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パロ・ティンプーの洪水予警報 [ブータン]

天気予測と早期警戒システムの信頼性と正確性の向上に向けて
Towards reliable and accurate weather forecast and early warning systems
Kelzang Choden記者、BBS、2022年6月9日(木)
http://www.bbs.bt/news/?p=170503
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【抄訳】
この国の天気予測と早期警戒警報システムをより正確で効率的なものにするための努力が続けられている。国立水文気象センター(NCHM)は、災害管理局(DDM)及びJICAとの共同プロジェクトを実施、その第2フェーズが現在進められている。その活動の一環として、今日、ティンプーで1回目の合同調整員会が開かれた。

この第2フェーズプロジェクトは第1フェーズの成果に加え、新しいテクノロジーも活用し、よりよい結果が得られるよう取り組む。ティンプーチュ及びパチュの流域の調査が進められる予定。この2流域は、流域人口の多さと洪水災害への脆弱性の観点から選ばれた。

洪水発生可能性評価に関する活動としては、早期警戒警報システムの開発や同システムのガイドラインの開発などが含まれる。プロジェクト第2フェーズのプロジェクトマネージャーであるテバ・ブッダ・タマン氏は、「重要なのは、警戒や警報発令の基準となる水位を定めることです。どの水位に達したら地域住民に避難するよう発令するのか。その重要な活動として、モデリングやマッピングを行っていく必要があります」と述べる。

さらに、プロジェクトは様々な活動を通じて気象予測の精度を上げる取組みにも力を割く。人工衛星データの活用や、天気予報のスタジオ開設などだ。プロジェクトマネージャー氏によると、山がちなこの国の天候は正確で信頼性の高い予測が難しい。「従って、改善を進めるための最善策は、すぐれた観測ネットワークの確立とドップラーレーダーや気象レーダーなど、上空の大気の観測システムの確立にあります。」

このプロジェクトは2020年に要請されたもので、2024年には終了予定。2013年から16年にかけて実施された第1フェーズでは、チャムカルチュ、マンデチュの両水系を対象に、人工衛星による観測モニタリングシステムが作られ、洪水早期警戒警報システムが設置された。

現地でのJICAの取組みを2日連続で紹介したりすると、「お前はJICAのファンサイトか」と言われそうだな。珍しいことなのだが、ここに来てメディアでのJICA報道がかまびすしい。

合同調整員会開催のレベルでもニュースで取り上げられるんだというのもちょっと驚きだ。技術協力プロジェクトなら、合同調整員会は協力期間中に5~6回は開かれているが、合同調整員会レベルでメディアが取り上げたプロジェクトは実は少ない。

でも、ことこの気候変動対策とも関連するプロジェクトに関しては、たとえ針小棒大であっても、JICAはちゃんとこまめに情報発信を続けていくべきだと思う。

それは、JICAが支援しているこの取組みも、「自分たちのやった支援」だとちゃっかりHPで書いちゃうドナーがいるからだ。BBSの報道にある「第1フェーズ」の期間中、そういうケースが実際に二度あり、当時のJICAの所長は二度ともそのドナーに対して訂正を求めている。特に、機材やシステムを入れるコンポーネントが、そういう宣伝に使われやすい。

勿論、そのドナーが「何もやってない」と言うつもりはない。どこの組織だって、気候変動対策や災害対策といったらNCHMやDDMに食い込んでいて、受入機関は「今週はJICAミッション対応に全力投球、来週は別ドナー対応に全力投球」といったことを行っている。受入機関側からすれば、事業資金の確保も必要だし、ある程度はやむを得ないだろう。

そういう中での話なので、他のドナーが「自分たちのやった支援」と述べちゃう事態も、まったく理解できないわけではない。特に、事業担当と広報担当が分かれている大きな組織では、「ここからここまでは我が社で、ここから先は他社がやった」という事業線引きの機微なところまで、広報担当がわかってて記事を書いているわけではない。

せめて事業担当はネガチェックをやってるだろうという前提で申せば、その事業担当が正しい事業マッピングができるようにするためには、同じセクターで事業を展開している他のドナーが、それなりの情報発信をやってないといけない。HCHMはJICAだけでなく、UNDPとも、世界銀行とも付き合いがある。過去の経緯もあることだし、特にこの技術協力プロジェクトに関しては、広報には相当な力を割くべきだと思う。

◆◆◆◆◆

脱線していた話を元に戻すと、今回の対象流域は、パロとティンプーの流域ということになる。流域に暮らす人口を考えたら、それはそれは、第1フェーズとは比べ物にならないくらい重要な案件になるだろう。

前日と同じコメントをさらに付すと、これも、いつかお時間あるときにプンツォリンまでお越しいただいて、CSTの学生たちに、システムの全体像をご紹介いただけたら嬉しい。

昨日、CSTの電気通信学科4年生の卒業研究の最終発表会に出席して、ジャッジを急にやらされた。文系人間の僕が理系の学生の発表についてジャッジをやるのはかなりの緊張を強いられるものだったが、今の学生が社会のどこに問題意識を感じているのかを知るよい機会でもあった。

そんな中に、「CSTのあるリンチェンディン地区の天気予報アプリ」を提案していたグループもいた。実現可能性はそれなりにある提案だろうと思ったが、「〇〇が〇〇したら、〇〇時間以内に雨が降り出す可能性が80%以上」とか、もうちょっとわかりやすい予報が出せる可能性が高いと思う。(個人的経験では、自分がプログラミングした環境モニタリング用センサーで、気圧の低下が進んだら、2時間以内に土砂降りになったという経験をしたので、CSTのキャンパス内の気象観測装置1基だけで取り続けたデータセットだけで予報を構成するのではなく、最新のセンサーデバイスで気圧も計測したらいいのにと思った。

そういうことに取り組んでいる学生もいる大学なので、この技術協力プロジェクトの関係者の方々にも是非一度講演及び学生との交流でお越しいただけたら嬉しい。このブログで再三主張していますが、現職研修だけやっていてもカウンターパートをオーストラリア留学に取られるリスクは相当大きいので、就業前研修にもスコープを広げて欲しいと強く希望しております。



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