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『図解よくわかるスマート農業』 [仕事の小ネタ]

図解よくわかるスマート農業-デジタル化が実現する儲かる農業-

図解よくわかるスマート農業-デジタル化が実現する儲かる農業-

  • 出版社/メーカー: 日刊工業新聞社
  • 発売日: 2020/03/28
  • メディア: 単行本
内容紹介
農業法人化や企業の農業参入が活発になり、「儲かる農業」の成功事例が生まれてきました。特に、IoTやAI、ロボットなどを活用した「スマート農業」が実用段階となり、農業のイノベーションが加速しています。本書では、実際に農業に参入するにあたっての障壁やその課題を解決するデジタル化といった「スマート農業」に焦点を当てます。著者が所属する日本総合研究所では、栃木県茂木町で実証を通して先進農業モデルの調査・研究・提案を行っています。この内容にも多分に触れます。

「図解」と銘打つなら、もう少し図を入れて下さい。印象としては文字ばっかりという感じで、これまで読んできた「図解」と付いた解説本と比べて、サラッと読んでわかった気になるというおいしさはない本だった。

ひと言で言ってしまえば、裏の畑での野菜栽培での労力軽減といった程度のものに個人レベルで取り組むのは「スマート農業」ではないというのがよくわかった。あるいは、故郷で70代や80代の親がいまだに田畑に出て働いているのを、少しでも負担軽減してあげられないかと思って、個人的に何らかの装置を作って実装してしまうというのも、「スマート農業」の射程からは外れているというのも…。

要するに、ソリューションを考えて、提供する主体が企業である場合が、「スマート農業」にあたるらしい。

執筆者側にそんな意図はなかったとしても、本書の主役は農家の直面する課題を特定してソリューションを提供する企業であって、それを導入する農家でもないということである。農業分野で新規顧客開拓しようとするメーカーやコンサルタント、農業法人でも設立して請け負い農業をやりたい企業家にはいい読み物だと思うが、農家が主役の描き方ではないので、農業従事者にはあまりアピールしないだろう。

そして、なにげに自社の開発したシステムをBOXコラムで宣伝もされている。

最初から最後まで、「何か違う」というふわふわ感が拭えないまま、ダラダラ読んでなんとなく読了。それで結論は、ここに書かれていることは、僕自身が実践するのにはあまり役に立たない。

実家の田畑でのイノシシやシカによる獣害への対策とか、夏場の水やりや除草作業の負担を劇的に軽減する方法とか、地域の市民発明家が農家さんと組んで、何らかのシステムを実装しちゃった地域での協働の事例集であれば、面白かった。あるいは、都市での循環型社会の実現に向けた取組の一環で、都市で消費する野菜を都市で作ってしまう食料自給のような取組みの実践事例でもあれば、それも面白かっただろう。パリが2030年までに食料自給自足する都市を目指すような宣言をしているが(https://www.api-site.paris.fr/paris/public/2018%2F9%2FENG_Abrege_StratAlim.pdf)、デジタルテクノロジーを用いた食料生産というのなら、こういうのもカバーしてくれたら面白かったのに…。当然ながら、パリのケースだって、主役は市民であって、企業じゃない。

ということで、今回急遽図書館で借りたこの1冊。愚痴ばかり述べたうえで本日返却する。


後で気付いたんだけど、本書は日刊工業新聞社刊となっているから、新聞紙上で行われた連載かなにかをまとめて本にした可能性がある(調べてないけど)。この新聞の想定読者を考えれば、本がこういう内容であることは致し方ない。読む本を事前にスクリーニングする時には、どこから出ている本なのかというのも要チェックだと痛感した。

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