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ロックダウンの副作用 [ブータン]

ロックダウンの副作用
Side-effects of lockdown
Nima Wangdi記者、Kuensel、2022年2月9日(水)、
https://kuenselonline.com/side-effects-of-lockdown/
【抄訳】
1)ティンプーのロックダウンも4週目に入り、ナムセリンでバーを営む女性は、配給も貯金も底を尽き、毎日が苦闘だと述べている。お店は彼女の家族にとっての唯一の収入源だった。母と2人の兄、1人の姉、そして若い弟妹の教育費の負担を負っている。貯金は使い切り、家賃も気になる。彼女の支払う家賃は月1万5,000ニュルタムだ。いろいろなことを考えると眠れなくなる。家族に何かあったらどうしようかと。ティンプーのようなところでは、安定的な収入源がない状態では生きていけない。ロックダウンがなければいいとは必ずしも思わないが、生計をどうするかは大きな心配。

2)バベサで衣料品店を営む別の女性は、何もせずに家にいるのは退屈だと述べる。市中感染の心配はないけれど、ロックダウンが終わった後の家族のサバイバルは心配だと言う。彼女の月額家賃は自宅とお店を合わせると4万2,000ニュルタム。まだ払ってないという。

3)会社に勤める25歳の女性は、友人との交流が途絶えて、メンタル的に支障を来しているという。不安障害を患っていて、常に動機を持ってアクティブでいるには課題も大きい。1日中同じ家の中で家族全員が過ごしていると、家族の小言を聴かされることも多くなる。特に、高齢者は四六時中多くの人に囲まれるのが嫌なのか、不機嫌になることが多いような気がする。

4)ロックダウンが唯一の解決策なのか?ある公務員の女性は、ロックダウンに反対なわけではないという。でも、もっとうまくやる方法を考える時だと述べる。ウィルスは突然変異し、ロックダウンにも関わらず新たな陽性者が報告される。これは自分たちの戦略を変更する必要があることを示していると彼女は言う。最初のうちは、政府関係者は1週間以上もロックダウンが続かないよう、将来的にはもっとスマートなロックダウンを実施すると多く語っていた。パンデミックが始まってから2年が経過するが、未だに我々が苦戦している。ウィルスそのものよりも、いつまでも終わらないロックダウンのアナウンスが自分にもっと大きな影響を与えているという。ロックダウン入りして3週間が経過した後でも市中感染が多く見られるということは、そもそもロックダウンが機能していないということではないか。

5)別の市民は非効率なロックダウンのプロトコルが他の疾患や心の病で命を奪うことにもつながっていると述べる。人は社会的な生き物で、あまりにも長期間つなぎとめていれば深刻な問題につながりかねない。ウィルスとの共存を学び、それをやり過ごす方法を模索する時だと彼は言う。ロックダウンは人々のビジネス活動よりも心理的ウェルビーイングに大きなインパクトを与える。多くの人がその日の賃金を得るのに苦戦している。彼らが働けない状況にあるとき、彼らに何が起こるだろうか?彼はそれを心配している。

6)出歩く人々とそのホスト:バベサ在住のある女性は、彼女に家には一時9人もの同居人がいたという。ロックダウンになり、行き場を失った人々だ。彼らは安全のために外を動き回らない。なんとかそれぞれの自宅に戻った人もいれば、まだ居残っている人もいる。居残っている人々にも食べさせなければいけないので、食費が馬鹿にならない。

7)チラン出身でティンプーに出てきていたある住民は、チャンザムトのいとこの家に同居して約1カ月になるという。村では農作業が待っているのに、移動することができないと嘆く。国内移動許可証の電子申請はしてみたが、自分のように自家用車を持っていない人間には適用されない。ここにいるにも多くのことをせねばならない。

8)タシヤンツェで行き場を失った別の人は、兄弟が自家用車を持っていたのでブムタンの自宅になんとか辿り着けた。タシヤンツェでは約1週間居候を迫られ、自分のホストに大きな負担をかけた。ホストはそんなことは表情にも出さなかったが、自分は非常に居心地が悪かったと述べる。

9)しかし、ティンプーのある住民は、自分の家族がロックダウン中に亡くなった時、なんとかやり繰りできたと認める。火葬場で多くの来訪者のアテンドや給仕をする必要がなかったからだ。政府は葬儀への出席者を20人までに絞った。金銭的に節約したかったわけではないが、こんな状況で大勢の人に給仕するのが意味があるとも思えない。

10)一方、医療従事者とDeSuupは南部メガゾーンと第2コアゾーンのルンテンフ地区から6,600のサンプルを収集。結果は本日わかる。集団検査は今日は第2コアゾーンからはじまる。

これでもかというくらいに、しつこいロックダウンの報道の紹介でごめんなさい。でも、このクエンセル紙のニマ・ワンディという記者、結構こまめに街の声を拾っている気がする。僕はクエンセルよりもBBSの報道の方を引用することが多いが、たまにクエンセルの記事を引用しようとすると、気付けばニマ・ワンディ記者の記名記事だというケースが多い。

首都がロックダウンになってから、「Stranded People」という言葉を頻繁に目にするようになった。直訳すると「にっちもさっちもいかなくなった人々」ということになるが、これじゃ何のことかよくわからない。外国人が空港まで行こうにも、ロックダウンのせいで足がないような場合、このカテゴリーに含まれる。何かの理由でティンプーに来ていて、それで帰れなくなったような人々のことを指すらしい。

でも、このクエンセルの記事でわかったのは、「Stranded People」にはホストになっている家がティンプーにあるらしいということだ。以前何かの本で、血縁関係はないけれど義兄弟のような関係がブータンの人々の間にはあって、家計調査等で世帯訪問すると、世帯構成員ではないのに長期滞在している人が結構多いと聞いたことがある。それが「Stranded People」という呼称で呼ばれているみたいだ。

ティンプーにはそんな「Stranded People」が相当人数いるようで、毎日チャンリミタン競技場の駐車場から、バスが何台か、地方に向けて出発している。このクエンセルの記事は、そうした「Stranded People」に言及している点でちょっと特筆すべきだと思った。

もう1つ気になったのは、メンタル面への影響に相当踏み込んだことを書かれている点だ。

こんな状況が4週間も続くと、同居している家族との間でいろいろなストレスが生じることもあると思う。実際、こんな状況で女性へのDVが増えているとの指摘も耳にする。

それは同居人がいる場合の話だが、1人暮らししていても、社会とのつながりが途切れたような気持ちになることは多い。巣ごもりしている間は絶好の仕込み時だとか、絶好の読書タイムだとか、ブログで威勢のいいことを書いていても、さすがに4週目に入ると精神的な落ち込みが目に余るようになった。

この記事を見かけたからというわけではないが、9日(水)朝ふと思い立ったことがある。

待っていてもしょうがない、自分からつながりを作りに行かないとダメだ。

だから、この日はいつもにも増して、SNSで知人に連絡入れたり、自分からZoomのオフサイトミーティングを提案したりと、意識的につながり再構築成分を多めの活動にした。特に、ちょっとしたSNS上でのやり取りが、未だ俺もつながっているなと感じさせられて、嬉しかったりする。勿論、日本で暮らす家族との電話も嬉しいが、それは以前からやっていることだ。

正直言うと、これだけロックダウンが長引いているのに、派遣元の組織だけでなく、日本大使館も、ちょっとした「声かけ」すらやられていないのはどうなんだろうかと思う。同じホテルに長期滞在しているインド人のエンジニアによると、インドはコロナに対してロックダウンのような行動規制は設けていないという。ブータンとは真逆だ。いくらブータンに物理的に大使館を置いていないとはいえ、インドと同じ基準でブータンを見ないで欲しい。

タグ:COVID-19
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