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現職研修だけじゃなく、就業前研修も必要 [ブータン]


3月25日、新しいJICA 技術協力「建設分野における人材育成システム構築プロジェクト」の協議議事録が公共事業省とJICA調査団との間で取り交わされた。公共事業省道路局のFacebookページによると、プロジェクトの目的は、道路部門における若手技術者・技能者の育成にあるという。

想定されている協力期間は5年間で、日本から派遣される専門家の支援を受け、講義やOJTを通じて、ブータン人技術者や技能労働者の育成を図るのだという。この協議内容は、今後ブータン政府とJICAとの間で詳細計画が詰められ、その上で実施されるのだという。

まだ実施合意には至っていないので、開始時期がいつになるのかはわからないが、自分が派遣されているプロジェクトの経験で言えば、実施枠組み合意(R/D)にはあと3カ月程度、その後専門家技術サービスの調達手続きに入るので、2023年初頭には開始されるのではないかと思われる。

明らかに必要とされる人材なので、実施の妥当性には疑問の余地はないと思う。これまでに橋梁建設や道路斜面管理マスタープラン等でJICAが培ってきた道路局との関係を発展させていくとしたら、次のステップとして人材育成システムというのも頷ける。

その上で、ちょっとだけお願いです。

1つめは、道路局と協議しているので当然前提としてあるのは、公共事業省がすでに採用している技術者や施工監理業者を対象とした人材育成システムなのだろう。必要なスキルセットを定義して、それを座学や実習などで運用していくのだと思われるが、できれば、そうした公共事業に人材を供給している高等教育機関向けの、就業前教育とのシナジーを考えてもらいたい。

たいていの採用は、プンツォリンの科学技術カレッジ(CST)か、デワタンのジグミナムゲル工科大(JNEC)の土木工学科の卒業生と言われている。なので、採用時点で「最低これぐらいのことは知っていて欲しい」という知識やスキルを明示して、それを大学での工学教育に組み込む取組みを考えて欲しい。

2つめは、人材育成システムで組み込まれる「知識」や「スキルセット」の中身に関することで、デジタル工作機械やIoT、AIなどを用いたインフラのモニタリングとか、材料に関する理解も含めて欲しい。

道路舗装用アスファルトに廃プラスチックを練り込む技術はすでにブータンでは実用化されているが、道路舗装や斜面安定化に消石灰を用いるとか、日本だったらあり得る技術がブータンにはまだない。石灰石はこの国唯一の鉱物資源だが、現状セメントかバングラデシュ輸出用で養殖池の消毒で用いられる石灰パウダーぐらいでしか石灰は活用されていない。高等教育機関でも材料工学は教えられていない。

別の例だが、ゲドゥからプンツォリンに少し下っていくと、濃霧多発地帯がある。ここでは毎年通行車両が崖から転落するという痛ましい事故が起きている。もちろんこの原因の一端は運転者のスピードの出し過ぎにもあり、それは交通ルールの問題といえるが、この濃霧多発地帯での誘導灯の研究開発とか、現状どこがリードするのかがよく見えてこない。

結局のところまた高等教育との連携の話になっていくのだが、就業前教育というよりは、現職教育と研究開発機関とのシナジーという観点で、高等教育機関を巻き込んで欲しい。CSTには間もなくファブラボもできるし、電気通信学科やIT学科もある。JNECには機械工学科もある。そういう学科も巻き込んで、さらにファブラボのデジタル工作機械も活用してもらって、現場で役立つソリューションの試作にも取り組んでくれたら嬉しい。

3つめも、結局はJICAのやっている他の案件とのシナジーに関する要望だが、JICAが2019年度あたりからブータンでも行っている留学支援制度で、道路局から名古屋大学や岐阜大学に行っている技術者が何人かいた気がする。当然留学から戻って来て省に復帰すれば、このJICAの新プロジェクトには関わっていくのだろうと思うが、逆にこういう留学支援制度をインセンティブにして候補者選考するといった形で、これから構築される人材育成システムに組み込んでいって欲しい。

協力案件ごとのブツ切りで考えていたら、面的な展開にはなり得ないと思う。もちろんこれは僕自身が肝に銘じていなければいけないことで、ファブラボCSTをベースにして僕の方からラブコールをすることも当然考えている。ことファブラボCSTに関して言えば、上記2に関するコラボの受け皿として、喜んで提供したいと思っております。
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