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老後がこわい [読書日記]

香山リカ著『老後がこわい』                                                講談社現代新書、2006年7月


出版社 / 著者からの内容紹介
「負け犬」から突然更年期へ老後はどーなる
いつまで働けば、経済的に不安はないか。老いた親の面倒は誰がみるのか。終の棲家はどこにするか。誰と暮らすか。遺言状・お墓の準備は必要?不安・疑問に答える。

三鷹の社会人講座は未だ夏休みが続いているが、7月に都内某所で開催されたセミナーに出てみて、高齢化にはジェンダーの視点も重要ではないかという新たな視点を得ることができた。女性の独居高齢者はアパートを借りるのにも苦労するという話は、最近読んだ重松清の短編小説でも扱われていた視点であるが、今後女性高齢者のひとり暮らしは増える筈であり、そうした人々がどのように老後を過ごしていけるのかには注意が必要だ。社会人講座では、ジェンダーの視点はあまり考慮されていないカリキュラムになっている気がするし、それを指摘できるのは40代とか50代で独身の働く女性ではないかと思うのだが、残念ながらそういう立場の受講者はいない。

そうした中で、46歳で独身女性である著者の言葉は非常に説得力があると思う。平均寿命を考えてみても、女性の方が長生きすることは間違いないが、所得獲得機会に恵まれない女性が老後を1人で生きるには、男性の場合以上に過酷な条件が待っているように思える。そうした視点を確認するために、本書のような読本は有益である。時々本棚から取り出して読み直してみたい本である。

●民間賃貸住宅市場においては、賃貸住宅の大家が、家賃の不払い、病気、事故等に対する不安感から高齢者の入居を拒否することが多く、高齢者の居住の安定が図れない状況にある。(p.27)

●いまなお心の中では「介護は施設ではなくて自宅で。嫁や息子にではなく娘に」と願う親が多い中、これからはシングルで仕事を持ちながらひとりで両親の介護を、という女性たちが増えることは確実だ。ただでさえまじめで「私ががんばらなきゃ」と思いがちな彼女たちを、物理的、経済的、心理的に支えるシステムを整えなければ、遠からず未来に”負け犬介護地獄”がやって来る。(中略)妻でも母でもなく「病気の親を介護する娘」というひとつの役割しかないという状況が、介護するシングル女性を心理的に圧迫する。(p.97)

●1ヶ月に支払う医療費の上限を定めた高額療養費制度の上限額も、2006年10月から1割程度引き上げになる。一般的な所得がある70歳以上が入院した場合、現行の40,200円が44,400円になる。(中略)厚生労働省はこれを「医療費を抑え、健康保険財政の破綻を防ぎ、国民皆保険制度を堅持するための策」だとしているが、この措置により必要な医療まで受けられなくなる高齢者が出現するのは明らかだ。(中略)診ていたおばあさん(75)が自殺した。元気に郷里・Y件N市に戻って行った矢先のことで、老人保健法成立で医療費の一部負担制が報じられてから、「これ以上、みんなに迷惑をかけられない」と悩んでいた。またその茶飲み友達だったおじいさん(74)も、老人保健法を悲観し、「今でも家族の足手まといになっているのに、今さら医者に行くたびに400円をとてももらえない」と自殺した。(pp.109-110)

●2002年、愛媛大医学部の藤本弘一郎助手(公衆衛生学)らは、日本公衆衛生学会で衝撃的な調査結果を発表した。松山市に近い農村地区で高齢者を追跡調査したところ、女性高齢者の死亡につながる一番のハイリスクが「配偶者」であることがわかった。「夫がいる」女性のリスクは、「いない人」に比べ55%も高かったというのだ。(p.171)


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