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画期的な第一歩 [ブータン]


僕がブータン情報をご紹介する際の記事のほとんどは、クエンセル紙かBBSのHP記事をベースにしているのだが、本日はそれとは違う情報源―――JICAブータン事務所のFacebookの記事から引用したい。

記事によると、これはJICAの草の根技術協力事業「ブータン王国での美術指導力の向上とアートを通じた地域活性化プロジェクト」(実施団体:公益財団法人浜田市教育文化振興事業団)と、「地域活性化に向けた教育魅力化プロジェクト~ブータン王国における地域課題解決学習(PBL)展開事業」(実施団体:島根県隠岐郡海士町)の2案件に関する「キックオフ会合」だという。つまり、両国間の協力約束文書の署名式ではなく、これからも両実施団体がこれからも連携していくことだと僕は理解した。

同じ県に属していて、ご近所同士であったとしても、日本ではお互いの自治体が、限られた機会や人材、リソースを巡って、魅力を競い合っている状況だと思う。また、そこまでではないにしても、お互いに事業実施となったら組織のサイロ状態になって、ご近所なのにお互い何やってるか関知しないということはよくある。

現在実施されている草の根技術協力事業というのは、聞くところによると、浜田市の方はハやパロが対象となっているようだし、海士町の事業地はチュカである。お互いにこの事業の後ののスケールアップを考えるなら、隣県同士を事業地としているこの2案件は、最初から協力してくことを念頭に置くべきだ。

もっと言えば、同じ県内だからとか、同じJICAの国内機関が所管しているからとか、ブータン政府側が同じ教育省が所管しているからとか、そういう背景要因だけで2案件間だけで連携させるのではなく、同じ地域で過去に実施された案件や協力隊員の活動、あるいは同じ地域で現在実施されている案件とも、より幅広い連携を作って行って欲しいと思う。

例えば、ハ県ではJICAは別の草の根技術協力「ブータン王国ハ地域における地域に根ざした持続的可能な観光開発と人材育成プロジェクト」(実施団体:公益社団法人日本環境教育フォーラム)を実施し、民家でのホームステイ受入や地元産品をベースにしたお土産ものづくり等に取り組んだ。人口が少なく、狭い地域内で実施されている案件なので、浜田市の方もこの草の根技術協力のことはご存じであるに違いない。この協力でのレガシーを、ちゃんと活用していってくれることを期待したいところだ。

また、ちょっとないものねだりっぽいが、この事業のブータン側パートナー機関はパロの王立教育評議会(REC)だと思われるが、ここはSTEM教育のカリキュラム開発を担っている筈である。しかし、実態はCodeMonkeyを採用して小中学校でコーディングの勉強をやらせて、それでSTEM教育だと言っているところがあって、ちょっとSTEM教育の認識の幅が狭いと感じている。

僕が今こちらで準備している活動の中にも小中学校へのアウトリーチは含まれていて、僕はそこにTinkercadを使ったモデリングや、micro:bitやソニーのMESHブロックを使ったIoTワークショップを組み込みたいと考えているが、これって図画工作的要素が多分にあるんですよね~。「電子工作」という言葉を使ってしまうと他人事だと思われてしまうが、図画工作に電気電子の要素を組み込むんですよね~。

この草の根技術協力事業はパロにも事業地がある筈だが、パロに今年できるファブラボは教育教材研究開発を目的にRoyal Academyに創設される。入りづらい土地で「ファブラボ」と名乗っていいのかはなはだ疑問だが、美術教育のスコープを本当に「美術」と捉えて狭めない限りは、Royal Academyのファブラボは活用したらいい。

海士町の案件が動くチュカ県の方も、おそらくチュカ県庁の県教育官を巻き込んで教育魅力化を進めるのだろうと思われる。実は、僕がこちらに派遣されているJICAのプロジェクトもチュカ県をカバーすることになっており、1月のロックダウンのせいで立ち消えになってしまったけれど、チュカ県庁の県教育官を訪問して事業説明してこようとしていた。うちの場合はその取組みにCSTの学生を動員することも考えている。日本のケースを考えたら、STEM教育でのPBLは十分あり得るので、海士町のPBLにデジタルファブリケーション的ソリューションもできる要素を付け加えられたら、お互いwin-winになれると思うんですよね。

こういう、地域別の協力案件のクラスター化は、前回赴任時に自分が書き残して行った拙著の中でも試論を展開したことがあるのだが、そのためには、JICAの事務所が、案件担当者毎になっている縦割りを打破して、担当者間での横の情報共有や意思疎通を相当意識していかないといけないと思う。勿論、協力案件のクラスター化自体が支持されていなければ元も子もないわけだが。案件を実施する人々たち同士が現地でつながれるのは理想ではある。しかし、過去の経緯とかを相当承知している人でもない限り、現場同士で最初からそれを意識して活動を組み立てたりすることは難しいだろう。

◆◆◆◆

ついでにもう1つ付け加えると、どちらもブータン側のパートナーが教育省ということであるならば、2019年3月に、今のジャイ・ビル・ライ教育大臣は、大臣就任後の最初の外国訪問で、島根県の石見地方を訪ねているんですよね~。スポンサーがユネスコだったので、JICAとはまったく別の経緯での訪日だったわけだ。ユネスコがブータンでどういう動き方をしているのかがさっぱりわからないのだが、こういうユネスコの動きとJICA関係者の動きって、もっとうまく連動させられないものなのだろうかと当時思った記憶がある。

何ヶ月か前に僕が大臣とお目にかかった時、石見訪問の話をすごく懐かしく語っておられた。その時の記事を探してみたら、なんとYouTubeの動画すら存在した!


教育大臣にアプローチするのなら、「島根県から来ました」というだけで、すでに大きなアドバンテージがある。またもや同一県内の別の自治体との連携の話になるわけだが、石見地方との近しさをアピールすると、今の大臣には受けるでしょう(笑)。勿論、彼の選挙区はプンツォリンなので、チュカ県で事業する海士町にはすでにアドバンテージはあると思うが。

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