SSブログ

ペマガツェルの綿織物を買うには [シルク・コットン]

ペマガツェル県トンサ村の織物に買い手がいない
No buyers for weavers of Thongsa village in Pema Gatshel amid the pandemic
Thinley Dorji記者(ペマガツェル)、BBS、2022年2月8日(火)、
http://www.bbs.bt/news/?p=165497
Bura-trongsa-market-issue.jpg
【抄訳】
ペマガツェル県トンサ村の織り手は自分たちの織物の買い手を探すのに苦戦を強いられている。その原因として新型コロナウィルスを槍玉に挙げる。トンサ村の人々は何十年にもわたって綿織物を折り続けてきたが、こんな問題にはこれまで直面したことがなかったという。

ネミン・ダザさん(72歳)は長年にわたって織り手を務めてきた。彼女は60年も前にゴやキラの織り方を学んだ。15歳の時である。今は冬なので、畑仕事はない。ほとんど毎日織物に従事する。彼女は1年でゴを5、6セットは織り上げる。しかし、以前と違い、自分が織ったものを売ることが課題となりつつある。「買い手がいません。だから、織り上げた後、状況が改善するまで自分のところで保存しておくしかありません。これまで、買い手を探すのが問題となったこと等ありません。」
cotton-weave.jpg
別の織り手、プンツォ・ワンモさんはこう言う。「誰も買ってくれない中で、私たちも日々の出費に見合う収入を確保することが難しくなってきました。」この村の人々は綿を用いてゴやキラを織る。それが主たる収入源となっている。「他の収入源はありません。自分たちの織った衣服を売って得た収入で支出をまかなっているんです。」
Weaving.jpg
これまで、彼女たちは村を訪れた人々に織物を売ってきた。しかし、新型コロナウィルス感染拡大の中で、この村を訪れる人はまったく見られない。しかし、彼女たちは長年にわたる彼女たちの伝統を放棄することはない、時間が解決してくれると楽観的に見ている。ゴは8,000~9,000ニュルタム、キラは4,000~5,000ニュルタム程度で売られる。村には35世帯の住民がいる。

1月22日にトンサ村の綿織物の再興についてBBSは報じていたが(「ペマガツェル綿花栽培の再興」)、まだ2週間ほどしかたたないのに、今度はその綿織物が売れないと報じた。コロナ禍で人流が途絶えてものが売れなくなるのはそりゃそうだと思うので、なんでわざわざまた報道で取り上げたのか、ちょっと意外な感じもした。

この村の綿織物は、元々は自給自足のためのものだった。手間はかかるし、伝統的な器具を用いて手作業で織物にしていくので、品質が安定していない。それでも、自分たちが着るものだからそれはそれで許されていたと思う。僕自身が織物のクオリティを評価できるほど目が肥えているわけではないけれど、結構ゴワゴワした生地で、繊度が安定していないので、質的にどうなのかなと感じた。

そこに機械制製糸を持ち込んで省力化を図ろうとしたのが伝統工芸振興庁(APIC)だったわけだ。前回の記事はまさにAPICが導入支援した機械に注目したものだった筈だ。そして、機械制製糸を導入することで、綿織物の質は上がるかもしれない。

でも、今回の記事で意外だったのは、ここの村人が、自分たちで市場で売る努力をしていないという点である。誰かが外から買いに来たら売るというのでは、なるほど今の状況で売れること自体が期待できない。

ただ、そこでふと気になったのは、ここの村人に機械制製糸への移行を勧めたAPICって、生産の支援だけやって、マーケティングの支援はやらないのかという点だ。自動繰糸機の調達と設置を行うということは、自給自足ではなく商品作物化への移行を支援したということなのだから、市場へのアクセスについても支援も、APICで考えられて然るべきではないだろうか。仮に、APICがバイヤーと生産者の仲介ぐらいしかやらないのだとしても、せめて村人によりプロアクティブな販売努力についての意識付けぐらいはやってても良かったのではないだろうか。(一応、APICのHPには、市場アクセスの支援も彼らのマンデートの1つとして挙げられているようだが…)

そういうところまで突っ込んでレポートしてくれたら、このBBSの通信員もセンスいいなと思えたのだが。

ちょうど今、僕はゴを1、2着購入したいなと思っていたところだから、生産者の顔が思い浮かぶトンサの綿生地でゴを仕立ててもらうことはやぶさかではない。問題は、ティンプーのどこに行けばトンサ製の綿織物に出会えるのかという点だ。ノルジンラムのクラフトバザールか? 市内の生地屋さんに行っても手に入るのか? 既にティンプーで売られている生地はパンデミック前に買い付けが行われたものだから、トンサ村の人々の今を支える現金収入にはならないわけで、それなら今現地の生産者にすぐに現金収入が入るような仕組みはどうやったら作れるのか? APICはそういう仲介はやってくれないのか?―――そんな疑問がふつふつと湧いてくる。

nice!(7)  コメント(0) 
共通テーマ:日記・雑感

nice! 7

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

Facebook コメント