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『2050年の技術』 [仕事の小ネタ]

2050年の技術 英『エコノミスト』誌は予測する

2050年の技術 英『エコノミスト』誌は予測する

  • 作者: 英『エコノミスト』編集部
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2017/04/14
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
内容(「BOOK」データベースより)
2000年代初頭、シリコンバレーの『WIRED』誌では、「日本の女子高生ウォッチ」なるコラムが人気を博していた。日本の多機能のガラケーとそれを使いこなす女子高生は、未来を先取りしていると考えたのだ。それは、iPhoneの未来を予測していた―。こうした未来を予兆する「限界的事例」を現在に求めてみる。アフリカではスマホで当事者間が金融決済をしている。BMWi3の車体は、炭素繊維を編み上げて造っている。テクノロジー予測で全世界的な信頼を持つグローバルエリート誌が総力をあげて大胆予測!

今からちょうど2年前のお正月休み、英週刊誌『エコノミスト』の未来予測『2050年の世界』を読んで、感想をこのブログに書いていた。あれから2年が経つが、この時ご紹介した本は僕の座右の1冊となり、この2年間のうちに僕が書いた論文やコラムで、都合3回引用させてもらった。『エコノミスト』は世界中で多くの人に読まれており、そこからの引用はそれだけでも箔が付く。来年の僕自身の活動を考えるにあたっても、今の世の中の技術開発の動向がどうなっているのか、トレンドをしっかり押さえつつ、それとさほど違わぬ経済社会開発の方向性をブータンにも提示していくことが必要かと思う。本当は原書で読めると良かったのだけれど、取りあえずは斜め読みでもいいので、何が書かれているのかを押さえて、その上で論文や自分のスピーチなどでの引用が必要な場合は、原書の方で記述を確認するような使い方を考えている。

原書はこちらになります。

Megatech: Technology in 2050

Megatech: Technology in 2050

  • 出版社/メーカー: Economist Books
  • 発売日: 2017/02/09
  • メディア: Kindle版

本書の目次を備忘録的に列挙しておこう―――。

【目次】
はじめに 破壊的で大規模な技術の変化「メガテック」

第1部 制約と可能性
第1章 日本のガラケーは未来を予測していた
過去、現在、SFで描かれる未来。この3つが2050年を見通すための鍵になる。
15年前、スマートフォンの登場を予測した人々は、日本の女子高生に注目した。

第2章 ムーアの法則の終わりの先に来るもの
チップの極小化によるコンピュータの高性能化(ムーアの法則)は、原子のレベルに
近づき限界を迎えつつある。だが、そこからコンピュータの発展の未来が見えてくる。

第3章 第7の波、AIを制する者は誰か?
メインフレーム型コンピュータの第一の波を制したのはIBM。第二の波はパソコン。
その波を制したビル・ゲイツは、遥か未来のAIの登場について当時考えていた。

第4章 なぜデジタル革命では生産性向上がみられないか?
経済学者のロバート・ゴードンは、産業革命と比べると、今日のデジタル革命では、
生産性、労働賃金、生活水準はほとんど上がっていないと指摘したが、その盲点は?

第5章 宇宙エレベーターを生み出す方程式
どんな技術が実現可能か。物理学者はその答えを導き出す方程式をすでに手に入れている。
タイムマシンや光速を超える情報伝達は実現しないが、老化や疾病は克服できる。

第6章 政府が「脳」に侵入する
人間の脳はインターネットに接続され、図書館、スーパーコンピュータ、宇宙望遠鏡と直結する。
だが同時に、スパムやマルウエア、ウイルスも一緒に取り込んでしまう。

第2部 産業と生活
第7章 食卓に並ぶ人造ステーキ
世界人口は約100億人に達するが、食糧危機は起こらない。細胞培養を通じて、多くの食品が
工場で製造されるからだ。牛乳も卵も、生産に生身の動物は必要なくなる。

第8章 医療はこう変わる
集中治療室での診断情報の解釈から難易度の高い外科手術まで、学習能力をもったAIが
担うようになる。一方、糖尿病、癌などでは予防用ワクチンの開発が進むだろう。

第9章 太陽光と風力で全エネルギーの3割
太陽電池は透明な軽量フィルムとなり、自宅の窓やカーテンはもちろん、衣服でも
発電が可能になる。原発は先進国では廃炉が進み、中国、インド、ロシアのみに。

第10章 車は編まれ、住宅は印刷される
3D印刷の市場規模はまだ67億ドル程度だが、2040年には1兆ドルを超える。
その未来を見抜いた中国は、すでに大量生産ラインで活用。建物まで印刷している。

第11章 曲がる弾丸と戦争の未来
すでに西側のスナイパーの狙撃距離は2475メートルを記録。今後は、空中で軌道を修正できる
弾丸の開発で、照準線の向こうに隠れている敵を狙撃できるようになる。

第12章 ARを眼球に組み込む
誰もがスマートフォンの代わりにARメガネを使いはじめる。街からは看板や信号が消え、
他言語はリアルタイムで翻訳。その技術はやがて眼球自体に取り入れられる。

第3部 社会と経済
第13章 人工知能ができないこと
AIがわれわれを超える知性を持つことを心配する人は多い。しかし、アルファ碁は
対局の最中に火災報知器が鳴り響いても、次の一手を探しつづけるだけだ。

第14章 プライバシーは富裕層だけの贅沢品に
コンピュータはすでに医師よりも正確に乳癌の発症を予測できる。だが、その認識パターンは
膨大かつ曖昧で、人間の理解を超えている。ゆえに因果関係の把握は不可能だ。

第15章 10億人の経済力が解き放たれる
アフリカでは農民のほとんどが女性である。市場価格を知らない彼女たちは、業者の言い値で
取引し、貧困状態にとどまっている。彼女たちを救うのはスマートフォンだ。

第16章 教育格差をこうして縮める
中産階級の子供が最初の2年で親から語りかけられる言葉の数は、労働階級の子供と比べて
数百万語多い。幼児教育から始まるこうした格差を、技術の力でいかに埋めるか。

第17章 働き方は創意を必要とされるようになる
私たちは現在、毎日150回以上携帯電話を確認し、メッセージ等の通知に10.5秒に1回の割合で
作業を中断させられている。こうした働き方はいつまで続くのか。

最終章 テクノロジーは進化を止めない
「産業革命は蒸気電力の開発から始まった」。実は、これは誤解である。
技術の誕生は革命の結果に過ぎず、原因ではない。今も昔も、テクノロジーに意思などないのだ。

とりあえず、今回の読書では「農業とテクノロジー」という問題意識で読んでいたので、例えば142~143頁にあった、「オートメーションによって機能強化された酪農場」「ロボット工学と酪農の統合というトレンド」あたりや、166~167頁の「ドローンが作物をモニタリングし、ロボットが雑草をレーザーで除去する」あたりの記述は使えるなと思った。僕は11月末にブータン農業省が新設したアカデミックジャーナルの創刊号向けにということで門外漢なのに論文を1本書いて投稿したが、その中で灌漑や土壌肥沃度検査等での新技術の応用について少し言及している。もうちょっと早めに本書を目にしていれば、この論文も別の書き方があり得たなと今さらながらに思うのである。

それと、2018年の自分の仕事の中でちょいと使えそうなアイデアとして、次のような記述があったことも付記しておく。何にどう使うのかは内緒だが。
農業にとどまった人々の収穫量や所得は増える一方、余剰労働力は農村部を去り、都shでより収入の高い仕事を見つけられるだろう。移行がうまくいけば、2050年にはアフリカの不動産業者が、ヨーロッパの同業者が100年前にやったのと同じことをしているかもしれない。当時ヨーロッパの抜け目ない不動産業者は、かつて農業労働者が住んでいた藁葺屋根と泥の壁でできた素朴な小屋を、とびきりおしゃれな別荘として売り出したのだ。そこに都市の住人が殺到した。ビクトリア湖畔あるいはヴィルンガ山脈のふもとにたたずむ円形住居に、同じ運命が待ち受けていたとしても不思議はない。(p.172)
―――2050年と言わず、あと5年ぐらいしたら、ブータンでも起きていそうだが。

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