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デリーで話し合ってくれ! [ブータン]

IELTSのティンプー会場、応募者でごった返す
Hundreds rush to register for IELTS- Thimphu
Samten Dolkar記者、BBS、2022年3月31日(木)
http://www.bbs.bt/news/?p=167336
ielts.jpg
【要約】
英語理解度テストIELTS受験登録のため、ティンプーの経営研究所(IMS)に1,500人以上が押し寄せた。登録再開は、特に就業や就学目的での外国渡航を長く待ち望んでいた若いブータン人にとっては大きな福音。IMSと王立経営研修所(RIM)は、パンデミックのため、2020年初頭からIELTS実施を凍結していた。

本日、IMSは、来月の3つの日付での受験を希望する応募者800人を登録した。応募者はほとんどが若者で、カメラの前での顔出しは拒否したが、IELTSが国内で受験できるようになってとても安堵したと語った。COVIDの期間中、ブータン人はインドまで受験に行かなければならなかった。

現在、IMSではIELTS受験のため17,500ニュルタムを徴求している。ロックダウン解除後、IMSでは先週すでに同様の試験を開催したが、その時には300人しか受験できなかった。

パンデミックの間、IELTS試験の実施は不可能だった。インドから試験官が来なければならなかったからだ。IMSはインドにあるオーストラリアの企業IDPと連携しており、IMSの役割は試験の実施にある。しかし、採点者を含めたその他すべての関係者はインドから招聘することが必要だった。そう語るのは、IMSのツェリン・ドルジ氏。

IMSは2013年からIELTSを実施している。一方、シムトカにあるRIMも、バングラデシュにあるブリティッシュカウンシルと連携して、5月末からIELTS実施を予定している。

悩ましい報道ですよね。こんな勢いでブータンから若者がいなくなるという…。

BBSのHPの写真はあまりこのIMSの受付会場の混雑ぶりを伝えきれていないので、別のソーシャルメディアに掲載されていた写真を引っ張ってきた。


すごい。この写真の方がショッキングだ。ブータンの若者は、そんなに外国に行きたいのだろうか。ブータンってそんなに魅力のない国なのだろうか。

で、行き先はほとんどがオーストラリアである。IELTS実施の運営までもインドにある豪企業がやっている。オーストラリアも、こんな勢いで貴重な人材を吸い上げていくことに、良心の呵責ってないのだろうか。これだけの規模で若者を吸い上げておいて、オーストラリアはブータンの開発の持続性について、どう考えているんだろうか。

オーストラリアはブータン国内には大使館を持っていない。インド・デリーにある豪大使館が兼轄している。だから、こんな状況になっていることに関して、残念ながら僕らはひとこと物申せる機会がない。もっとも、たとえオーストラリアの大使がブータンを訪れたとしても、今の僕の立場では、物申す場などそもそもないのだが(苦笑)。

以前、そういう立場に多少近かった頃、僕はデリーのオーストラリア大使館から出張で来られていた大使館員に、こんな問題提起をしたことがある。日本がせっかく技術協力をやって人材を育てようとしても、肝心のカウンターパートが、突如として「兼ねてから申請していたオーストラリア留学が決まったので、辞めさせてくれ」と言い出す、しかも出発日は2週間後だという。彼の配属先は「留学は個人の権利、止められない」と慰留すらしない。なんでこんなに急に留学が決まるのか、留学生受入制度として何かおかしくないか―――。

大使館の方は、「知らなかった、確認する」と言ってたが、結局何のフィードバックもなかった。

オーストラリア政府によるブータン人留学生受入れは、彼らの開発協力政策の一環だと僕は理解している。基本的に、オーストラリアはブータンに対して、留学生受入か、シニアのボランティア派遣しかしていない。しかし、開発協力ドナー円卓会議には代表団も出しておらず、オーストラリアが何を考えているのかは、ブータンにいる僕らは知る由もない。

こんなことは、お互い大使館を持っているデリーで、日本大使館とオーストラリア大使館との間で意見交換して欲しい。

長引くコロナ禍で、日本大使館の方がこれまでずっとブータンに来られていない。やむを得ない事情もあるのだろうが、デリーにいても、これはできるでしょというのが、チャナキャプリ地区に居を構える大使館同士での、対ブータン開発協力に関する意見交換ではないだろうか。オーストラリアがこんなに留学生(とその家族)を吸い上げるのなら、若者の空洞化現象が起きかねないブータン国内の状況に対して、オーストラリアは何を考えるのか、何かの機会に訊いて欲しい。

但し、話をややこしくしているのは、バングラデシュのブリティッシュ・カウンシルも絡んでいるという点である。ティンプーに大使館を置いていない各国が、ブータンを兼轄する役割を負わせているのが、時にデリーの各国大使館だったり、ダッカの各国大使館だったりする。RIMで5月末に行われるIELTSにどれくらいの若者が押し寄せるのかは続報を待たねばならない。

先進国は、開発途上国からの留学生をどれだけ受け入れられるか、留学生にとって魅力的な制度かどうか、お互いに競い合っている状況。でも、配偶者に就労可能なビザまで発給するオーストラリアには、残念ながら後発の日本も制度設計では旗色が悪いし、コロナ禍での留学生受入への態度、リーダーによる留学生へのメッセージの出し方でも、日本はオーストラリアには及ばなかった。競争に負けている国の出身者の負け犬の遠吠えに聞こえるかもしれないが、そうではない。オーストラリア政府が、ブータン国内の開発課題をどう捉えているのか、その見解を問いただしたいのである。

IELTSの話から大幅に脱線した。こんな状況下で、JICAも「地域魅力化」とか、園芸開発とか、建設人材育成とか、いろいろやろうとしているが、肝心の担い手がこうも流出していっては、効果も保証しづらくなる。オーストラリアを逆恨みしてないで、そういう「漏れ」も見込んだ事業設計にしなきゃいけないということでもあるのだけれど…。

ブータンにいても、世界とつながっていられるライフスタイル―――考えろってことか…。
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