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『オープンデータ超入門』 [仕事の小ネタ]

オープンデータ超入門 (NextPublishing)

オープンデータ超入門 (NextPublishing)

  • 作者: 林 雅之
  • 出版社/メーカー: インプレスR&D
  • 発売日: 2014/02/28
  • メディア: Kindle版
内容紹介
公共性のあるデータを開放し、誰でも自由に加工、再利用できるようにするオープンデータ。市民と行政が一緒に社会的課題を解決したり、新サービスを開発したりするオープンガバメントのムーブメントとも重なりつつ、注目が高まってきています。本書はオープンデータの中でも特に政府や自治体などが保有する公共データのオープンデータ化を中心に、日本・海外の取り組みを解説。オープンデータとは何だろうと思い始めた初心者におすすめの一冊です。

日進月歩のIT技術。6年も前の発刊の書籍を今読んで、今に有用な情報が得られるのかどうかわからなかったけれど、Kindle Unlimitedで無料でダウンロードできたからまあいいかと思って読んでみた。

「オープンデータ」とは、「公共性の高い情報を、自由に編集・加工などができるように、オープンライセンスで提供されるデータ」のことを指すらしい。そして、本書が発刊された前後からだろうか、日本でもアイデアソン&ハッカソンと称したイベントが各地で開催されるようになっていったが、それらの多くも、地域の課題を解決するために市民がオープンデータを活用し、行政と連携してサービスを開発する取組みが目立ち始めた。本書も、最近の僕の重点テーマであるアイデアソン&ハッカソンの文脈から辿り着いたものである。先に読んだ文献の中でも、Code for Japanとその代表の方の名前は頻繁に登場したが、今回のオープンデータの話になり、さらにその頻度が増した。

ちなみに、Code for Japanは、昨今の新型コロナウィルス感染拡大を受けて、自治体における新型コロナウイルス感染症対策を後押しするために、支援制度情報をデータとして公開する際の標準的なフォーマットを作成し、6月8日に公開したというので注目されている。
https://codezine.jp/article/detail/12405

さて、本書は、2014年時点での日本国内と全世界でのオープンデータプロジェクトを、スナップショット的に網羅した本である。データ先進国・米国の取組み紹介から始まり、欧州、アジア・アフリカ諸国を概観し、その上で日本国内では、福井県鯖江市と横浜市、会津若松市の取組み、さらには千葉市、流山市、岐阜県、静岡県と、とにかく網羅することに徹している。各々、ネットで調べてまとめてどうぞお召し上がれとなっていて、実際に現地踏査をどの程度やって書かれたのかがほとんどわからない。軽く紹介しておいて、あとはリンク先のウェブページを参照してねという編集だ。

Kindle Unlimitedで無料ダウンロードできたから読む気にはなったけれど、これを書籍版を購入したいかと訊かれると、かなり悩ましい。やっぱり、このテーマはより発刊年が新しい方が価値はあると思う。

本書での新たな学びは、「シビック・テック」というキーワードにあった。「地域、市民のための技術分野における強力なブランド組織」であり、「民間のスキルを行政の問題解決に役立てるプラットフォーム」であるという。Code for AmericaやCode for Japanが代表的で、Code for Japan設立を受けて、日本各地にも、地域単位でのシビック・テック組織が既に存在するらしい。

僕が「オープンデータ」という言葉を耳にし始めたのは、2013年6月のG8サミット(英国ロックアーン)以降である。その成果文書の中で、政府の情報への容易なアクセスや、透明性確保の観点からオープンデータの推進が意義として掲げられ、オープンデータ検証への合意や2015年末までに検証の内容を実施することが明記された。また、各国が公開すべき「質の高いデータセット」として、「法人」「司法と犯罪」「地球観測」「教育」「エネルギーと環境」「財政と契約」「地理空間」「グローバルな開発」「統計」「科学と研究」等14分野が示された。

この頃、僕の職場の友人が、僕たちの組織のデータのファイル形式をオープンアクセスに適したものに変更せねばというので孤軍奮闘していた。ことの経緯は承知していたものの、我が社のデータのオープン化については、拒否反応というよりも、それをやる必要性とメリット、どうやるかの方法論が関係者に十分理解されていなかったので、文字通り友人は孤軍奮闘、時折上司と声を荒げてぶつかっていたのを思い出す。

そうした、2014~15年当時の職場の記憶があるだけに、その後我が社のオープンデータへの取組みが、その職場から離れていた数年間の間にどれだけ進んだのか知りたいところだ。浦島太郎が見ている感じでは、データセットだけはXMLで整えられたけれども、それをどう生かすかというところでシビック・テックと協働しようという話にまでは至っていない気がする。いや、シビック・テックが元々関心ある分野とも言えないので、むしろ関心を抱いている別の市民社会組織が、シビック・テックの協力を得て、このオープンデータを活用する方法を考えられたらいいのかもしれない。少なくとも、データを公開する側には公開のメリットが理解されてるとは思えない。

本書でも、自治体などの地方公共団体が公開するデータの中では、地図や交通、防災など安全にかかわる情報へのニーズが高いという政府の調査結果が紹介されているが、一方で、自治体にとっては、保有する情報をオープンデータとして公開することの利用イメージやメリットが明確になっていないという課題も示されている。

最後に1カ所だけ、本書のキモともいえる著者の主張を引用しておく。

 オープンデータ活用推進の鍵をにぎるのが、地域コミュニティや地域経済の活性化につながる取り組みだ。
 自治体は、防災や地図などニーズの高いデータから積極的に公開し、推進者や地元の開発者、サービスを提供する事業者と連携してオープンデータ推進のムーブメントを創り出す必要がある。こうした「地産地消データ」の持続的なアプローチが、地域社会の課題を解決したり、地域コミュニティや経済の活性化につながったりしていくだろう。

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