プラゴミから3Dプリントへ [持続可能な開発]
プラスチック廃棄物のアップサイクルによる、
ゴミ収集作業員の生計と都市の持続可能性の向上
Improving wastepicker livelihoods and urban sustainability
through the upcycling of plastic waste
URL: https://www.socialseva.org/protoprint/
プロトプリント・プロジェクトとは?
プロトプリント・プロジェクトは、廃プラスチックのリサイクルのための体系的で自立的な循環モデルを段階的に実装することにより、リサイクル部門のインフォーマル性を変革していこうという共同イニシアチブである。 具体的には、低コストの技術ソリューションをコミュニティ開発や創造的な資金動員策、官民パートナーシップ等と組み合わせて実装し、都市のゴミ収集作業員のステイタスをリサイクルのバリューチェーンの上方に引き上げ、生計を向上させることを目的としている。そうすることで、プラスチック廃棄物は都市環境の中での加工プロセスが改善され、インフォーマル部門に位置するゴミ収集作業員や廃棄物管理中小零細事業者がフォーマルなバリューチェーンに統合される動きが進むと期待される。このプロジェクトは、300万人以上の住民が暮らすプネ市を拠点としている。
プロトプリント・プロジェクトは、自主運営される廃棄物加工ユニットの発展を支えるエコシステムを地域に作ることを目指している。このユニットはゴミ収集作業員メンバーから構成され、低コストの技術ソリューションと標準化された加工技術を用いて、廃棄プラスチックをフレーク状に破砕し、このフレークをエンドユーザーに対して販売する。販売は産業セクターのパートナーとの契約に基づき、個々の作業員に公正な賃金を保証する販売価格とすることになっている。
そうする中で、各々の加工ユニットは持続的かつ複製及び規模拡大が可能なビジネスとして機能し、最終的にはインフォーマルな作業員をフォーマルな経済に統合されるところまで引き上げ、医療保険のような恩恵を得られるようにし、ビジネスセンターとして機能するよう育てていくことを目指している。
フレーク生産に加えて、プロジェクトの製品チームは、いくつかのユニットとの協働で、廃棄プラスチックのさらなるアップサイクルを図り、3Dプリンターのフィラメントのフェアトレード製品化や、その他消費財といった高付加価値の製品開発にも取り組んでいる。こうした高付加価値製品の開発と販売が、ゴミ収集作業員にさらに大きな経済的ステイタスの上昇余地を与える。
プロジェクトは欧州の団体と連携し、これらの製品の標準化と品質保証の取組みを進めており、インド及び欧州市場での顧客獲得に取り組んでいる。
大まかに言って、プロジェクトは廃棄プラスチックのリサイクルに市場ベースのソリューションを適用するため、技術面、運営面、資金面の支援を行っている。都市のゴミ収集作業員のステータス向上を促進し、プラスチックのリサイクル率を引き上げることで環境改善にも効果をもたらすことが目標とされる。
プロジェクトの背景
廃棄プラスチックの管理はインドでも深刻な課題として認識が高まってきている。2019年の政府報告書によると、インドは毎日2万6000トンのプラスチックゴミを排出している。うち9400トンは回収されないか、野外廃棄されている。このプラスチックの大半は都市で生成され、過去20年間でその量が激増した。こうした都市の廃棄プラスチックはしばしば分別されずにその他の都市固形廃棄物と一緒に廃棄され、効果的にリサイクルされる前に分別作業が必要とされる。これは極めて労働集約的な工程であり、これを非正規の作業員に依存している。非正規のゴミ収集作業員は、手でプラスチックの分別回収を行っている。
こうした個人の作業員がリサイクリングのピラミッドの底辺におおぜいいるという事実があるにも関わらず、これらの作業員は危険な環境下での労働を強いられ、有害廃棄物や医療廃棄物などの危険なマテリアルを扱うにも関わらず、日雇い契約に基づき、怪我や病気の高いリスクにつながっている。
作業員は、自分たちが集めたプラスチックを地元の中間業者に売り、この中間業者が廃棄物をまとめ、スクラップ業者やリサイクル工場に販売している。リサイクルの工程で、かなり大きい価値が作られるが、ゴミ収集作業員本人はその働きへの対価が得られず、貧困から抜け出すことができない。
予想では、インドには100万人以上のゴミ収集作業員がいるという。彼らの多くは脆弱な人口グループに属し、移住労働者や女性、子どもと同じように見られている。
廃棄プラスチックは環境や人の健康にネガティブな影響を及ぼすことが指摘されている。プラスチックが河川に流れ込むと、水源を汚染し、水生生物を殺し、飲料用水を飲めなくし、食物連鎖の中でマイクロプラスチックの生体内蓄積をもたらす。結果的には人の生活に影響を与える。地上の廃棄プラスチックは有毒化学物質を地下水に滲出させ、土壌劣化を招く。インドでは廃棄プラスチックは度々街角で焼却されている。これが有毒物質を大気にまき散らす。
プラスチックも化石燃料を加工することで生産される。プラスチックはそのライフサイクルを通じて、大きなカーボン・フットプリントを残す。廃棄プラスチックを巡って高まってきている懸念は、拡大生産者責任(EPR)枠組みに基づくプラスチックの新規生産の制限につながっている。EPR枠組みは製造業者と小売業者が彼らの取扱い製品から出る廃棄物の管理について規定するもの。しかし、この方面での進展は遅い。リサイクル産業のインフォーマル性により、透明性の高いデータ収集やフォーマルなバリューチェーンへの統合を難しくしている。
以前読んだ本で何かの拍子に、インド・プネの「プロトプリント(Protoprint)」というプロジェクトのことを知った。廃棄プラスチックを回収して、3Dプリンター用のフィラメントに再加工して、「フェアトレード・フィラメント」として販売するという仕組みだと描かれていた。
それで気になって調べてみたが、どちらかというとプロトプリントはプラスチックのアップサイクリング全般に取り組むプロジェクトで、3Dプリンターのフィラメントというのは、その中でも特に高付加価値の製品としての位置付けだということがわかった。
こういうアップサイクリングの仕組みは、単に再加工用の機械を導入したらすぐに回るというものではない。アップサイクリングの素材となる原料プラスチックをきれいな形で、しかも材質によって分別された形で回収できる仕組みが併せて確立されていないといけない。上記のプロジェクトの説明ではその部分があまり詳しく描かれていないが、そこはSWaCHというゴミ収集作業員(Waste Pickers)の組合組織が既にあるらしい。
ちなみにこのSWaCHについては、先週もご紹介した友人、Taylor Cassが2017年にいいルポを発表している。その内容まで今回は紹介しないが、併せて読むと理解しやすいかもしれない。
"Picking dignity"
Resource Recycling, September 4, 2017.
URL: https://resource-recycling.com/recycling/2017/09/04/picking-dignity/
ああ、チャンスがあればプネはまた訪れてみたいな~。
ゴミ収集作業員の生計と都市の持続可能性の向上
Improving wastepicker livelihoods and urban sustainability
through the upcycling of plastic waste
URL: https://www.socialseva.org/protoprint/
プロトプリント・プロジェクトとは?
プロトプリント・プロジェクトは、廃プラスチックのリサイクルのための体系的で自立的な循環モデルを段階的に実装することにより、リサイクル部門のインフォーマル性を変革していこうという共同イニシアチブである。 具体的には、低コストの技術ソリューションをコミュニティ開発や創造的な資金動員策、官民パートナーシップ等と組み合わせて実装し、都市のゴミ収集作業員のステイタスをリサイクルのバリューチェーンの上方に引き上げ、生計を向上させることを目的としている。そうすることで、プラスチック廃棄物は都市環境の中での加工プロセスが改善され、インフォーマル部門に位置するゴミ収集作業員や廃棄物管理中小零細事業者がフォーマルなバリューチェーンに統合される動きが進むと期待される。このプロジェクトは、300万人以上の住民が暮らすプネ市を拠点としている。
プロトプリント・プロジェクトは、自主運営される廃棄物加工ユニットの発展を支えるエコシステムを地域に作ることを目指している。このユニットはゴミ収集作業員メンバーから構成され、低コストの技術ソリューションと標準化された加工技術を用いて、廃棄プラスチックをフレーク状に破砕し、このフレークをエンドユーザーに対して販売する。販売は産業セクターのパートナーとの契約に基づき、個々の作業員に公正な賃金を保証する販売価格とすることになっている。
そうする中で、各々の加工ユニットは持続的かつ複製及び規模拡大が可能なビジネスとして機能し、最終的にはインフォーマルな作業員をフォーマルな経済に統合されるところまで引き上げ、医療保険のような恩恵を得られるようにし、ビジネスセンターとして機能するよう育てていくことを目指している。
フレーク生産に加えて、プロジェクトの製品チームは、いくつかのユニットとの協働で、廃棄プラスチックのさらなるアップサイクルを図り、3Dプリンターのフィラメントのフェアトレード製品化や、その他消費財といった高付加価値の製品開発にも取り組んでいる。こうした高付加価値製品の開発と販売が、ゴミ収集作業員にさらに大きな経済的ステイタスの上昇余地を与える。
プロジェクトは欧州の団体と連携し、これらの製品の標準化と品質保証の取組みを進めており、インド及び欧州市場での顧客獲得に取り組んでいる。
大まかに言って、プロジェクトは廃棄プラスチックのリサイクルに市場ベースのソリューションを適用するため、技術面、運営面、資金面の支援を行っている。都市のゴミ収集作業員のステータス向上を促進し、プラスチックのリサイクル率を引き上げることで環境改善にも効果をもたらすことが目標とされる。
プロジェクトの背景
廃棄プラスチックの管理はインドでも深刻な課題として認識が高まってきている。2019年の政府報告書によると、インドは毎日2万6000トンのプラスチックゴミを排出している。うち9400トンは回収されないか、野外廃棄されている。このプラスチックの大半は都市で生成され、過去20年間でその量が激増した。こうした都市の廃棄プラスチックはしばしば分別されずにその他の都市固形廃棄物と一緒に廃棄され、効果的にリサイクルされる前に分別作業が必要とされる。これは極めて労働集約的な工程であり、これを非正規の作業員に依存している。非正規のゴミ収集作業員は、手でプラスチックの分別回収を行っている。
こうした個人の作業員がリサイクリングのピラミッドの底辺におおぜいいるという事実があるにも関わらず、これらの作業員は危険な環境下での労働を強いられ、有害廃棄物や医療廃棄物などの危険なマテリアルを扱うにも関わらず、日雇い契約に基づき、怪我や病気の高いリスクにつながっている。
作業員は、自分たちが集めたプラスチックを地元の中間業者に売り、この中間業者が廃棄物をまとめ、スクラップ業者やリサイクル工場に販売している。リサイクルの工程で、かなり大きい価値が作られるが、ゴミ収集作業員本人はその働きへの対価が得られず、貧困から抜け出すことができない。
予想では、インドには100万人以上のゴミ収集作業員がいるという。彼らの多くは脆弱な人口グループに属し、移住労働者や女性、子どもと同じように見られている。
廃棄プラスチックは環境や人の健康にネガティブな影響を及ぼすことが指摘されている。プラスチックが河川に流れ込むと、水源を汚染し、水生生物を殺し、飲料用水を飲めなくし、食物連鎖の中でマイクロプラスチックの生体内蓄積をもたらす。結果的には人の生活に影響を与える。地上の廃棄プラスチックは有毒化学物質を地下水に滲出させ、土壌劣化を招く。インドでは廃棄プラスチックは度々街角で焼却されている。これが有毒物質を大気にまき散らす。
プラスチックも化石燃料を加工することで生産される。プラスチックはそのライフサイクルを通じて、大きなカーボン・フットプリントを残す。廃棄プラスチックを巡って高まってきている懸念は、拡大生産者責任(EPR)枠組みに基づくプラスチックの新規生産の制限につながっている。EPR枠組みは製造業者と小売業者が彼らの取扱い製品から出る廃棄物の管理について規定するもの。しかし、この方面での進展は遅い。リサイクル産業のインフォーマル性により、透明性の高いデータ収集やフォーマルなバリューチェーンへの統合を難しくしている。
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以前読んだ本で何かの拍子に、インド・プネの「プロトプリント(Protoprint)」というプロジェクトのことを知った。廃棄プラスチックを回収して、3Dプリンター用のフィラメントに再加工して、「フェアトレード・フィラメント」として販売するという仕組みだと描かれていた。
それで気になって調べてみたが、どちらかというとプロトプリントはプラスチックのアップサイクリング全般に取り組むプロジェクトで、3Dプリンターのフィラメントというのは、その中でも特に高付加価値の製品としての位置付けだということがわかった。
こういうアップサイクリングの仕組みは、単に再加工用の機械を導入したらすぐに回るというものではない。アップサイクリングの素材となる原料プラスチックをきれいな形で、しかも材質によって分別された形で回収できる仕組みが併せて確立されていないといけない。上記のプロジェクトの説明ではその部分があまり詳しく描かれていないが、そこはSWaCHというゴミ収集作業員(Waste Pickers)の組合組織が既にあるらしい。
ちなみにこのSWaCHについては、先週もご紹介した友人、Taylor Cassが2017年にいいルポを発表している。その内容まで今回は紹介しないが、併せて読むと理解しやすいかもしれない。
"Picking dignity"
Resource Recycling, September 4, 2017.
URL: https://resource-recycling.com/recycling/2017/09/04/picking-dignity/
ああ、チャンスがあればプネはまた訪れてみたいな~。
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