SSブログ

『カモナマイハウス』 [重松清]


カモナマイハウス

カモナマイハウス

  • 作者: 重松清
  • 出版社/メーカー: 中央公論新社
  • 発売日: 2023/07/20
  • メディア: Kindle版


内容紹介
空き家の数だけ家族があり、家族の数だけ事情がある――。
不動産会社で空き家のメンテナンス業に携わる孝夫。両親の介護を終えた妻・美沙は、瀟洒な洋館で謎の婦人が執り行う「お茶会」に参加し、介護ロスを乗り越えつつあった。しかし、空き家になっている美沙の実家が、気鋭の空間リノベーターによって遺体安置所に改装されようとしていることを知り……。元戦隊ヒーローの息子・ケンゾー、ケンゾーを推す70代の3人娘「追っかけセブン」など、個性豊かな面々が空き家を舞台に繰り広げる涙と笑いのドラマ、ここに開幕!
【購入(キンドル)】
7月下旬に出たばかりの重松清の新作。今週末、特に日曜日だけを費やしてイッキに読み進めた。

主人公・孝夫が会社でのポストオフのあと、関連企業に出向して働いている点とか、妻が実家の両親の介護を経ているところとか、なんだかうちの置かれた状況とよく似ているかもと思いながら読んだ。

厳密にいえばうちの場合は僕の実父だけが他界しており、他の親についてはまだ本格的に介護を必要としている状況ではない点、3人いる子どものうち、上の2人は取りあえずは就職して普通に働いている点とか、違うところもあるのだが、僕も妻も自分たちが生まれ育った家がこれから10年ぐらいの間に居住者がいなくなる事態を迎えるのは確実だし、同じ結婚して構えた新居も、子どもたちがひとりまたひとりと巣立って行き、近い将来、「マイホームをどうするか」という問題にも直面する。

さすがは僕と同い年の作家さんだ。押さえるポイントには共感するところが大きい。

元々雑誌『婦人公論』で「うつぜみ八景」という題名で連載されていたらしい。『カモナマイハウス』への改名が必要だったのかは疑問が残る。扱っているテーマはカタカナ表記できるほどコミカルなものでもないし、内容紹介で書かれているほど笑いが散りばめられていたわけでもない。内容としてはもうちょっと重く、読者に考えさせる内容だと思う。妻が生まれ育った実家が取り壊されていくシーンとかは、やはり涙を誘うものがあった。同じような光景を、僕らも早晩見ることになるのだから。

そうした題名の軽さはひとまず置いておいて、この作品はテレビドラマ化されるのではないかと思った。展開がわりとわかりやすく、終盤になるとそれなりのクライマックスシーンはある。そこでの落としどころは今一つ理解しにくいところはあったけれど(そういう曖昧な形で場面を収束させるのが著者の手法なのだとわかってはいるが)。世田谷の洋館とか、戦隊ショーとか、ビジュアルを加えた方がいい場面がいくつかあった。

重松作品も多く読み過ぎていると、駄作じゃないかと思ってしまう作品もあるのだが、本作品の読後感は良かった。結局はフィクションでバラ色の決着というのはそうそうあるわけではないというのもわかっているが、我々が日々直面している課題と近いテーマで、でもそれにちょっとリアリティに欠ける結末を加えるのは、僕のような読者には受け容れやすいと思う。重松作品の中でもわりといい作品ではないだろうか。

nice!(8)  コメント(0) 
共通テーマ:

nice! 8

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

Facebook コメント