『新ヒットの方程式』 [読書日記]
内容(「BOOK」データベースより)
SNS分析の第一人者が解き明かす、ヒットの仕掛け方。SNSで話題をつくりたい方必見の、ヒットのお手本が満載!知っておきたい用語もわかる!
以前、自分の名刺代わりに本を出すという方法論があることを知ったが、本書はその典型ではないかと思う。著者はスパイスボックスという会社の副社長だが、本書で使われているソーシャルメディア発のヒットの分析に使用したツールは、同社が開発したものである。その集計ツールを使えば、なぜそれがヒットしたのかというのをエビデンスで示すことができそうだ。同社のビジネス拡大には貢献する1冊だろう。
自分が今置かれている文脈の中で、今この本を読むのがどれだけ妥当性があったのかというと、1つだけ言えるのは、著者が終盤でちらっと言及しておられる通り、アジアの開発途上国は、マスメディアが発達する前にソーシャルメディアが普及してしまったので、マーケティングの考え方もソーシャルメディア中心で行かなければならないという点だろうか。確かに、この国の場合、ブータン国営テレビ(BBS)のCM枠はあまり大きくないし、クエンセルの広告欄も、あまり有効に使われているような感じがしない。「売ろう」という熱気もあまり感じない。一方でソーシャルメディアの利用の仕方はマナーもへったくれもなくて、重要な会議の最中でもスマホに目をやっている出席者が目立つ。本気でものを売りたいなら、ソーシャルメディアをうまく駆使したマーケティングのやり方はあり得るかもしれない。勿論、「本気でものを売りたいなら」という条件が付くが。
ブータンの文脈で本書から読み取れるものがあまり多くなくて、正直言ってこのブログで本書を紹介するのに、何をどう書いていいやら、結構悩んだ。そもそもなんでこんな本を買ってしまったのかという状況を振り返ると、当時図書館で西野亮廣『革命のファンファーレ』を読んでキンコン西野の迫力に当てられたばかりであり、書店の新刊コーナーの平積みで、キンコン西野の写真が帯にプリントされている本があったので、中身も見ないで衝動買いしてしまった。このブログを丹念にフォローして下さっている方ならお気づきだと思うが、この年末年始の読書の中で、僕が自分に課していたテーマは、「ものをどうやって売るか」というものだった。なので、帯だけではなく本書のタイトルも実は魅力的だった。
さて、ブータンという文脈からは離れて、純粋に本書を読んでみると、面白いと思ったのはやっぱり過去に自分がちょっとハマったと思われる事例を扱った箇所だった。1つは、『君の名は。』のヒットの要因を分析した箇所。僕もFacebook上でこの作品に言及したことがあり、本書で出てくる「エンゲージメント数」の内数にカウントされているに違いない。
そしてもう1つは、やはりキンコン西野絡みの箇所。『えんとつ町のプぺル』ヒットの背景、それに著者とキンコン西野の対談録。この辺は、『革命のファンファーレ』で西野自身によってもっと詳述されているが、それをコンパクトに数ページにまとめられていて、良い復習にはなった。今回ご紹介している本書がもしヒットしたとしたら、それは帯も含めて「キンコン西野」という広報素材をうまく利用しているからだろう。
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