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『地域主権という希望』 [仕事の小ネタ]

地域主権という希望:欧州から杉並へ、恐れぬ自治体の挑戦

地域主権という希望:欧州から杉並へ、恐れぬ自治体の挑戦

  • 作者: 岸本 聡子
  • 出版社/メーカー: 大月書店
  • 発売日: 2023/01/19
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
内容紹介
民主主義を再生する、足元からの挑戦政治経験ゼロから杉並区長となった著者が、世界各地で起きている自治体からの変革=ミュニシパリズムの実例を紹介。新自由主義による地域経済と政治の劣化に歯止めをかけ、足元から公共と民主主義を再生する希望の指針を描く。
【購入(Kindle)】
昨年末頃、斎藤幸平『ぼくはウーバーで捻挫し、山でシカと闘い、水俣で泣いた』を再読した際に、同書の中で引用されていた文献を追っかけで読んでみるというのをはじめた。その中で、バルセロナ市が起点となった「ミュニシパリズム(地域自治主義)」の話が出てきた。協同組合を基盤とした市民参加型の運動が、政治を動かし、革新自治体を生むまでになったというお話だった。

今回ご紹介する現杉並区長の書かれた本も、斎藤前掲書の中で出てきたように記憶しているが、今確認してみたところ、それは必ずしもバルセロナとの関連でという話ではなかった。経緯はよく覚えていないのだが、キンドルでダウンロードした後、僕は昨秋はほとんど読書に身が入らず、年末に帰国してからは、図書館で本が借りられるような生活環境になったため、電子書籍をしばらく後回しにした。

逆に、今図書館で借りた本以上にこの電子書籍を先に読むことにした理由として、著者が杉並区長だからというのが大きい。年明けにたまたま見たNHKの番組で、杉並区議会議員の変化を追ったものがあった。番組は議員の方をフィーチャーしていたが、そういえば、本書の著書は杉並区長だったよなと思い出し、これも何かの縁だと思って積読蔵書を紐解いたのである。

ただ、その時点で岸本市長の前歴についてはほとんど知らなかったし、バルセロナのミュニシパリズムの話が本書で登場するとも思っていなかった。最初から言っておくが、本書は市長選当選の2、3ヶ月後に刊行されており、同氏が市長選をどう戦ったのかを知るにはいいが、杉並区政をどう変えていったのかまでは書かれていない。杉並区でのお話は、第1章のみ。全体の20%程度だ。

それ以降は、著者が前職で勤めていたオランダのシンクタンクにおいて、日本向けに情報発信していた欧州の政治社会の情勢に係る記事を1冊にまとめたような内容になっている。欧州での気候変動問題の捉えられ方とか、ジェンダー主流化の捉えられ方とか、そしてくだんのミュニシパリズムの胎動、地産地消への高い意識の背景など、レポートの中でいろいろな情報が盛り込まれている。こういう、連載記事をまとめて本にする場合、重複する記述が頻出するのはやむを得ない。冗長なところもあったが、今回に関しては、「バルセロナ」や「スペイン」をキーワードにして、読み込み方にメリハリをつけた。

今、ちょうど自分が勤めていた会社に出そうとしているレポートの中でも参考文献として使わせていただいた。ブータンでの仕事の関係から、今もファブラボとはお付き合いをさせていただいているが、やたらと活発なのがバルセロナで、それが住民自治や地産地消とも絡んでくる取組事例をいくつも見ている。スペインを拠点とするもの作り愛好家も多い。

「なんで?」という疑問が当然湧くが、本書を読んでいると、「ファブラボ」が明示的に出てくることはないものの、「自分たちの将来は自分たちで決める」という住民の強い意志が伝わって来たような気がする。それがDIYや地産地消に向かってくると、ファブともつながるのかなと思う。

僕の今住んでいる杉並区のお隣りの街では、ファブスペースが3月末で営業を終了する。一方、杉並区では、廃校となっていた小学校を改装し、昨年10月にできたサイエンスコミュニケーション施設の一角にファブスペースができた。潜在的利用者としては、地元の工房が閉まって路頭に迷いかけていたので、多分この新しい工房は利用させていただくと思う。そして、ミュニシパリズムの火を日本でも灯したいと考えておられるであろう市長の区政の下にあるファブスペースも、利用者としてはそれなりの意識を持って利用したい。
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