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おもろいぜ『岐阜県の民話』 [家族]

23日の勤労感謝の日、僕は市立図書館に出かけた。12月にミッキーの小学校の朝の読み聞かせを1年ぶりにやることになったから、題材探しをしたかったからだ。去年は相手が1年生だったから絵本のイラストを見せながら読んだが、今回は2年生が相手になるわけで、イラスト云々よりもストーリー重視でもいいかなと思い、僕の地元に古くから伝わる「夜叉ヶ池」の話にでもしようかと考えた。(下の写真は夜叉ヶ池の11月14日の映像です。余談ながら。)

そこで借りた本が、偕成社の「ふるさとの民話」シリーズ第28巻『岐阜県の民話』である。1981年の出版だ。

今朝、その本の目次をなにげなくめくっていたら、なんと「口さけ女」の話まで載っているではないか。しかも、「現代民話」という意味深なカテゴリーで。さしずめ今であれば「都市伝説」というのだろうな。

「口さけ女」とは次のようなお話だ――。


なおみは中学2年の時に交通事故に遭った。1ヶ月くらいで包帯が取れたが、顔には醜い傷跡が残ってしまった。その後、高校を卒業して岐阜市内のある会社の事務員になったが、ある日思い立って名古屋の整形外科病院を訪ねて顔の整形手術を受けた。

1週間後に包帯が取れ、顔の傷はなくなっていた。しかし、2、3日して、なんとなく口の周りがかゆいのでかいていると、赤く腫れ上がってただれてきた。やがて熱を持ち始め、とうとう化膿まで始まってしまった。痛いのをこらえて膿みを出していると、3、4日して口が裂け始めた。裂け目はどんどん広がり、ついには耳にまで届いてしまった。

なおみは怖くて自分の顔を見ることができなかった。そのうち、とうとう気が狂ったのか、夕方になると、大きなマスクをして岐阜市内をふらふらと歩き回るようになった。そして、相手構わず道を歩いている人の肩をたたき、「わたし、きれい?」と訊いた。

訊かれた人が、振り返って「きれいだよ」と答えると、なおみはうれしくなり、今度はマスクを外して、「こんな顔でもきれい?」と、ニヤッと笑って見せた。もし、「きれいだよ」と言われなかったら、どこまでも追いかけて行って、首を絞めた。

いつの間にか、夕方になると「口さけ女」が出るという噂は岐阜市内に広まっていった。その噂が岐阜に近い各務原でも聞かれるようになった昭和53年の暮れ、なおみは各務原の冷たい池に身を投げた。

ところが、昭和54年になると、京都、大阪にも「口さけ女」が出るという噂が立ち、あっという間に四国、九州、そして東京から東北にも広まり、日本全国が口さけ女の噂で持ちきりになった。噂は噂を呼び、尾ひれが付いて、しまいには「ポマード!」といえば女は逃げるとか、ベッコウ飴を5本やると許してくれるといった話まで付け加えられた。

これほど全国をまたに走り回った「口さけ女」の噂も、半年もするうちにはぱったりと消えてしまったという。


丁度同じ頃、東京の山手線の電車の車内では、「なんちゃっておじさん」というのが出没していたらしい。また、少し後になるが、名古屋市内の名城公園(だったかな?)では、「ジャンピング婆さん」が出るとの噂が立った。

ちょっと計算してみると、この本は、「口さけ女」の噂が途絶えてから1、2年後くらいにこの話を取り上げたことになる。これは当時からしてみれば相当な大英断だったのではないかと思う。こういうのをやってしまう偕成社―昔は児童書で大変にお世話になった出版社で、今も存在しているのかどうかはわからないが、侮れないなあ。

お陰で、他の都道府県の民話についても読んでみたくなったよ。

でも、これを題材にする朗読はやめておきます。これがきっかけになって、学校内でいじめでも起きたらたまらないから・・・。

 


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コメント 2

私は偶然ですが、口裂け女が出たといわれる「柳ヶ瀬」付近で育ち
現在夜叉姫伝説の本妻「修羅姫」がシットのあまり「夜叉姫」に
岩を投げた「八帖岩」の付近にすんでます。
読み聞かせですか。
学生の頃ボランティアで病院に絵本を読みにいってました。
マッチ売りの少女は号泣して読めません。(笑)
by (2007-03-18 08:19) 

Sanchai

☆のんべいキャサリンさん☆ダブルnice!&コメントありがとうございました。
のんべいキャサリンさんのブログを読んで、私も自分が1年以上前に書いたこの記事を読み直してみたのですが、当時今も存続しているのかわからないなどと不届きなことを書かせていただいた偕成社さん、今でも児童文学大手として健在で、しかも会社は私の職場から歩いて5分の新宿区市谷砂土原町にあることを知りました。余談ですがお詫びして訂正させていただきます。
by Sanchai (2007-03-18 10:27) 

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