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『花の降る午後』 [読書日記]

花の降る午後 (角川文庫)

花の降る午後 (角川文庫)

  • 作者: 宮本 輝
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2015/11/25
  • メディア: Kindle版
内容紹介
最愛の夫を癌で亡くし、神戸の老舗レストランを女手一つで切り盛りする典子。仕事は厳しく人の良いシェフ、実直で有能な支配人、懸命に働くウェイターたち――。店を継いでからの四年間を振り返ると、彼女はとても充ち足りる。そんなある日、生前の夫に買ってもらい、今は店に掛けた油絵を貸してくれという青年が現れた。彼の名は高見雅道。その〈白い家〉という絵の作者だった。一方、店を狙う魔の手が伸びてきて――。典子に訪れた恋、そして、今、闘いが始まる。異国情緒溢れる神戸を舞台に描く真摯に生きる人々の幸福物語。
【購入(キンドル)】
決して余裕があったわけではないのだが、ちょっとした空き時間に読み進められる小説と言うことで、Kindle Unlimitedで探した宮本輝作品をダウンロードすることにした。ダラダラと1週間近くかけて読み進めたが、さすがに最後の3割程度はとっとと読み終わりたいと言う気持ちが強まり、結果睡眠時間を削ることになってしまった。

発表が1988年、バブル経済真っ只中の、しかも神戸の話である。毎月フランス料理を楽しみに訪れるマダムの集まりとか、僕にも、僕の妻にも、今の生活からはイメージがしづらく、いい時代――というか、日本にも勢いがある時代だったんだなと改めて思う。

同時に、今そういう状況にない僕らにとっては、読んでてちょっとした劣等感を感じてしまう作品でもある。10歳も年下の男性と恋に落ちて重ねる情事とかはまだましな方で、それよりもはるかにすごい倒錯した世界も垣間見えたりするが、神戸・山の手のフランス料理店のオーナーに気にかけてもらえるなんてシチュエーションは、天地がひっくり返ったって僕にはあり得ないので、こと本作品に限っては、読んでてあまり気分のいいものではなかった。それがとっとと読み終わらせたかった要因の1つかも。

そうした、わりとストレートな色恋沙汰に加えて、悪人が結構登場し、かつ闇の世界の存在も描かれたりと、昨年から読み重ねてきた宮本作品とはちょっと雰囲気が違っていた。バブルの頃の小説には大なり小なりあったのかもしれないが、少し冒険的な要素を入れていかないと読者に受け入れられにくいというのもあったのかもしれない。ただ、極悪人を登場させているわりにはあっさりと退場に向かわせていたりと、あまりこういう登場人物の扱い方が得意じゃないのではないかとも感じた。

さらにオジサン読者を悩ませたのは、主人公・典子の心が揺れに揺れて、どっちに展開していくのか、終盤までまったく読めないことだった。お店をどうしたいのか、高見との恋は再婚に結び付くのか、いろいろな悩み事の各々になかなか決断が下せない中で、その時々のことの成り行きに流される彼女には、ちょっと感情移入しにくかった。何をどうしたいのかが定まらない中でフラフラしているのはここ数年の僕も一緒なのんで、せめて小説には自分とは違うものを期待したかった(さっき書いたことと違うじゃないかと突っ込まれそうだが…)。フラフラしている読者が、フラフラしている主人公を見ても共感するのは難しい。

小説はある意味読者のないものねだり。自分にはそうできないから、フィクションの世界ではそうできる登場人物を期待する。そういう意味でも、今回は、自分が求めていたのとは違う読書だった。
タグ:宮本輝 神戸
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