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『不格好経営』 [読書日記]

不格好経営―チームDeNAの挑戦

不格好経営―チームDeNAの挑戦

  • 作者: 南場 智子
  • 出版社/メーカー: 日本経済新聞出版社
  • 発売日: 2013/06/11
  • メディア: 単行本
内容紹介
「それにしても、マッキンゼーのコンサルタントとして経営者にアドバイスをしていた自分が、これほどすったもんだの苦労をするとは……。経営とは、こんなにも不格好なものなのか。だけどそのぶん、おもしろい。最高に。」――創業者が初めて明かす、奮闘の舞台裏。
なぜ途中で諦めなかったのか、いかにしてチーム一体となって愚直に邁進してきたか。創業時の失態や資金集めの苦労、成長過程での七転八倒など、ネット界に新風を巻き起こしたDeNAの素顔を同社ファウンダーの南場智子が明らかにする。華やかなネットベンチャー創業の舞台裏で、なにもそこまでフルコースで全部やらかさなくてもと思うような失敗の連続――こんなにも不格好で、崖っぷちの展開があったのかと驚かされる。当時の心境も含めて綴られた文章は軽快で、ビジネス書として示唆に富むだけでなく、読み物としても楽しめる。スピード感あふれる人材育成の現場も垣間見ることができる。

僕もたまにはミーハーにビジネス書のベストセラーを読んだりもしてみる。要は、新刊書を借りて読もうと思うなら近所のコミセン図書室がベストなのだが、そのコミセン図書室で新着本が陳列されるタイミングがなんとなくわかったので、猪の一番で借りられるケースが多くなってきたのである。

本書は版元が日本経済新聞社なので、購読している日経新聞が広告欄で頻繁に販促広告を出しているので、売れるのも当たり前かと思う。帯に使われている著者の写真の表情も穏やかで、好感度の高い装丁になっている。

僕らが一般に「DeNA」という名前を知るのは、2011年シーズンオフに横浜ベイスターズをTBSから買収したことによる。当時の一般的な論調は、携帯・スマホのゲームで売り上げている会社で、時流に乗って急速に成長してきた成金企業であり、IT業界の流行りすたりと同様、業況が傾けばすぐに球団を手放すに違いない、だから腰を落ち着けた中長期的な経営などできないという、批判的なものが多かったように思う。その後も「コンプガチャ」が社会問題化して規制強化の声が上がると、それによって最も業績に影響を被るのはDeNAに違いないと言われた。とかくDeNAに対してはあまりいい印象がないというのが正直なところだ。

著者の南場氏は球団買収時には既に代表取締役社長のポストを守安功氏に譲っていたので、ベイスターズ絡みで南場氏の話はあまり出てきた記憶がない。それだけに球団買収以前のDeNAの創業から成長に至るまでの物語は新鮮で、語り口にも柔らかさがあって、好感が持てる内容だった。何よりも、僕が抱いていたDeNAという会社に対する良からぬ先入観は、本書を読むことで相当に払拭されたように思われる。


モバゲーの会社だというイメージについても、確かにモバゲーのヒットは同社の業績拡大に大きく寄与したことは間違いないものの、むしろリクルートと似たような会社なのかなという印象を受けた。ネット上で次々と新事業を創造していくという点、優秀な人材を集めて若い時から事業を任せ、中にはDeNAを卒業して起業を試みるなど、今日本で注目されている企業家の多くがリクルート出身であるというのとよく似た性格を持った企業がDeNAなのだろうという気がする。

1999年にたった3人で立ち上げた企業も、14年の時を経て多くの雇用を生み出す一大企業へと成長を遂げてきた。にもかかわらず、著者はDeNAのスタッフのひとりひとりをよく見ており、その性格、長所と短所、得意分野などを非常によく知っている。それだけ社内のコミュニケーションを大切にしているのだろうと想像される。スタッフが自由闊達に意見を言い合え、職場の雰囲気も明るいに違いない。

1ヵ所ぐらい印象に残った記述を挙げておく―――。

 会社の雰囲気がすこぶる良いのは、こういった小手先(失礼!)のイベントではなく、「任せる」ことをさらに徹底しているからではないかと感じている。チームの目標を達成することの喜びと高揚感を経営の中心に据えようと決めた瞬間の話は冒頭に書いたが、このことは言うほど簡単ではない。
 1.全員が主役と感じ、ひとりひとりが仕事や成果にオーナーシップを感じるようなチームの組成、
  仕事の単位となっているか。
 2.チームの目標はわかりやすく、そして高揚するに足る十分に高い目標となっているか。
 3.チームに思い切った権限移譲をしているか。信じて任せているか。
 この3点を満たしつつ、全チームの目標達成が全社の目標達成につながる組織設計をしなければならない。実はかなりのバランス感覚が必要だ。これらがうまくできているときは目標達成の純粋な喜びと高揚感で組織が力強くドライブされていくため、細かい点は気にしなくてもうまくいく。そして上記のうち、最も難しいのが3つ目の「信じて任せる」ということ。論理ではなく、勇気が必要だからだ。(pp.242-243)

僕自身も近々数人の部下を要する管理職にまた復帰できる見込みである。チームマネジメントについては今まで細々と頭の体操を続けてきたが、間もなく実践に移す時がやって来そうだ。そういう時に、「信じて任せる」という権限移譲は、特に強く意識して実践していきたいと思う。


タグ:DeNA 南場智子
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