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ロックダウンの副作用(2) [ブータン]

最初にお断りしておくと、2月9日(水)にアップしていた「ロックダウンはまだまだ続く(2)」という記事のデータに、今回の記事を上書きしてしまいました。何を書いたのかは覚えていませんが、たぶん、2月6日(日)時点で「3日間」と言われていた首都ロックダウンの延長が、翌7日(月)の首相官邸発表で8日(火)からマススクリーニングを4日かけて実施することになったため、なし崩し的に週末までロックダウンが継続されることになったのではないかと書いていたのだろう。この点については、昨日クエンセルがこんな記事を上げていた(また、ニマ・ワンディ記者)。リンクだけ貼っておく。
https://kuenselonline.com/existing-restrictions-to-continue-for-thimphu/

ロックダウン中、報告されたDVは70件以上
More than 70 domestic violence cases reported during lockdown
Kelzang Choden記者、BBS、2022年2月10日(金)、
http://www.bbs.bt/news/?p=165551
Domestic-violance.jpg
【抄訳】
自宅は普通なら安全な天国だと考えられている。しかし、家庭内暴力(DV)を経験した人々にとってはそうでもないかもしれない。国内の多くの地域で以前ロックダウンが行われている中、DVは人々が直面する大きな課題となっている。これまでの24日間で、ロックダウン対象地域から報告されたDVは70件以上(国立女性子ども委員会(NCWC)とRENEWへの相談件数)にも及ぶ。

NCWCとRENEWによると、現時点で76件の相談があったという。うち67件は女性から、男性からは9件。ティンプーが件数的には最も多く、31件にも達した。報告は他にも、ワンデュポダン、パロ、チュカ、ブムタン、ゲレフ、サムドゥップジョンカル、プナカ、トンサ、タシガン、ダガナ、サムチから寄せられている。ほとんどの事案は、精神的虐待と身体的虐待である。相談してきた人の大半は25歳から40歳の年齢層に属する。

RENEWによると、DVはフラストレーションやストレス、不安、夫婦間ないし家族間のコミュニケーション不足と理解不足による。NCWCとRENEWは、ロックダウン開始以降、DVの犠牲になる人々に避難場所をあっせんしたり、カウンセリングや法的助言、その他の心理的支援を行ってきた。

一時避難場所は全県に既に設置されている。

前回の「ロックダウンの副作用」の記事の中で、DVについて「増えている」と又聞きの情報に基づいて述べたところだが、そのDVに関する報道がその後BBSのニュースで報じられたので、そちらもご紹介しておく。できればロックダウンの前の月平均DV相談件数との比較のデータも欲しかったが、増えていることは予想できる。総人口を考えると、ラフな計算で5000人に1人が被害に遭っていることになる。しかも、年齢層を絞り込んで考えると、もっと高い頻度になるに違いない。

一時避難場所(シェルター)については、確かに全県に設置されたことになっているが、今の行動制限の中で、そこまで辿り着けない人も大勢いるのではないかと思われる。ちょっと気になったのでティンプー市に現在適用されている電子通行許可証(E-Movement Pass)の申請サイトを見てみたけれど、ゾーン跨ぎの移動の必要性についての理由を選ぶプルダウンメニューには、一時避難場所への移動に該当しそうな項目がない。実際、行き場を失って耐えている人は大勢いるのではないかと想像する。

単身赴任中の僕がDVについて何か有益なコメントができるわけではないので、先ずはそういう報道があったということだけをご紹介しておく。

たとえが良くないかもしれないが、以前駐在していたインドで、デリー北東部のムスリム居住地域で、ジェンダーリソースセンターを展開しているNGOの活動を見学させておらったことがある。もう13年も前のことで、当時でも月々の施設維持管理では僕の知人の社会企業家が結構な助成を個人的にされていたぐらいだから、今も続いているかどうかはわからない。でも、当時、こういう施設があると、地域の女性の溜まり場になるのだというのを学ばせていただいた。
https://sanchai-documents.blog.ss-blog.jp/2009-04-26
https://sanchai-documents.blog.ss-blog.jp/2009-04-28
何か家でつらいことがあったら、こういう場所に来て、他の手作業に没頭するとか、何かのスキルを身に付けるとか、あるいは単に愚痴を言い合うとか、そういうことができるだろう。

もう1つは、これは今の僕自身の活動に近いところでの話だが、日本のFabCafeが「YouFabアワード」というクリエイティブ作品の世界的コンテストを主催していて、そこで最近最優秀賞を受賞した作品に、メキシコの「パブリック・ボイス」というのがあるのを知った。ラテンアメリカの都市部におけるジェンダー・バイオレンスに対する抗議の声を増幅させようとする参加型アート作品で、その第一ステップの部分は、女性やノンバイナリーの人々が、この問題に関連する個人のストーリーを、テキストと匿名の方法で共有することができるオンライン参加・視覚化プラットフォームを作ることだという。これらの投稿のストーリーをまとめたデータベースが作成され、。これらの投稿のストーリーが次のステップで活用されていく仕組みだが、女性の声を拾う仕掛けが第一ステップにあり、その後はそれを増幅させる仕掛けになっている。

ことが家庭内の話なので、公共空間でのジェンダー・バイオレンスへの対抗策がそのまま複製されても機能するとは思えないけれど、匿名でのケースストーリーの蓄積にはなるし、それをどう増幅させるかはあとからでも考えられる。

僕自身も、実名でやっているFacebookや一般読者の目に触れるこのブログでは、きれいごとしか書いていない。実際の自分はもっとドロドロとした情念の塊で、イラっとすること、特定の個人や組織に関して不満や怒りを感じることはしょっちゅうある。こちらは一方的に評価される立場で、評価する人を被評価者が評価する仕組みがない体制にも、理不尽さを感じることはある。でも、そんな愚痴や不満は読んでもいい気分にはならないので、詳らかにするのはきれいごとだけにして、実際の感情は、ごく限られた人しか見られないミクシィの日記で吐き出している。それで自分なりに気持ちの整理を付けている。

それと同じ文脈では語れないが、誰かが見てくれているプラットフォームで、匿名で感情をぶちまけらる場は作ってあげられたらいいのにと思う。そういうところにもICTの力は発揮し得るのではないですかね。

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