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『偽りのスラッガー』 [読書日記]

偽りのスラッガー (双葉文庫)

偽りのスラッガー (双葉文庫)

  • 作者: 水原 秀策
  • 出版社/メーカー: 双葉社
  • 発売日: 2013/08/08
  • メディア: 文庫
内容(「BOOK」データベースより)
かつてスター選手だった秋草隼は、膝の故障で現役を引退した。再手術し、人目を避けて寂れたバッティングセンターに通うものの、4年が経ち、選手としての夢は消えかけている。そんな秋草に旧知の球団GMから意外な話が持ちかけられた。ある大物選手に、ドーピング疑惑があるらしい。この疑惑の真相を突き止めるため、秋草に選手として内部から調査してもらいたいという。一度は断ったが、現役復帰への思いに抗えず、秋草はスパイを引き受けることに―。スポーツ界の闇と再起をかけた男の奮闘を描く野球ミステリーの傑作。
僕が読んだのは2009年3月発刊の単行本の方だが、ここでは今年8月発刊の文庫版の方を載せておく。

あまり読んだことがないが、作家ディック・フランシスといったら競馬界で起こる様々な事件を描いて「競馬ミステリー」というジャンルを切り拓いたことで知られている。邦訳はいずれも表紙には競馬のワンシーンが使われ、タイトルが漢字2文字で書かれていた。一時期書店でハヤカワ文庫のミステリー小説のコーナーによく通ったことがあって、ディック・フランシスのシリーズもよく見かけたが、何せ当時の僕はむしろロバート・パーカーの「私立探偵スペンサー」のシリーズを読んでいたので、ディック・フランシスにまで手を伸ばす勇気がなかったのである。

話がディック・フランシスに傾き過ぎたが、『サウスポー・キラー』で「このミステリーがすごい!」大賞を受賞した水原秀策も、本作品『偽りのスラッガー』や『栄冠を君に』を発表し、徐々にではあるが「野球ミステリー」というジャンルを確立しつつあるのかなという気がする。水原は他にもサッカーやボクシング、果ては囲碁界を舞台にしたミステリーを書いているので、むしろ「スポーツミステリー」という言い方の方がいいのかもしれないが。

ミステリーなので、冒頭の書籍紹介以上にここであらすじを書くのは難しい。セイバーメトリックス理論やGM(ゼネラルマネージャー)制、代理人ビジネスなど、米メジャーリーグでは既に常識で、日本のプロ野球でも導入されつつある考え方や制度が、日本球界にもともとあった旧来からの考え方や習慣とぶつかることで生まれる軋轢をうまく描いた作品だといえる。『サウスポー・キラー』の主人公だったオリオールズのエース左腕・沢村航を登場させるサービスまである。

多分、『サウスポー・キラー』の話は、『偽りのスラッガー』とは同時進行していたのだろう。前者は今から4年も前に読んだきりなので、その作品の中で、静内バーバリアンズの秋草や立花がどう描かれていたのかは気になる。この2作品はあまり間髪入れずに読まれることをお薦めする。

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