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エストニアで見つけたつまらなくない未来 [仕事の小ネタ]

ブロックチェーン、AIで先を行くエストニアで見つけた つまらなくない未来

ブロックチェーン、AIで先を行くエストニアで見つけた つまらなくない未来

  • 作者: 小島 健志
  • 出版社/メーカー: ダイヤモンド社
  • 発売日: 2018/12/20
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
内容紹介
[>]機械に仕事を奪われても食べていくにはどうするのか?
[>]優秀な人材を世界から集めるにはどうするのか?
[>]都市と地方の格差を埋めるにはどうするのか?
[>]グーグルやアップルのような企業をどうやって生めばよいのか?
[>]プログラミング教育はどう行えばよいのか?
閉塞感漂う日本の課題解決のヒントは「未来をダントツに先取りしている」エストニアにあった!
エストニア現地取材を通して見つけた、「つまらなくない未来」とその描き方とは。

この本は購入した。どんな人が書いているのか、この本はどのように編集されているのか、そしてどの程度の漢字表記が許されているのかなど、仮にこの出版社に原稿を持ち込むなら、どの程度書けていないといけないのかを知りたくて、読んでみることにしたのである。しかも、僕が原稿を書いた本のタイトルにもできれば「未来」を入れたかったし(笑)。

従って、元々エストニアやAIやブロックチェーンに関心があったから読み始めたわけではない。でも、読んでいて僕はこう思った。先週、ブータンの国王が「デジタルID」とか「AI(人工知能)」とか「ブロックチェーン」とかに言及し、課題解決にテクノロジーを活用せよと公共経営大学院の卒業生に向けて檄を飛ばしたが、彼らが範にすべきは、同じような小国で、隣りの大国に翻弄されがちななかでの国家のサバイバルを模索する中で電子立国に舵を切ったエストニアなんじゃないかと。

そして目で見ていくと、実に面白い。ブータンが参考にすべきと思われるケースが沢山含まれるし、エストニアではできたけれどブータンじゃ導入が相当困難だろうと思われるケースも幾つかはあった。電子政府化の部分は、読んでいるとトブゲイ前首相の肝いりで始まったB2Cという電子政府サービスはエストニアを倣っていたのではないかという節が感じられるし、僕自身も本書序盤のこのあたりは読んでいて「これってブータンの生きる道じゃん」と思えたのだが、民間のスタートアップの部分になると、ここまでデジタルノマドに国を開放できるかどうか、ちょっとブータンには受け入れがたいかもしれないと思った。

また、スカイプの創業スタッフがエストニア人で、スカイプを売却した際に得た資金で次なるスタートアップを始めたり、他のスタートアップを支援するエンジェル投資家になったり、プログラミング教育のスポンサーになったりという面的広がりが出てきたというあたりのルポを読むと、そういうユニコーンがまだ存在しないブータンでは、そうそう絵に描いたような好循環は生まれないだろうなとも感じた。

総論としてはこれが小国の生きる道だという共感を覚えた一方で、各論になると課題もあるかなと。また、この印象は、別にブータンの未来に関して思ったということだけでなく、僕のようなオジサンやそのオジサンの息子たちを見ていても感じたことでもあった。日本人でエストニアに魅力を感じるような人々は、ふだんからつまらなくない生き方をしている人なのではないかと思う。自分のスキルにある程度の自信があって、別に日本国内に限らず、英語でだって仕事ができてしまうフリーランス的生き方を既にしている人にとっては、この夏が快適なバルト海の小国は住み心地がいいに違いない。少なくとも夏の間は。

でも、まだラップトップ1台を世界中に持ち歩いてそこからネットにつないで仕事ができるほどの領域には達していないオジサンや、そういうクリエイターが作り出したものをただ消費する側に回っていたずらに時間を費やしている我が家の子どもたちには、このライフスタイルはハードルがものすごく高いように感じる。

そういう視点で見ていくと、こういう動きに乗り遅れてしまったエストニア人はいないのか、いるんじゃないか、そういう人々はどんな暮らしをしているのか、もうちょっと見てみたい気もしてしまった。おそらく国民のほとんどはこうした電子立国化を受け入れているのだろうと思う。ユーザーとしては十分恩恵を得ていることと思うが、だからといって全ての国民が供給する側に立てるわけでもないと思う。論調としては国民すべてがデジタルテクノロジーを平均的に使いこなせる国だという前提で書かれているが、そういうのに乗り遅れているエストニア人もいるんじゃないかとも思えてきた。

ふだんからつまらなくない生き方をしている人には、エストニアは刺激的な国なんだろう。でも、オジサンはついて行くのが大変かも。読んでたらイーレジデンシーでエストニア住民登録してみたくはなったけれど、訪れる機会がある国なのかどうかは、ちょっとわからない。

ところで、ブータンがどの程度エストニアを意識しているか知りたくて、クエンセルやBBSのウェブサイトでエストニアで検索をかけてみたところ、1件だけヒットした。去年12月の建国記念式典を現地で見たタリン工科大学のガバナンス研究の先生が、クエンセルに寄稿している。タリン工科大学の先生をブータンに呼んだのはInstitute of Happiness(IOH)という民間シンクタンクらしい。IOHってどこかで最近聞いたな(笑)。この寄稿、そのうち内容をご紹介したい。

Wolfgang Drechsler. "Global Knowledge, Bhutanese Solutions"
Kuensel、2018年12月24日
http://www.kuenselonline.com/global-knowledge-bhutanese-solutions/
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