・組織変革・学校教育・地域活性等でファシリテーターに必要な思考とスキルを解説。メンバーを本気にさせ、チームの創造性を引き出す極意。
【譲渡】
初版が2020年6月に出された本。その直後に共著者の1人である安斎勇樹氏がメインスピーカーとして登壇するオンライントークイベントを聴講して、氏が本書を宣伝しておられたのを記憶している。トークイベント自体は、氏を知る人がインタビュアーになっていて、なんだか内輪で盛り上がっているイベントだなという印象があった。僕自身は全然存じ上げない方なので、そのトークイベントで何か学びがあったのかといえば、全然記憶がない。

そんな本を、なぜか2022年4月に日本から来られたうちのプロジェクトの関係者からお土産でいただいた。「関係者で参考にしていただければ」というので置いて行かれたのだが、そもそも日本語の文献を読める人間は現地には僕だけしかいないので、僕が読むことを期待して置いて行かれたのだろう。

人から薦められた本を素直にすぐに読むかどうかは、その時々の自分の問題意識の持ち方にかかっていると思う。いただいてから1年以上積読状態で放置していたのは、本書のテーマ的に緊急性がなかったからだし、今それを読んだのは、急にそれが必要だと感じたからだと思う。もっと早く読んでおけばよかったと思わぬでもないが、そこは忙しさとの兼ね合いもある。

で、なぜ急に今読んでおこうと思ったかと言えば、理由は2つある。1つは毎度のことながら、任期終了時に向けた積読蔵書の圧縮作戦の一環。そしてもう1つは、熟練のファシリテーターが行う地域の課題解決に向けたソリューションのプロトタイピングのイベントを、間近で見る機会があったからだ。

そのイベントとは、前の記事でも言及した、インドネシア・ジョグジャカルタ特別州で行われた「ファブ・キャンプ・チャレンジ」(9月17日~21日)である。5日間となっているが、参加者の移動日も含まれているので、実質的には18日~20日の3日間でリサーチからプロトタイピングまで終える必要がある、かなりタフなイベントだった。参加者の多くは、地元の大学に通う学生や留学生、地元の高校生、地方政府の職員等だった。僕は多少はデジタル工作機械を使えるし、CADも使いこなせるが、そういう人がチームに入っているケースは少なく、あとは地元のファブラボのスタッフが全チームのプロトタイピングのサポートをしていた。

このファシリテーターをやっておられた方はタイ出身の米国人で、今は日本在住という方である。名前は以前から存じ上げていて、7月にブータンでのFAB23でもお目にかかったが、実際に1つのイベントでご一緒したことはなかった。そのファシリテーションを5日間観察できたことは、実際のプロトタイピングの成果とともに、今回の僕にとっては大きな収穫だった。

そのプログラムの運営や、彼のファシリテーションのやり方を見るための枠組みを、本書は与えてくれたと思う。

経由地であるシンガポールで本書は読みはじめ、シンガポールからジョグジャカルタに向かう機中でも読み続けた。さすがにイベント参加期間中は、あまりにも時間がなくて読み進めること自体が難しかった。なにしろ朝7時には宿舎を出て、戻りはたいてい23時を回っていた。そのハード日程も短期集中型のプロトタイピングの醍醐味だといえる。そして、ようやく読み終わったのは、ジョグジャカルタからシンガポールに戻る帰りのフライトの機中でのことだった。

本書で描かれているワークショッププログラムの基本構造は、①新たな視点や知識を仕込む過程(導入→知る活動)、②意味を作り出し日常に持ち帰る過程(創る活動→まとめ)になっている。基本的に短期集中型のプロトタイピングのイベントもこういう構成になっていて、上述の「ファブ・キャンプ・チャレンジ」もそれをなぞって行われていた。

ただ、「まとめ」に関しては、まだイベント自体が終了して3日が経過した今も、まだ終わっているとの実感がない。確かにプロトタイプは作り、プレゼンもやった。インパクトビデオも制作した。でも、ドキュメンテーションは終わっていない。というか、全く進んでいない。それに気付いたのはイベント終了後のことで、僕がこの成果をブータンに持ち帰ってブータンでこのプロトタイプを複製してみようとする場合、参考にできる文章が現在は存在していないという状況が今も続いている。

悪く言えば、プロトタイプを作ったけれども作りっ放しで終わっているのが現状だ。そこはファシリテーターや主催者も再三リマインドしていたところではあるけれど、参加者への意識付けが十分されていなかったように思える。

こうして人の行ったファシリテーションとワークショップを一参加者として見てみて、次のステップは自分が10月に主催するワークショップで実践してみることだ。もうしばらくは本書は座右に置いて、ワークショップのデザインと、ファシリテーションを行うにあたっての心得を振り返り、実践につなげたいと思っている。

その後?本書はブータンには残していくつもりはない。たぶん日本に持って帰ります。
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