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インターネットの次に来るもの [仕事の小ネタ]

〈インターネット〉の次に来るもの―未来を決める12の法則

〈インターネット〉の次に来るもの―未来を決める12の法則

  • 作者: ケヴィン・ケリー
  • 出版社/メーカー: NHK出版
  • 発売日: 2016/07/23
  • メディア: 単行本
内容(「BOOK」データベースより)
人工知能、仮想現実、拡張現実、ロボット、ブロックチェーン、IoT、シンギュラリティ―これから30年の間に私たちの生活に破壊的変化をもたらすテクノロジーはすべて、12の不可避な潮流から読み解ける。前作『テクニウム』でテクノロジー進化の原理を鮮やかに描き出した著者の待望の最新刊。ニューヨークタイムズ・ベストセラー。

ブータンに戻ってきた。バンコク~パロ間のフライトがこれまでよりも2時間前倒しになったお陰で、羽田発の夜行便では乗継に十分な時間が取れないということで、羽田発のフライトを前回よりも早め、前日16時にはバンコクに到着、そこから翌日の朝7時まで、空港構内で14時間以上過ごすという、疲れる行程にした。

そうすると睡眠を取る必要はあるにしても、トータルで24時間ぐらいの自由になる時間ができることになる。そこでやってみたのが、ちょっと分厚い専門書を、一気に読んでしまうというもの。選んだのは雑誌WIREDの編集長が出された近著である。羽田~バンコク便の機内で読み始め、途中居眠りとか食事とか、気分転換のウォーキングとかは入れたものの、断続的に読み進めて、約10時間かけてなんとか読み終えた。

こうした本は、読み始めるのにも読み進めるのにも相当なエネルギーが必要だ。日常の生活に戻ってからでは、いつになったら読み始められるか、いつになったら読了できるか、全く自信がない。旅行中というような特別な状況の中で一気に読む方がいい本だといえる。洋書では往々にして記述が冗長なところがあるが、本書の訳者は非常にいい翻訳をされていて、日本語でつまずくことは少なかった。よどみのない訳文に助けられたところもかなりある読書だった。

さて、何故この本を選んだのかというと、今世界で起こっていること、その延長線上にある不可避の未来への理解を一度整理しておきたいと思ったからだ。ブータンは急峻な山に囲まれ、今でも純朴そうな人々が農作業にいそしむ姿を目にするので、世界で起こっていることは忘れて、刹那的に毎日を過ごしていられる。でも、その間に世の中は着々と変化していて、ブータン人も、そこに住んでる僕らも、それに翻弄されるしかないという事態に直面するかもしれない。

それを少しぐらい先取りして、そこからの逆算で今何をやっておいたらいいか、ちょっと考えてみようと思ったのが1点。それと、僕1人がぎゃあぎゃあわめいていても僕の発言には箔が付かないので、「洞察力ある世界の思想家がこう言ってるだろ」というネタが欲しい。ちょっと前にご紹介したジェレミー・リフキン『限界費用ゼロ社会』なんかも、そういう目的で読み、その記述をつまみ食いして、各所で行った僕のスピーチやプレゼンの中で使わせてもらった。箔を付けられるし、時間も稼げるし、一石二鳥だ。

本書の著者もWIREDの編集長なんだから、その記述はかなり使い勝手が良い筈。今後、事あるごとに本書の記述は活用させていただきたい。

著者の言う「12の不可避な潮流」とは、「Becoming」、「Cognifying」、「Flowing」、「Screening」、「Accessing」、「Sharing」、「Filtering」、「Remixing」、「Interacting」、「Tracking」、「Questioning」、「Beginning」である。最初のBecomingと最後のBeginningは若干こじつけがあるように感じたが、その他の10の潮流については、実際に今世の中で起こっていることを見渡してみれば首肯できることばかりで、納得感のある内容である。Filtering以降の7項目はちょっとブータンには早いと思ったが、AccessingやSharingは、物質的には全然豊かではないブータンにもしっくり来る内容である。

例えば、これ自体が著者自身というよりも他書からの引用であるが、ものがないブータンの生き残りの方向性として、以下の記述は示唆に富んでいる。使い回せそうな記述だ。
世界最大のタクシー会社ウーバーは車を1台も持っていない。フェイスブックは世界で最も人気のあるメディアの所有者だが、コンテンツは1つも作っていない。アリババは最も市場価格の高い小売業だが、倉庫は持っていない。エアビーアンドビー(Airbnb)は世界最大の宿泊施設提供会社だが、不動産は何も持っていない。(中略)ネットフリックスは世界最大の映像提供会社だが、映画を所有することなく観客にそれを見せている。スポティファイは最大の音楽ストリーミング会社だが、音楽は何も所有していないのに、どんな曲でも聴かせてくれる。アマゾンのキンドル・アンリミテッドは80万冊の本が読み放題だが、本は所有していないし、プレイステーション・ナウはゲームを購入しなくても遊べる。(中略)所有することは昔ほど重要ではなくなっている。その一方でアクセスすることは、かつてないほど重要になってきている。(p.146)

デジタルテクノロジーは、製品からサービスへの移行を促すことで非物質化を加速する。サービスはそもそも流動的なので、物質に縛られる必要がないのだ。(p.148)

スマホはブータンでも相当普及している。フェースブックのアカウントホルダーは、総人口と比したら日本よりも大きいかもしれない。この1年ほどで3Gサービスが普及して、どこにいてもスマホからネットにつながるようにはなってきた。1年間であっても感じられた大きな変化はこの点にある。

スマホのアプリ開発はもっと進んでもいい筈。その上でタクシーや公共バスサービスとつなげられたら、そしてカーシェアが行われるようになったら、都市生活はもっと便利になるし、車の輸入の抑制、CO2排出抑制にもつながると思う。一方で、今では駐車スペースを探すのも大変でしばらく徘徊を余儀なくされるティンプーの市内で、もし駐車場の空きスペースをリアルタイムで教えてくれるアプリとか、或いは電光掲示板とかがあれば助かる。

プンツォリンの科学技術カレッジ(CST)あたりが学内企業を立ち上げて、全国の小中学校を巡回して理科実験の実演サービスをやったら、各学校が理科実験拡充のための教員や施設を整備する手間も省ける。各所の道路封鎖の状況を、通行者がツイートして得られるテキストデータを分析して、すぐに地図情報でアップデートできる仕組みがあれば、その手前の町でストップして、モモをつまみ、お茶を飲んで待つという対応も可能になるかもしれない。

持たなくてもいい方策、あるものを有効活用する方策、もっともっと突き詰めて考えていくよう、そしてそれをブータンの人々に問いかけるよう、自分自身も心がけたいと思う。

ただ、問題は、それを問いかけたところで、具体的なR&Dを検討開始できる「勇敢な」ブータン人が少ないという点にもある。やらなくても誰かがやってくれる、そうでなくても取りあえずは生きていけるという惰性を打ち破って、取りあえず行動を開始する―――その点での示唆を本書の最終章Beginningには期待していたのだが、残念ながらその点については書かれていなかった。残念!!

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