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『シビックテックイノベーション』 [仕事の小ネタ]

シビックテックイノベーション 行動する市民エンジニアが社会を変える (#xtech-books(NextPublishing))

シビックテックイノベーション 行動する市民エンジニアが社会を変える (#xtech-books(NextPublishing))

  • 作者: 松崎 太亮
  • 出版社/メーカー: インプレスR&D
  • 発売日: 2017/10/06
  • メディア: Kindle版

内容紹介
ICT(情報通信技術)やデータを駆使してコミュニティを作り、市民の目線で地域や社会の課題解決に取り組むシビックテック。ITスキルを持ち、オンラインコミュニティを使いこなすエンジニアを中心にした草の根的社会活動を、地方行政に携わる著者が取材し、全く新しいデジタル時代の「公民」像を解説します。地域活性化、社会イノベーションにIT人材の必要性をはじめとする新しい視点を提供する一冊です。

前回、『オープンデータ超入門』をご紹介した際、「シビックテック」という言葉がキーワードとして出てきた。「「地域、市民のための技術分野における強力なブランド組織」であり、「民間のスキルを行政の問題解決に役立てるプラットフォーム」であるという。Code for AmericaやCode for Japanが代表的で、Code for Japan設立を受けて、日本各地にも、地域単位でのシビック・テック組織が既に存在するらしい」と述べておいた。

今回もそのシビックテックの可能性をさらに深掘りする本である。本書でのシビックテックの定義は、「ITやデータを駆使してコミュニティを作り、社会や地域課題の解決にともに取り組む新たな市民像」で、「新公民」とも評している。発刊年が前掲書よりもより最近(といっても2017年だが)なので、前掲書の表層的かつ網羅的な記述よりも、個々のサブテーマについてそれなりの取材と考察が行われている。結構な箇所にマーカーしまくったので、全てをここでご紹介するわけにはいかないが、最初はKindle Unlimitedでお試し的に無料ダウンロードしたものの、やっぱり書籍版で座右に置いておきたいと思うようになり、読了する前に書籍版を注文してしまった。

本書を読んで、いろいろ気付かされたことがあるが、3点に絞って述べたいと思う。

第1に、第1章「日本のコンピューターサイエンス教育が変わる」を読んでいて知った、CoderDojoという取組み。CoderDojoは2011年にアイルランドで始まった取組みらしいが、本書発刊時点で世界69カ国に1,250以上の道場があるという。7歳から17歳の子どもが参加できるプログラミング学習道場で、調べてみたら我が家の近所にだって存在した。今、この道場の運営でメンター役を務めている方々の多くは、「自分が子供だったわずか10年程度前、日本の社会にプログラミングを学ぶ場がほとんどなく苦労した経験を、次の世代にはさせまいとの純粋なボランティア精神により道場の運営を担っている」そうだ。

僕自身もコーディング独習中なので、こういう取組みを子どもたち対象にやられるのもいいと思う一方で、大人になってから始める人にも道場を開放して欲しいなという思いは正直言ってある。(そういう人は最初からメンターを務めよと言われるかもしれないが。)が、それはともかくとして、CoderDojoの課題として、著者は「自治体もプログラミング教育を学校教育だけに任せるのではなく、青少年の居場所作りやベンチャービジネス振興策など、さまざまな行政施策の中にもプログラミング教育を取り入れていくべきである」とも述べている。

2020年から小学校でのプログラミング教育が必修化されると、コーディングに造詣のある子どもが今後多く輩出されていくだろう。日本の場合は、そういう子どもたちが将来のシビックテックを担っていく道筋がなんとなく見えているし、受け皿を作ろうとの問題意識が既に存在するようだ。でも、僕が直近で駐在していた某国では、中高生向けのコーディング・ワークショップはブームになっているものの、中高生がその後大学や社会に出て、それを生かすような受け皿作りがまだまだ意識されていない気がする。コーディング・ワークショップを一過性のイベントで終わらせないためのエコシステム作りを常に心がけていないといけない。それが学びの第一だった。

第2は、第4章「米国におけるシビックテックイノベーション」で詳しく紹介された、Code for Americaの活動である。コーポレートフェローシップも、CfAと派遣先自治体とのパイプ強化の方法論として興味深かったが、もう1つのプログラム「ブリゲイド」という活動を知り、これも某駐在国での経験を思い出した。CfAのいう「ブリゲイド」とは、「いろいろなシビックテックから構成され、地元自治体と協働して知見や持てる技術を使って課題解決するなど、オープンガバメントや市民活動に関心の高い地域の組織」ということである。協働相手の自治体が明確に決まっていることや、単なる一過性のイベント開催ではなくて中長期的に当該地域と関わる活動だと理解した。

このあたりの記述を読んでいて、僕は、某G社が毎年のように駐在国に送り込んできていた社員ボランティアとの、現地での協働の進め方について、ようやく「これ」というイメージができた気がした。彼らは休暇を利用してボランティアに参加し、3日ほど訪問国における地域の課題解決にその知見を提供した後、残りの滞在日数は休暇に充てていた。2018年秋に初めて受け入れた際には、どう付き合ったらいいのか結構頭を悩ませたが、今ならなんとなく、こういう手順で準備を進めておき、彼らが来たらこうやって活用しようというのが見えてきた気がする。ブリゲイドの話じゃないが、G社のボランティア事業のコーディネーターはブリゲイドキャプテンのようなものだと捉えれば、G社ボランティアをどう活用したらいいかは考えやすいと思う。

そして第3は、これは本書の内容に話ではなく、今月に入って読んできた本がことごとくNextPublishingという電子出版プラットフォームで出されているという点であった。本書の装丁を見ていれば電子書籍特化の個人出版プラットフォームだろうと想像はしたが、アマゾンのサイトを見ると、書籍版もオンデマンドで購入できるらしい(僕はそれで書籍版も購入することにした)。多分この手のテーマで書籍がそんなに売れると思えないので、商業出版なら絶対扱ってくれないだろうし、個人出版にすると何十万円かの自己負担を強いられる。名刺代わりだと割り切ってその出費を飲むことも1つの道だが、NextPublishingのように、電子書籍で出しておいて、かつ書籍版はオンデマンドで購入もできるというやり方が、今の僕のニーズにはいちばん合っている気がする。

本書を読んだ後、同社のサイトを調べてみて、これは長らくペンディングにしていた僕の原稿をリライトして、とっとと公にする最も可能性の高いオプションなのではないかとやる気が出てきた。

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『日経ビジネス』2020年5月14日
https://business.nikkei.com/atcl/seminar/19/00058/051300051/?P=1
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