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Self-Sufficient City(自給自足する都市) [持続可能な開発]

The Self-Sufficient City

The Self-Sufficient City

  • 作者: Guallart, Vicente
  • 出版社/メーカー: Actar
  • 発売日: 2014/04/01
  • メディア: ハードカバー
内容紹介
インターネットは私たちの生活を変えたが、それはまだ私たちの都市を変えていない。どんな技術的革命も、ライフスタイルのいくつかの側面で同時多発的な変革を伴う。自動車と石油の時代が20世紀の都市を形作ったとすれば、21世紀は情報社会が都市を形作るといえるだろう。それは止められない進化である。しかし、基準を持ってリードしていくことが必要である。それは、人間が何世紀にもわたって蓄積してきた都市の経験を生かせるかどうか、成長が無限でなく、私たちの惑星が提供するエネルギー資源に有効期限があるということを理解しているかどうかの問題である。ヴィセンテ・ガラルトは、この魅力的なプロセスを、この本にアイデア、情報、提案を盛り込まむことで公開している。未来の建築の観察者、思想家、開拓者として、ガラルトは都市の再生を、住宅レベルから大都市レベルまで階層を分けて考察することで、都市のイノベーションの新しいエコノミーへの刺激を試みる。現地資源を自給自足的に活用し、知識や情報はグローバルにつながっているという途である。こうしたt外とつながっている自給自足は、都市とそこに住む人々をより強く、自由で、独立性を高めてゆくだろう。

4月に巣ごもりに突入すると同時に購入した1冊。多分オンデマンド製本なんだろうけど、段落の切り方がわかりにくく、フォントもわかりにくい。所々スペルや文法に、僕でも気づく間違いがある。どういう編集をやってたんだろうかと苦笑しながら、ダラダラと読み進めたが、枠組みとしてはとてもわかりやすく、内容は相当面白い。都市化が進むこれからの時代に、どのような都市化であるべきか、ビジョンを提示してくれている。

著者は、2014年夏にバルセロナでローンチされた「ファブ・シティ」という世界的イニシアチブの理論的支柱となった建築家で欧州最初のファブラボ「ファブラボ・バルセロナ」ができたカタロニア高度建築研究所(IAAC)の所長である。僕は「ファブ・シティ」についてはホワイトペーパーなどを読んである程度は理解しているつもりだけれど、その理論枠組みをもう少しちゃんと理解したいと思って購入に踏み切った。これだけ読み進めるのに時間を費やすと、前に書かれていたことを思い出すのも難儀だが、概念枠組みがクリアなので、後から引用する時には活用しやすいだろう。

消費するものをすべて地場で生産し、その生産に必要な知識や情報のやり取りではグローバルにつながっている都市、それが本書ではイメージされている姿である。その姿の具体的な実現に向けて、世帯レベルから、1棟のビルレベル、さらには街区レベル、近所(人の生活圏)レベル、都市全体、大都市レべル、地域レベル、そしてグローバルレベルと、いくつかの階層別で、それぞれ何にどう取り組んでいく必要があるのかを論じている。

例えば、世帯レベルであれば、ライフスタイルの変革や室内レイアウトの話が多く、ビルレベルでも建築とかエネルギー節約技術の話が多いが、そこからは公共空間の配置や共同菜園のような話が出てきて、街区レベルになるとものづくりができるファブ施設の話が登場する。電気自動車を利用したアーバン・モビリティや廃棄物管理の話もカバーされている。当然、センサーを街の至るところに配置して行政に対する住民の交渉力を高めるためのデータ収集についても触れている箇所があり、都市のガバナンスに関する論点も含まれている。およそ都市にまつわる論点がかなり包括的にカバーされていて、「自給自足」というキーワードの下で、相互に関連していることを改めて認識させられる。

「ファブ・シティ」というイニシアチブは、「ファブ」が付いているために、僕はデジタル・ファブリケーションの話が中心を占めているのではないかと勝手に想像していた。ホワイトペーパーには幾つかの戦略取組み領域が挙げられているが、これも、できるところから手を付けていくという始まり方をしている印象である。例えばパリは食料の自給自足宣言はしていてもセンサー活用によるアーバンセンシングの話はあまりされていなかったりする。ファブ・シティに参加している都市は30近くあるが、今世紀半ばまでに、各々の都市で消費するものはそこで生産しようという目標は掲げつつ、各々の都市がやっている取組みは結構バラバラだ。

そんな中で、バルセロナは市内に確か9つある街区それぞれにファブラボを設けて、各々が特色ある取組みをして相互補完していたりしていて、ファブ・シティの理想形に近い姿なのかもしれない。本書も当然バルセロナのケースが中心に描かれている。日本でバルセロナというと、サッカーの本かたまに建築物の本がある程度で、ここまで進んでいることを知ることができる文献はほとんどない。サッカーやガウディだけでない、バルセロナの先進性を本書からは垣間見ることができる。

今世紀半ばに向けて、都市人口は農村人口を逆転すると言われている。都市が「大量生産・大量消費」そして「大量廃棄」のライフスタイルを引きずったままで膨張を続けていくと、資源やエネルギーの大量消費につながり、CO2の大量排出源になり、かつごみも大量に排出することになりかねない。SDGsがわざわざ都市にターゲットを絞った目標を1つ立てているのもそうした背景からだと思う。

だとしたら、都市単位であっても課題は包括的に捉える必要があるし、国際交渉のような国対国という協調枠組みだけでなく、都市間の協調枠組みが必要であり、さらに言えばそれが今後の国際交渉をリードしていくような姿になっていくのではないかと想像する。本書で、著者は、現在都市間の協調枠組みが不在だと指摘しているが、ファブ・シティはそうした都市間協調枠組みの1つとなっていくに違いない。

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