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中小企業向け資本市場 [ブータン]

中小企業でも資本市場にアクセスできるように
SMEs to have access to capital market
Kuensel、2017年12月27日、Tshering Dorji記者
http://www.kuenselonline.com/smes-to-have-access-to-capital-market/

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《12月29日の東証大納会の様子。年明けに見学に行くつもりです》(読売新聞より)

【ポイント】
資金調達ギャップに対処するため、ブータン経済における小規模零細産業(CSI)の領域は様々なイニシアチブとともに拡大しつつある。ブータン王立証券取引所(RSEB)は、新優先セクター貸出(PSL)政策や経済刺激策の下でのリボルビング・ファンドの取組みなどを補完するため、中小企業(SME)ボードを立ち上げた。SMEボードは、資本市場から資金を調達する機会をSMEに提供するもので、RSEBはこれを、SME専用の個別委員会として立ち上げる。対象となるのは、企業法に基づき設立されたSME。

ブータンのCSIは、低コストの長期資金にアクセスすることができない一方、金融機関による担保付き貸付では、スタートアップ企業の借入れ能力を超えている。このため、新イニシアティブでは、SMEその他の新興企業が機関投資家から長期資金を調達すると同時に、持続可能なビジネス実践を促すためのプラットフォームを構築することが期待されている。

新規株式公開(IPO)の要件を満たさず、有価証券上場基準を正式には満たしていないが、さらなる事業拡大のために資本調達を希望するSMEまたはスタートアップ企業は、上場申請を行うことができる。このような企業は、機関投資家にのみ株式を売却できる。小口個人株主は、そのようなIPOに参加できない。例えば、新興企業が資本市場から資金を調達して事業拡大を望む場合、銀行や大企業のみがその株式を購入することができる。

SMEがIPOおよび上場要件を満たすレベルまで成熟すると、一般市場での株式発行のためにメインボードにアップグレードすることが可能。メインボードは既に証券取引所に上場している大企業で構成されている。その場合は、上場希望SMEは、メインボード上の上場予定日までに最低限の開示義務および履行記録を遵守しなければならない。RSEBは、王立通貨庁(RMA)によって最終的に承認されるマーケットボード(市場委員会)の分類に関するルールおよび規制を策定している。

RSEB作成のレポートによれば、CSIやスタートアップ企業への投資のリスクを考慮することが重要である一方、初期段階ではこれらの企業のビジネス上の可能性が評価される。「一方で、ブータンの機関投資家は、限られた投資機会や、投資銀行、ベンチャーキャピタル、ヘッジファンドなど、CSIやスタートアップ企業のリスクと収益を評価できる制度的枠組みの欠如により制約を受けている」とレポートは指摘する。

SMEボードは、リスクを取りつつ高い収益機会を狙いたい潜在的な投資家と、資金を求めるSMEやスタートアップ企業とが出会う場を作ることを目指している。しかし、SMEボードへの上場を希望する企業は、会社法の下に組み入れられ、発行者は最小払込資本金500万ニュルタムを有していなければならないとの条件が付く。

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あまり証券取引関係の英語に詳しくないので、正しく訳せたかどうかが不安だが、9月以降RSEBが新聞記事で取り上げられたのは二度目で、今回の話はどうも東証マザーズのような新興企業向け株式市場のようだったので、備忘録的に紹介しておく。

証券取引関係の英語に詳しくないと断っておきながら言うのもなんですが、僕は11月の第7回GNH国際会議の初日、新しい証券取引所を開設して既存のRSEBに機能を付与してはどうかという提案を知人と共同で行った。GNH国際会議の場でリリースされた企業のGNH貢献度診断ツールは取りあえずはドルックホールディングズ(DHI)傘下の大手企業に適用されるらしいが、僕たちの提案は、これをグローバル企業の上場基準とする新たな株式市場を開設し、世界中の機関投資家から投資マネーを誘引しようというものである。突拍子もない提案だが、GNH国際会議に向けて僕らが書き上げた論文は既に主催者に提出しており、折角だからと僕は突撃訪問でRSEBのチェトリCEOとか、RMAのダショー・ペンジョル総裁とかにお願いして、僕らのペーパーにコメントをもらうことにして、年末を迎えている。できればこのペーパーをもう少しブラッシュアップして、来年は実際的にもっと実現可能性があるような提案書にしたいと思っている。

今回の記事は、元々大手21社しか上場していない株式市場の活性化策と捉えることができる。確かに、ここでCSIやスタートアップの資金アクセス問題の改善策となると、何かにつけて銀行融資やマイクロファイナンス等、貸付の話になってしまい、株式のような直接金融による資金調達の話にならないのにはずっと違和感を感じていた。直接金融による資金調達手段の多様化は、兆候としてはウェルカムな政策だといえる。

一方で、この国ではSMEとCSIはカテゴリーが明確に違っている。払込資本金の金額と従業員数で区分されているが、従業員20名以上100名未満という基準で見ると、SMEというのはブータン的には中小どころか、大企業に近いイメージなのではないかと思われる。記事はそのあたりをごっちゃにして書かれているが、今回のRSEBの新しい資本市場の創設がCSIも対象だといえるところまで拡がるには、まだまだ時間がかかるということだろう。

タグ:証券市場
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