『関ケ原合戦全史 1582-1615』 [読書日記]
内容紹介【コミセン図書室】
日本史上「最大の合戦」を30年のタイムスパンで読み解く。秀吉の晩年から会津征伐、関ヶ原本戦、東北・九州の戦い、豊臣家滅亡まで―――。関ヶ原合戦(1600年)はわずか半日で終結した戦いだが、この戦の遠因は、本能寺の変(1582年)を経て秀吉時代になって以降の、独裁体制のひずみと諸将間の確執、各大名家の家中問題にあった。本書では、秀吉の晩年から、五大老五奉行による政権運営時代、 会津征伐、関ヶ原本戦、東北・九州の戦い、家康による戦後処理、豊臣家滅亡による「関ヶ原体制」の終焉(1615年)までの実態を、良質な一次史料と最新研究を用いて解明。後世の編纂物などの二次史料に影響されがちな関ヶ原合戦史を訂正し、今語りうる史実の全体像をつまびらかにする。
NHK大河ドラマ『麒麟がくる』が放送されていた頃、ほぼ毎週、ヤフーニュースでドラマと史実との違いについて指摘するコラムを書かれていた歴史学者による最新刊である。過去にもこの著者の本は読んだことがある。同じNHK大河で『軍師官兵衛』が放送されていた頃には黒田官兵衛に関する著書を発表していたし、『真田丸』の頃には真田一族、『おんな城主直虎』の頃には井伊直政の一族をフィーチャーした著書を発表されている。戦国から安土桃山時代の諸側面をとらえた著書を、ほぼ1年に1冊のペースで発表されていて、いわば売れっ子の歴史学者といえるだろう。
最近目立つのは関ケ原の合戦で、関ケ原だけを取り上げるのではなく、それを同時期に起きていた東北地方や九州地方での東軍西軍それぞれに与した大名や城代の対応ぶり、さらに遡って合戦に至るまでの両軍武将のお家の事情、さらに戦後の処理まで詳述され、それで『全史』と銘打っている。その名の通り、豊臣秀吉没後から大坂夏の陣までの17年間の政治史の、ある意味決定版的な本だろう。
しかも、何らかの加工や操作が加わっていることが疑われる二次史料でなく、極力一次史料に基づいて考察しようという姿勢や、ここ数十年に出てきた歴史学者の研究成果のレビューをふんだんに盛り込んだ上での独自の考察など、研究者としてのオーソドックスな姿勢が貫かれている。一次史料にしても、先行研究にしても、その読み込みの分量は半端なく、これくらいの読み込みをやらないと本は書けないのかと驚嘆させられる。というか、本を書くならこれくらいの覚悟を持って臨まないと読ませる本は書けないと訴えられているような気すらしてしまう。
これ読んだらしばらく歴史解説はお休みでもいいなと思えてきた。5月中旬からいよいよ再度の海外赴任が迫ってきている。(勿論、経由地の新型コロナウィルス感染拡大とか任国の拡大状況とか、はては日本国内での変異株の爆発的感染拡大で、僕自身が感染してしまうリスクだって考えられるため、予定通り出発できる保証はないが。)この本をコミセン図書室に返却したら、よほどのことがない限りは新しい本を借りることはせず、今積読状態にしてある我が家の蔵書をもう少し切り崩す作業に今後4週間を費やすつもりでいる。その中には少なくとも歴史書はない。
こと歴史書に関しては、この2年間、本当に楽しませてもらった。これを糧にして、駐在先での現地の人との日本史談義に深みをもたらすことができたら面白いかも。
コメント 0