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『蓮如〔御文〕読本』 [家族]

蓮如〔御文〕読本 (講談社学術文庫)

蓮如〔御文〕読本 (講談社学術文庫)

  • 作者: 大谷 暢順
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2001/03/09
  • メディア: 文庫

内容(「BOOK」データベースより)
蓮如が認めた御文は、衰微していた本願寺を再興し、真宗繁栄の道筋を拓く切り札となった。真実の信仰とはいったいどんなものなのか。深い愛と智恵に満ち、信じる事の法悦を謳う伝道の書で、親鸞の教えと蓮如の全思想が凝集されている御文十通を、本願寺門跡、蓮如研究の第一人者が、一語一語丁寧に読み解き、真宗信心の要訣を描き示す。
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年明けから時々ご紹介してきた浄土真宗の本も、2月15日の『カンタン英語で浄土真宗入門』以来、随分と間が空いてしまった。その間何もやっていなかったわけではない。1月から3月にかけての二度目の緊急事態宣言の間に故郷からたびたび届いていた父の具合に関する情報に、意外とその日が近いかもしれないと思い、以前読んだ『面白いほどよくわかる浄土真宗』の葬儀や中陰法要に関する章を読み直した。緊急事態宣言が明けて晴れて父の様子を見に里帰りをした際には父や母に代わって勤行を勤めて「正信偈」「和讃」「御文」を読んだ。

特に、御文箱に収められている我が家の御文には苦戦した。カタカナ表記なのだ。祖母がいた頃から、毎日ではないにせよ時々祖母の後ろに座ってお勤めに加わっていたので、「末代無智の章」は何度も何度も聞かされ、自分でも諳んじることができるぐらいになっていた。だから読めるだろうと思って自分で初めて御文の表紙をめくったら、なんとカタカナだった。

これじゃとてもスラスラ読めない。ひらがな表記の御文でも入手して練習しようかと考えたが、そこまで考えるのはまだ早いと思い直した。祖母によく聞かされたのは既述の通り「末代無智の章」だが、母によると父が好んで読んでいたのは「白骨の章」(五帖目第十六通)だという。3月末に父が亡くなり、葬儀の際に尊師が読まれたのも「白骨の章」で、その時に初めて、この章が真宗大谷派勤行集の後半にひらがな表記で収録されていることに気が付いた。

これで少なくとも「白骨の章」は勤行集の朗読で口ならしができる。勤行集は次の海外駐在にも持って行くつもりなので、これ読んで練習しておこうと思うが、渡航前に、この御文が書かれた背景を知っておこうと思い、適当な御文解説を1冊読んでおくことにした。それが本書である。

それが読了までに大変な時間を要した。今月は分厚い本に挑戦したこともあるが、読了した本の数があまり多くない。1つには父の葬儀の後のあれこれ様々な残務整理で里帰り期間中ずっとバタバタしていたこと、そして後回しにしていた職場での仕事を片付けるのに手間取ったこと、さらにはこの期に及んで新たな仕事が持ち上がってその準備で忙殺されたことが挙げられる。読書に集中できない、そんな日が続いた。

260頁程度の文庫本に手間取ったのには、もう1つ理由がある。読書に集中できない自分の態勢だけでなく、収録された各章の解説が冗長なのだ。各章とも、御文の原文に続いて現代語訳があり、次にその章の御文の由来、すなわち蓮如上人がどういった状況で誰に対してその御文を書かれたのか、主に『御文章来意鈔』に基づいて紹介されている。ここまではよいが、その後の解説が冗長なのだ。

今回、「白骨の章」を含む10通の御文について、ひらがな表記された原文に触れてみて感じたのは、各章で同じような表現が度々出てくる。それぞれ少しずつ違うけれど、蓮如が言いたかったことはおそらく共通している。だから、各々の章について、それが蓮如が誰に対して宛てた文なのかという違いはあっても、それに込められたメッセージはわりと共通しているのだろうと想像できる。

そう、宛先が違うがメッセージが似ているのなら、各々についてその文章の構成や用いられている表現や語句の解説をいちいちしていても、毎回、「それどこかで聞いたな」というのが出てくる結果になりかねない。これでもか、これでもかと似たようなメッセージを聞かされるので、御文全体でのメッセージがぼんやり見てくる気がしたことは間違いないのだが。

そう、御文は文集ではあるが、最初から構成を練られた1冊の本ではない。しかも宛てた相手がそれぞれ違う手紙をまとめて収録されているのだから、それを読む時には、すべての章の朗読に慣れるというよりも、特に自分自身の心に響く1章に出会ったら、その章をひたすらに読み、味わうのがいいのではないかと、僕は感じ取ったのである。

本書は元々単行本として出たのが1991年、文庫化されたのは2001年と、それぞれ30年、20年も前の本である。そうした書籍に「読みにくい」というのも詮無きことではあるが、また読みたくなることもあるかもしれないので、取り合えず一読後は我が家の蔵書としてキープしておきたい。

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