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『現代思想』2018年3月号 [仕事の小ネタ]


内容紹介
現在叫ばれる「宅配クライシス」により、これまでの物流は根本的な革新が求められている。
またテクノロジーの発展により、新たな流通の形態も発明されてきた。
こうした大規模な物流再編の一方で、各種小規模流通やローカルメディアも同様に発展してきた。
こうした取り組みは地域に根差したコミュニティを生み出しつつある中で、
現代思想が論じる流通革命特集。

今となっては少し昔の話になってしまうが、今勤めている会社内で新規事業アイデアコンテストというのがあった。12月に募集が締め切られ、1月末までに事業提案書に基づく一次審査が終わり、2月にプレゼンによる二次審査が行われ、今月末までには結果が判明する。もし事業提案が採用された場合、来年度の事業実施においては、自身がタスクチームリーダーになれるという仕組みだ。

実は、そのコンテストに、「応募者が少ないから協力してくれ」と言われて僕も応募した。僕も既に一線級を退き、今までの自分のキャリアと全く無関係の仕事を、「あるだけありがたいと思った方がいい」とズケズケ言う同僚と一緒に働いていて、少なくとは社内においては「老兵は退くのみ」だと思いつつ、日々ストレスを感じながら過ごしていた。そんな歳になって、新規事業の提案をするのには相当な躊躇があった。でも、今の仕事からは抜け出したいという気持ちも強かったので、ダメもとでも応募してみようと鉛筆を舐めて事業提案書を書いてみた。

結果、一次審査は通過し、二次審査に向かうことになった。

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《二次審査のプレゼンの様子》

既にプレゼンも終了し、結果待ちの状況だが、一次審査を通過しただけでも良かった良かったというつもりだったが、昨年度のコンテストの二次審査で応募者がどんなプレゼンをやったのかを見せてもらったところ、皆さん相当力のこもったプレゼンをやっておられたので僕は焦った。8分間、何をどうしゃべるのが効率的かつ効果的なのか、しばらく頭を悩ませることになった。

その時に、手ぶらでも何だから、提案内容と関連性のありそうな文献をもうちょっとだけ読み足して、ちょっとインパクトがありそうなフレーズを受け売りで使っちまおうかと考えた。そこで読んだのが月刊誌『現代思想』の「特集・物流スタディーズ」であった。

前々回、僕はマッシモ・メニキエッリ編著『ファブラボのすべて』をご紹介した。実はそれより先に読み始めていて、先に読了していたファブラボに関連した文献が、『現代思想』2018年3月号の特集冒頭にあった、田中浩也さんと若林恵さんの対談「グローバルとローカルをつなぐテクノロジーの編集力」であった。この対談だけは早い時期に読み終わっていたが、折角だからと他の特集記事をついでに読み始めたのだが、特集にある「物流」というのとちょっとでもかすっているテーマであれば、大東亜戦争の頃の話であろうと戦後の商店街の変遷の話であろうと、何でも掲載されているという印象で、収録論文を全部読み切るのに3週間近くがかかってしまった。

『現代思想』の編集方針って、その点ではちょっと謎なのだが、1つ1つの論文のクオリティはそれなりに高く、これからもバックナンバーを図書館で借りて読んだりすることはあるかもしれない。今回も、そもそも入手した目的は特集冒頭の対談記事を読むことだったが、それ以外にも、横田増生さんと今野春貴さんの対談「総運輸化する社会~フレキシブルな労働を問い直す」や野尻亘「物流クライシスとカーゴ・モビリティ~「忘れられた空間」と「一見秩序づけられた無秩序」」等からは得るものが多かった。

最後に、僕が自分のプレゼン用に使わせてもらいたかった引用を数カ所ご紹介しておく。

◇◇◇◇

こうした(ファブラボのような)施設の役割は、「グローバルなハイテク技術」をいったん分解して、ローカルな立場やコミュニティの視点からとらえなおし、必要な、使いやすいものに改変して、現場と整合性をとっていくことにあると思うのです。(p.15)

(その社会問題が)同じ社会構造の変化に起因していたとしても、具体的な「問題の顕れ」は地域ごとに異なる姿になっていくでしょう。だからこそ、(中略)単なる「グローバル技術の単純な導入」ではなくて、ローカルな立場から要素技術群を最適に編集しなおして、地域ごとの独自のソリューションをつくりなおしていくこと、つまり「他者が発明した技術」であっても、それを「自分たちの技術」にとらえ返して消化していくことが、ますます大切になるとおもうのです。(p.23)

グローバル経済とグローバルテクノロジーが直結したものがピンポイントにパーソナルな個々人と直結したサービスになっていて、AmazonからAppleからGoogleから全部が社会インフラのようになっています。そのなかで搾取的な構造や、勝ち・負けに伴う諦めの感情が発生するのですが、抜け落ちているのは、(中略)中間レベルの創意工夫や最適化の水準なのでしょう。その中間的な領域は、ローカルなコミュニティにいる人たちが、新しいテクノロジーの恩恵と、解決すべき社会課題をセットで扱い、創造性を発揮できるようにならなければ回復できないと思っています。(p.28)

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