公共図書館の惨状 [ブータン]
予算不足が公共図書館発展の妨げに
Budget constrain stunts public library’s development
Kuensel、2018年2月5日、Karma Cheki記者
http://www.kuenselonline.com/budget-constrain-stunts-public-librarys-development/
【ポイント】
ティンプー市内唯一の公共図書館であるジグミ・ドルジ・ワンチュク公共図書館には、蔵書、家具、機材等は揃っているが、肝心の建物が手狭で、発展の妨げになっている。創設から39年が経過するこの図書館には、現在5万冊以上の蔵書と、コンピューターも20台がある。書架や閲覧机、椅子等はあるものの、現在チュバチュにある1階建ての建物だけでは狭すぎで、現在3年間のリースで、王立ブータン大学(RUB)の敷地内に、別のスペースを借りて運営されてきた。
図書館の会員数は4000人にのぼり、2000人程度が実際には利用しているのが現状。会員の7割はクラス10(高校1年生)未満の子どもである。従って、RUBの敷地というのは子どもにとっては敷居が高く、別の独立した場所に立地する方がアクセスはしやすい。RUBとのリースは昨年で切れたが、取りあえずはリース継続の予定。
図書館はこれまで、度々ティンプー市に対して増床の要望を行ってきたが、市は「予算不足」を理由にこれを却下してきた。建物の新設は2000年に初めて要望している。2015年の国際読書年には、政府にもアプローチを試みたが、政府も建物の新設は却下、代わりに2700万ニュルタムの予算を配分した。図書館はこれを図書や備品の拡充に投入したという。
2013年からは移動図書館も導入。1台のバンに5000冊の蔵書を搭載し、毎週日曜日に市内5カ所を巡回、各地で3時間とどまり、近隣の利用者にサービスを提供している。
ティンプー市のキンレイ・ドルジ―市長は、本紙の取材に答え、市は現在の1階建ての図書館の敷地に5階建てのビルを建設する考えだが、予算不足で具体化するには至っていないと述べた。
どこもかしこも予算不足か…。僕もノルジンラム大通りに面したこの公共図書館には何度か足を運んだことがあるが、確かに手狭過ぎて、落ち着いて蔵書閲覧などできる環境ではなかった。毎年8月にはインドのジャイプール文学祭に倣って「マウンテンエコー」と銘打った文学祭を開催し、読書文化を慫慂しようと取り組んでいる国の割に、公共図書館に対する市や国の扱い方はないんじゃないかと目を疑う。
日本で暮らしていた頃、自宅近所のコミセン図書室や市立図書館をヘビィに使い倒していた。僕にとって、図書館は調べものをしたり、自習したりするのにはうってつけの場所だった。年200冊なんてとんでもない読書量を支えていたのは図書館のお陰である。この前の年末年始に読んだ14冊のうち、8冊は図書館で借りて読んだ。最近の公共図書館にはカフェやレストランを併設しているところもあるし、さらには市民活動にもスペース貸し出して、会議やセミナー、企画展を開いたりもしている。
そういう機能がティンプーの図書館にもあるといいのに―――。一体、ティンプー市はここに5階建てのビルを建てて、その中身をどのように利活用しようとしているのだろうか。記事を読む限りは、図書館側の要望を聞いて設計を行うわけでもなさそうだが。
こういうの、援助でできないのでしょうか?ここの図書館、ブータンを訪れる日本人は、絵本や図書の寄贈をしたり、紙芝居を寄贈したりと、結構ここの蔵書備品の拡充に貢献している(日本人だけじゃないが)。絵本の読み聞かせのボランティアをやってた日本人の方もいらっしゃったと聞く。ハコモノは何かと批判を受けるが、この公共図書館の惨状を見ると、日本は何かやった方がいいんじゃないかと思ってしまう。
ここの図書館を訪れた人はご存知かと思うが、閲覧机の横の雑誌棚には、いろいろな国際機関がニューズレターを置いて行っている。利用者の多くが子どもなのに、小難しいニューズレターが読まれているのかどうかは怪しいが、そういう配置しかできないのが現状だ。十分なスペースさえあれば、国際機関の発刊物を所蔵して、ここに来れば全部閲覧できるようにするとか、政府の高官が国際機関の人と一緒に得意満面の笑顔でメディアに取り上げられている報告書やガイドラインなどの文書の類も、ここに来れば全部市民が閲覧できるとか、そういう仕掛けもできるのではないだろうか。国際機関が企画するセミナーやパネル展も、こういうところで開催できるんじゃないだろうか。
Budget constrain stunts public library’s development
Kuensel、2018年2月5日、Karma Cheki記者
http://www.kuenselonline.com/budget-constrain-stunts-public-librarys-development/
【ポイント】
ティンプー市内唯一の公共図書館であるジグミ・ドルジ・ワンチュク公共図書館には、蔵書、家具、機材等は揃っているが、肝心の建物が手狭で、発展の妨げになっている。創設から39年が経過するこの図書館には、現在5万冊以上の蔵書と、コンピューターも20台がある。書架や閲覧机、椅子等はあるものの、現在チュバチュにある1階建ての建物だけでは狭すぎで、現在3年間のリースで、王立ブータン大学(RUB)の敷地内に、別のスペースを借りて運営されてきた。
図書館の会員数は4000人にのぼり、2000人程度が実際には利用しているのが現状。会員の7割はクラス10(高校1年生)未満の子どもである。従って、RUBの敷地というのは子どもにとっては敷居が高く、別の独立した場所に立地する方がアクセスはしやすい。RUBとのリースは昨年で切れたが、取りあえずはリース継続の予定。
図書館はこれまで、度々ティンプー市に対して増床の要望を行ってきたが、市は「予算不足」を理由にこれを却下してきた。建物の新設は2000年に初めて要望している。2015年の国際読書年には、政府にもアプローチを試みたが、政府も建物の新設は却下、代わりに2700万ニュルタムの予算を配分した。図書館はこれを図書や備品の拡充に投入したという。
2013年からは移動図書館も導入。1台のバンに5000冊の蔵書を搭載し、毎週日曜日に市内5カ所を巡回、各地で3時間とどまり、近隣の利用者にサービスを提供している。
ティンプー市のキンレイ・ドルジ―市長は、本紙の取材に答え、市は現在の1階建ての図書館の敷地に5階建てのビルを建設する考えだが、予算不足で具体化するには至っていないと述べた。
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どこもかしこも予算不足か…。僕もノルジンラム大通りに面したこの公共図書館には何度か足を運んだことがあるが、確かに手狭過ぎて、落ち着いて蔵書閲覧などできる環境ではなかった。毎年8月にはインドのジャイプール文学祭に倣って「マウンテンエコー」と銘打った文学祭を開催し、読書文化を慫慂しようと取り組んでいる国の割に、公共図書館に対する市や国の扱い方はないんじゃないかと目を疑う。
日本で暮らしていた頃、自宅近所のコミセン図書室や市立図書館をヘビィに使い倒していた。僕にとって、図書館は調べものをしたり、自習したりするのにはうってつけの場所だった。年200冊なんてとんでもない読書量を支えていたのは図書館のお陰である。この前の年末年始に読んだ14冊のうち、8冊は図書館で借りて読んだ。最近の公共図書館にはカフェやレストランを併設しているところもあるし、さらには市民活動にもスペース貸し出して、会議やセミナー、企画展を開いたりもしている。
そういう機能がティンプーの図書館にもあるといいのに―――。一体、ティンプー市はここに5階建てのビルを建てて、その中身をどのように利活用しようとしているのだろうか。記事を読む限りは、図書館側の要望を聞いて設計を行うわけでもなさそうだが。
こういうの、援助でできないのでしょうか?ここの図書館、ブータンを訪れる日本人は、絵本や図書の寄贈をしたり、紙芝居を寄贈したりと、結構ここの蔵書備品の拡充に貢献している(日本人だけじゃないが)。絵本の読み聞かせのボランティアをやってた日本人の方もいらっしゃったと聞く。ハコモノは何かと批判を受けるが、この公共図書館の惨状を見ると、日本は何かやった方がいいんじゃないかと思ってしまう。
ここの図書館を訪れた人はご存知かと思うが、閲覧机の横の雑誌棚には、いろいろな国際機関がニューズレターを置いて行っている。利用者の多くが子どもなのに、小難しいニューズレターが読まれているのかどうかは怪しいが、そういう配置しかできないのが現状だ。十分なスペースさえあれば、国際機関の発刊物を所蔵して、ここに来れば全部閲覧できるようにするとか、政府の高官が国際機関の人と一緒に得意満面の笑顔でメディアに取り上げられている報告書やガイドラインなどの文書の類も、ここに来れば全部市民が閲覧できるとか、そういう仕掛けもできるのではないだろうか。国際機関が企画するセミナーやパネル展も、こういうところで開催できるんじゃないだろうか。
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