『神と呼ばれる鉄道YouTuber スーツの素顔 』 [読書日記]
内容紹介【Kindle Unlimited】
スーツの生い立ちから、YouTubeチャンネルをここまで大きくした経緯や考え方、運営の方法などを紹介。ファンだけでなく、YouTubeチャンネルの運営に興味がある人にも役立つ内容。
スーツさんのYouTubeチャンネルを知ったのは昨年秋のことだ。僕は鉄道マニアではないため、そちらの方面で2016年頃から動画投稿を始められていたスーツさんを知る機会はまったくなかったのだが、逆に酷道だとか峠だとかを撮影した動画は気分転換によく見ていた。ドライブに飢えていたのだ。
それで、大阪・暗峠の急坂の様子を見たくてYouTubeページをザッピングしていたところ、2019年夏にスーツさんが挑戦していた「夏休み日本一周の旅」の第40日「暗峠を歩く あまりにも険しい勾配《夏休み日本一周の旅 大阪難波駅→近鉄奈良駅》」がヒットした。さっそく見てみたら、この子(スミマセン、どうやらうちの長男と同学年らしく)、トークが抜群に上手い。あの年齢にして、よくあれだけの蘊蓄が語れるなと思うし、何よりも話題を途切れさせないのがすごい。この旅の動画は撮りだめておいて後から編集したわけではなく、すぐにアップしていた筈だから、編集段階での情報収集にはそれほど時間をかけていないだろう。それでもあのクオリティなのだから、驚きが隠せない。
そして、暗峠編を視聴した後、さらに旅の終盤で北海道に再上陸して、苫小牧から襟裳岬、帯広、根室、釧路、網走あたりのルートは、僕が学生時代に北海道一人旅した際、通ったルートを逆走するパターンになっており、ここは懐かしくてスーツさんの全ての動画を見た。後付けだったので、視聴者数によって翌日の所持金の上限を決めるという彼のルールには貢献することはできなかったけれど、チャンネル登録はしたので、彼の収益には微力だけれど貢献はしていると思う。
僕が次に見たのは、彼が2021年5月に挑戦していた「【中山道の旅】自転車で行く 東京→京都 12日間」である。これと全く同じルートで旅したことがあるわけではないが、途中の桶川では僕は2年間暮らしていて街道筋は僕のジョギングルートだったし、岐阜県内で通る赤坂宿は、僕の実家から近く、高校時代の自転車通学のルートも一部被っている。そして何よりも、彼がこの電動アシスト付き自転車で旅していた頃、僕はちょうど故郷に長期滞在しており、残念ながら彼が赤坂宿を通過した日には東京の自宅に戻って入れ違いになってしまったけれども、僕がブータンに向かう直前に見たであろう故郷の風景を映像に収めてくれていたのである。彼がこの西美濃から近江に抜けて京都三条大橋にゴールするまでの動画は、昨年11月後半以降にアップされており、毎回新規公開されるのを楽しみに待っていた。
従って、僕は「スーツ旅行チャンネル」のチャンネル登録者59.1万人の中の1人だが、彼を有名にしたといわれる「スーツ交通チャンネル」の94.8万人の方には含まれていない。
それにしても、今こうしてチャンネル登録者の数を見てみると、とんでもないYouTuberだと言える。フォロワー数が2,000人もいれば就職採用するという会社経営者だっているような世の中で、間もなく100万人に到達するようなフォロワーを抱えるYouTuberというのはすご過ぎる。僕自身もたまにYouTubeに動画を上げることはあるが、映像アーカイブを作りたいと目的でやっているので視聴数を伸ばす努力はほとんどしていない。チャンネル登録者を増やすという方法でマネタイズを図るとしたら、動画編集やサムネの作成にも相当な時間と労力を費やさないといけないだろう。中途半端な気持ちではできないのである。
うちの長男と同い年の若者が、どうやったらこんなすごいYouTuberに育ったのか、興味津々で彼の書いた自叙伝を読んでみた。これは面白かった。段切りが少なく、文章もなかなか句点で区切らない彼の文体は、僕の文体ともよく似ていて僕的には読みやすかったし、何よりも、彼がYouTubeの動画でふだんしゃべっているのと同じ語り口調で文章も書いている。こういう文章の書き方をする人だから、あのしゃべり方ができるのだと妙に納得させられた。
また、育ち方を見ていても、親からあれやれこれやれと言われてそれを受け容れてきたわけではなく、自身で物事を考え、進路選択も自分でしてきた様子が本書からは伺えた。僕の目から見たらこうした成長の仕方は理想だったのだが、塾に入れて進路選択にもいろいろものを言いたい妻からすると受け容れがたいもので、今さらそれを言ってもしょうがないと思うしかない。
7月、うちの長男もようやく就職が決まった。ここから先は彼自身が考えて行動していくしかないと思う。ちなみに長男の就職先はある意味鉄道に関係している。小さい頃にやたら蒸気機関車に乗りに連れ出した影響が、今頃になって表れてきたようだ(笑)。
スーツさんのYouTubeチャンネルに登録している人や、そうでなくても彼の動画のファンの人は、彼の生い立ちからYouTubeを使った動画のマネタイズの仕方、日々怠らない彼の様々な努力など、読んでみたら動画の裏側が見られてきっと面白いだろう。話の内容は鉄道の方が圧倒的にウェートが重く、旅行の方のネタ、特に電動アシスト付き自転車での旅のことには一切触れられていない。そこは発刊がもう2年近くも前のことになるので、本書脱稿後、新型コロナウィルス感染拡大期でもできる動画撮影ネタとして「自転車」を思いつき、「東海道五十三次」を始められたのだろう。
こんなにいろいろなことを考えながら、動画アップされているのだというのを知るだけでも、僕らにとっての学びとなるだろう。
コメント 0