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教育版ブランドブータン [ブータン]

教育省、「教育版ブランドブータン」を構想
Education ministry’s vision to have Brand Bhutan Education
The Bhutanese、2019年8月24日、Usha Drukpa記者
https://thebhutanese.bt/education-ministrys-vision-to-have-brand-bhutan-education/

【抄訳】
教育省では、今後5年以内に、教育における独自ブランドを構築することを計画。目的は、ブータンの価値観をコンパクトに体現した「教育版ブランドブータン」をつくること。これにより、新たな国の収入源となっていくことが期待される。

J.Bライ教育相によると、ブータン人学生に恩恵をもたらしている質の高い教育を意味する「教育版ブランドブータン」を開発することが主な目的だが、経済の新しい分野にもなり得るという。ブータンは水力発電収入ばかりに頼ることができない。教育版ブランドブータンは、ブータンが質の高い教育が受けられる目的地となり、国際的な教育機関として認知されるための手段と位置付けられるという。

教育がもたらす収入の事例として、大臣は、ダージリン丘陵に住む約400〜500万人の人々が、観光と教育だけで生計を維持していることを挙げた。「世界中の学生が教育のためにダージリンにやって来る。これは教育の夢であり、教育を通じてブータン経済を支え、ブータンの価値観と文化を促進して世界の平和と繁栄、幸福に貢献する途だ」という。

大臣はさらに、これが教育省の長期ビジョンであると述べた。 彼は、教育版ブランドブータンは、関係者全員がそれに向けて一致団結して取り組むことで成功することができると信じているという。「成功させるためには、教育版ブランドブータンが、世界の経済と発展のニーズに沿って設計されることが必要だ。世界でうまくいっている地域では、そうやって教育は設計されている。」

大臣によると、現在のブータンの教育制度は、すべての個人が少なくとも英語と他の言語で読み書きするべきであるという教育哲学がスタートしている。 教育は僧院教育から現代教育に移行し、現在は21世紀型教育、さらにGNH教育へと移行しようとしているという。多くの開発や技術の進歩により、ブータンは世界からの情報に晒されるようになってきた。

それでも、ブータンの教育ブランドが今のところ願望の域を出ないという点も大臣は繰り返し述べた。同省には十分なリソースがないため、すぐに導入することは困難で、各部門に計3100億ニュルタムもの予算を配分することは今のところ難しいと大臣は認めた。

「教育版ブランドブータンがこの国で成功することは確信している。その中心的なアイシング(糖衣)はGNHだ。しかし、これは一晩では実現できない。それは時間がかかる。 5年間で私たちにできることは、調査研究とその結果に基づく推進、意識向上などで、それを通じて情報とアイデアの共有を図っていく。概念化することは非常に重要で、5年以内にそれはできると思う。」

大臣はさらに、このビジョンを現実的なものにするために、教育省ではまず、教育版ブランドブータンの根幹部分である信頼を築く必要があると述べた。 「ブータンの人々でさえ、ブータンの教育に信頼を持っていない。今のところ、彼らはそれを批判しているのが現状だ。」

大臣は、政府もそれを成功させるためにできる限りの投資を行わなければならないとも付け加えた。「教育セクターのリーダー。校長や副校長などの学校の指導者は、そのリーダーシップが教師や補助員にも伝わり、さらに子供たちに向かって流れ、コミュニティにまで浸透していくよう、自身がそれを発揮していくことが必要だ。」

自治体の首長は、教育セクターと方向性を共有し、教育版ブランドブータンの構築に向けて積極的に協働していくべきだと大臣は強調した。「国王陛下は、既にブータン的価値観と幸福の種を播いてこられている。人々と若者は唯一幸福を持ちうる主体であり、彼らひとりひとりがこうした教育関連の生産物の多くを活用して、新たな創造やイノベーションを生むことができたら、世界にそれを売り込んで、国に恩恵をもたらすことができるだろう。」

そのためには、教育セクターはより包摂的なものでなければならないと大臣は強調した。これが、最近行われた教員の給与引き上げや手当の創設が特別教育学校にも適用される理由だとした。障害を持つ子供たちを引き受けるこれらの学校の教師と補助員が果たす役割には本当に感謝していると大臣は付け加えた。

◇◇◇◇

大臣の発言の文脈がはっきりしない記事だが、多分金曜恒例の閣僚記者懇談会での大臣発言が取り上げられたのだろう。せめて、どういう場で大臣がそう言ったのかぐらいは、記事の中で言及して欲しかった。

ヘッドラインを見た時には、僕は「すわ、STEM教育?」と思ったのだが、最初の数パラを読んで、ああ、ダージリンやカリンポンに多くある寄宿舎付きのインターナショナルスクールのようなものをイメージされているのかとイメージを切り替えた。ブータンでは確かに英語で教育が行われているので、ブータンの教育であっても受容可という人であれば、子息をブータンに送って数年過ごさせるという選択肢を取る人はいるかもしれない。そういう親からの仕送りや学費納入などで、多少の外貨収入は期待できるかもしれない。親が短期訪問でブータンに来たがるかもしれないから、多少の追加的観光収入も期待できるかもしれないし。

大臣発言からは読み取れないし、多分大臣自体も「教育版ブランドブータン」という言葉の中で具体的なイメージはお持ちでないのではないかとも思われるが、特定の学校をインターナショナルスクール化するのか、それともブータン全国の学校を外国人生徒受入れ可能にするのかがはっきりしない。大臣は元々民間のビジネスマンだったから、少なくとも後者ではないような気がするが。

また、ムスリーやダージリン、カリンポンなど、隣国には競合する学校が既に存在する中で、外国人生徒を獲ってくるにはそれなりに学校の組織制度の拡充が図られていないといけない。ただ、それだったら、教員の給料はそれなりのものを保証しないといけないだろう。離職率が問題になっているのが現状だから。

「ブランドブータン」というと、とかく今あるモノに「ブータンだから」というプレミアを付けて外国市場に売りたいという発想が取られがちで、どういうものだったら消費者は買ってくれるのかというマーケットリサーチに当たる部分はあまり考えられていない。教育大臣は民間出身だし、これからリサーチをやるとおっしゃっているのだから、そのへんのことはしっかり踏まえて、ちゃんとした概念化をこれからやって、外国人でも子息をブータンに預けたいと思えるようなコンテンツを作っていって欲しいと期待したい。

それにしても、最後の特殊教育学校のインクルーシブ教育の話の文脈はよくわからない。よって解説はこれくらいにとどめておく。

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