ビスケットの需要

地元の加工食品を売り込む
Promoting local food products
Changa Dorji記者（ワンデュポダン）、BBS、2022年7月13日（火）
http://www.bbs.bt/news/?p=172011

【ほとんど抄訳】
地元加工食品の振興に、ロベサに住む40歳の男性が立ち上がった。ビスケット製造プラントを立上げたのだ。地元で作られた5種類の穀物を使い、2種類のビスケットを製造するプラントだ。この地元産ビスケットは、今月市場に出る。

現在、このプラントにはインドから専門家が来ており、地元の人々に訓練を施している。ビスケット工場は人々に仕事の機会を与える。現在、トレーナーを含めて4人が生産に従事している。インドから来ている専門家は既に数カ月駐在し、機械操作からメンテナンスまで教えている。

オーナーにとっての懸案は市場開拓。オーナーによると、政府が地元産品の振興に途を拓いてくれていて、意欲ある起業家のエンパワーメントに努めてくれているという。オーナー曰く、「例えば、政府が公務員に働きかけて、夕食や会議、ワークショップなどの公的イベントの会場で、輸入スナック菓子に換えてドルック・オーガニックのビスケットを使ってくれたらそれだけでも大きな助けになります。」

ビスケット工場の設備投資には320万ニュルタムを要した。現在、ブータン農業食品規制庁（BAFRA）に登録された地元産ビスケット工場は３つある。

まあ、実際に市場にこの「ドルック・オーガニック」というブランドのビスケットが出回るようになったら、一度食べてみたいとは思うのだけれど、「ビスケットを作ってみたから食べて」と言われるケースはブータンでは意外と多く、国内でも競合はあるだろうなと思う。この記事で取材されているオーナーは、かなり政府への依存心を露わにしているが、愛国心に訴えるだけでなくて、ただでさえ予算が潤沢ではない政府に国産ビスケットを使えというのなら、価格的にも勝負になるというところは見せないといけない。実はそこがいちばん難しいのではないかと思われる。

インド産に比べた価格競争力に加え、「メイドインブータン」をアピールする工夫も必要だと思う。他のビスケットを見ても、ブータン産の穀物を使っていて、穀物の種類ごとにクッキーを作っている企業家を知っているが、消費者って、穀物の種類によって買ったりするのだろうか。僕自身はあまりに多くの場で出されるクッキーが胃にもたれるので、出されても食べないケースが多いのでよくわからないのだが、僕が手に取るか取らないかは、それがソバやコメでできているからという理由ではなく、甘いチョコクリームやバタークリームが挟まっているかどうかというのの方が大きい。

以下は、僕が個人的に面識があるクッキー工場の製品だ。クッキーの型を3Dプリンターで作ったらどうかというのは、ベーカリーの研修の話を聞くたびにいろいろな人に提案していることだが、実際にそれを作ってみたケースというのはここにしかない。



　

ただ、確実に言えるのは、おそらく生産規模的に全国市場に出せるほどの数量のビスケットを作ることは難しく、ロベサで起業するならプナカやワンデュポダンあたりの市場を狙って勝負していくのだろうという気がする。ティンプーは僕の知っているだけでもビスケットを生産しているベーカリーや工場が３つぐらいはある。また、ロベサであれば先月ファブラボが自然資源単科大学（CNR）の構内にできたばかりでもあり、クッキーの方とか、新しいクリームの開発とか、施設を使ったらできる商品魅力化の方策もあるのではないかと思う。

一方、こういう記事を読むと、障がい者だけを集めてスキル研修を施して、それで障がい者だけでグループを作ってベーカリーを起業させるような起業支援のモデルが太刀打ちできるとも思えなくなる。あそこでもここでも「ビスケット食べてって」と言われるが、おそらくこういう企業家が本気でビスケット生産に取り組んだら、障がい者だけで細々とやっているベーカリーのクッキーは、質的にも勝てないように思う。

この記事にある起業はどこの政府機関が支援したのかはわからないが、こういう取組みと労働省がやっているような障がい者の起業支援スキル研修がうまく連携していないから、こういう工場で障がい者に働いてもらえるようにしようというような発想になかなか至らない。そういうところは残念だなと思う。

タグ：3Dプリンター クッキー