SSブログ

『「探求」する学びをつくる』 [仕事の小ネタ]

「探究」する学びをつくる

「探究」する学びをつくる

  • 作者: 藤原 さと
  • 出版社/メーカー: 平凡社
  • 発売日: 2020/12/04
  • メディア: Kindle版
出版社からのコメント
経済・教育格差が広がるなか、子どもの生きる力を伸ばし、幸せな未来につなげる「探究」する学びをつくるにはどうすればよいのだろう。世界屈指のプロジェクト型学習を行う米ハイ・テック・ハイ校は低所得層の生徒が約半数だが大学進学率は96%を誇る。その教育プログラムを日本に導入した著者による探究の教科書。
【購入(キンドル)】
先月、首都ロックダウンの最中に出てみたオンラインセミナーの基調講演で、本書の著者が登壇されていた。FB友にも別の経緯から本書を紹介していた友人がおり、それで興味があってこの著者の登壇されるオンラインセミナーも出てみたわけだけど、やはり面白そうだなと思ってキンドルでダウンロードしてみた。

本書は全編を通じてハイ・テック・ハイ校の紹介ともいえる。現時点ではまだ著者が勧める2016年のドキュメンタリー映画『Most Likely to Succeed』を観てないので、見たらもっと理解できるような気がするし、同じく著者が度々引用している同校の教員がまとめたプロジェクト型学習(PBL)の実践ガイドを読めば、同校における「本質的な問い」の立て方ももっと理解できたかもしれない。少なくとも次のステップで何をやったらいいのかが少しわかっただけでも、前進だと受け止めたい。


Hands And Minds: A Guide To Project-Based Learning For Teachers By Teachers

Hands And Minds: A Guide To Project-Based Learning For Teachers By Teachers

  • 出版社/メーカー:
  • メディア: ペーパーバック


本書をこのタイミングで読んで良かったと思えたのは、僕が今お手伝いをさせてもらっている東京の某私大が正規の学部学科のカリキュラムとは別途行っておられる学内横断型プログラムが、HPのプログラム概要を読んでもそれとは明記されていなかったけれど、明らかにPBLだというのが理解できたからである。

ちょうど、ブータン側関係者向けに英文で説明できる資料を作っていて、このプログラムをどう説明しようかと考えていたところに、タイミングドンピシャで本書を読んだので、「ああPBLね」という感じで説明がしやすくなったと感じた。また、そこからわかる通りで、今後僕自身もPBLに関わっていくことになるということでもある。

だから、PBLの理解が少し深まったのは良かったのだけれど、こと実践となると、まだ僕にはよく理解できないところがある。

1つは、本書は12年生までの小中高生向けで、かつPBLを正規教育の時間割表の一部に組み込むのではなく、PBL自体が時間割表になっている学校の話になっている。一方、僕が準備で関わっている日本の私大のPBLは、大学の正規カリキュラムとは別途考えられているアドホックなプログラムだし、仮にPBLをこれから僕が配属されるブータンのCSTに組み込もうとしても、工学系の岩盤的時間割表がすでに存在する中で、どうやってPBLを組み込んだらいいのか、今のところは見当がつかない。夕方や週末しか使えないし、テストの前には学生に参加してもらうことも怪しい。フルタイムで2~4カ月というプログラムは、設計が難しいと思う。

2つめは、ハイ・テック・ハイはPBL自体が時間割表の大半を占めているから、理系の教員と人文系の教員がペアを組んでチームで生徒の探求プロセスをファシリテートするようなことが可能なのだと思う。また、著者は日本でも高校の総合的探求の時間とか小中学校の総合的学習の時間とかでもPBLの導入ができると仰っているが、その背景には、日本の小中高校にも様々な教科の先生方がいらっしゃるので、チームが組みやすいというのがあるように思う。それを、工学系の教員しかいないCSTでどうやったらできるのだろうか。人文系の先生は外部から招聘するしかないが、長期でコミットしてもらえる妥当性はない。教員もそうだが、学生にしても同じような属性の人が集まってしまっている状態で、どうやって多様性を確保したらいいんだろうか。

3つめには、百歩譲って本書は日本の小中高の教員には参考になると思うし、おそらくそれは大学の教員についてもそうだろう。でも、僕は元々教育の現場に携わってきた人間ではないため、本書の記述も、教育のバックグランドの人々の間では阿吽の呼吸でわかり合えるところが大きいとしても、僕にはやはりとっつきにくさは感じた。

思いつくところで最も現実的なのは、PBLの実践経験がある方々にくっついて自分自身も経験を積んでみるということなのだろう。もちろん、前述の某私大の学外学修プログラム自体がPBLなのだから、そこへの関わりの中で知見を得るのは当然のことであり、そういうプログラムの1つをプンツォリンに誘致して、CSTの学生や教員にも関わってもらえるのはありがたいことである。

そしてもう1つ。2月に「画期的な第一歩」という記事を書いた際、近々JICAの草の根技術協力プロジェクトで、チュカ県を対象に、「地域活性化に向けた教育魅力化プロジェクト~ブータン王国における地域課題解決学習(PBL)展開事業」(実施団体:島根県隠岐郡海士町)が実施される予定だとも書いた。チュカ県も広いので、実際の対象地域がどこなのかはわからないのだが、それこそPBLと銘打った事業が行われるのであれば、STEM系のパースペクティブも加えていただける余地をいただけたらありがたいし、試作が必要なら「ファブラボCST」をご利用下さいとも関係者の方々にはお伝えしたい。

JICAがそういう案件間のシナジーを考えられるかどうかという課題もあると思うが。

nice!(9)  コメント(0) 
共通テーマ:

nice! 9

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

Facebook コメント