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政府、公的債務政策を発表 [ブータン]

公的債務上限、固定へ
Public debt thresholds fixed
Kuensel、2016年9月8日、Tshering Palden記者
http://www.kuenselonline.com/public-debt-thresholds-fixed/

2016-9-8 Kuensel.jpg

【ポイント】
9月7日、公的債務政策が閣議決定された。その目的は、政治家が政権公約を実現するために無秩序な借入に走ることを防ぎ、過度の債務累積による経済への損害を回避することにある。

◆対外債務に対する年間返済額は、財・サービスの輸出総額の25%を超えてはいけない(債務返済比率)。

◆非水力発電事業債務以外の公的債務残高の対GDP比は、今次5ヵ年計画期間中、35%を上限とする。

◆一般政府債務は各年度の国内歳入の22%未満に抑制。

◆王立中央銀行の債務を含む短期対外債務は、各年度の外貨準備高の30%を超えてはならない。

◆公社の借入れに対する政府保証額は、GDPの5%までに限定。

◆こうした上限は、経済危機やその他政府が社会経済の安定維持のためにそれ以外の策がないと判断した場合には破約も認められるが、3年以内での経済安定化が条件となる。

◆水力発電事業にかかる対外債務の対外売電収入による債務返済比率は40%を上限。水力発電事業の負債資本比率は70:30を超えてはならない。

ブータンの最近の経済成長は、公的債務の増加、とりわけ水力開発に伴う債務増加と同時に起きている。今後も同水準の成長率を維持するなら、今後10年以内にブータンは低所得国を脱して中所得国の仲間入りする。そうなると、これまで経済成長に燃料を注いできた低コスト資金の調達は困難になることが予想される。

1人当たりGDPの増加に伴い、国際金融機関による資金供与の譲許性条件の変更も予想される。政府は、今後、資本支出のための新たな資金源を探していく必要がある。無償資金の受取は難しくなり、対外借入は増加が見込まれる。公的債務管理と公的借入に関する明確な政策ガイドラインがないと、持続不可能な借入により国がリスクにさらされる恐れがある。

本政策は、2007年公共財政法、2006年会計検査法、2010年王立中央銀行法、及びそれらの修正法に依拠。

この政策策定は、国家統計局、GNH委員会、財務省、王立中央銀行、経済省水力発電局の代表者からなる委員会で2年間にわたり検討されてきたもの。政策は8月18日から有効となる。

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ブータンの1人当たりGDPは、2010年に世界銀行が発表したところでは1,920米ドルだが、それが2013年には2,430米ドル、2015年には2,843米ドルにまで急増している。短期間でのこの急増はなかなか特徴的だ。何がそうさせているのかは明らかで、対外借入により進められた水力発電事業によるところが大きい。1件成約するだけでも、なにせ分母となる総人口が75万人程度であるので、すぐに大きな増加へとつながるのだ。

その一方で、債務はどんどん積み上がっていく。水力発電事業に伴う対外借入も含めた政府の債務残高の対GDP比は、2010年時点で66.6%だったが、2015年には98.9%にまで上昇している。実は2014年には100%をわずかに超えている。2016年は116.9%に達したとの報道も先月あったばかりだ。この債務GDP比率の高さは世界でも有数で、世界第3位なんだとか。
http://www.kuenselonline.com/debt-to-gdp-ratio-at-116/

この国が豊富に有する資源として水力が真っ先に挙げられるのはその通りだと思うし、未だ開発可能な水資源の半分も開発が行われていないという。だから水力発電事業にはまだまだ大きな資金を投入していく必要性は認められるが、一方で既にこれだけ積み上がっている債務には一定の縛りを設けないと、経済の不安定化を招くリスク要因となり得る。公的債務に一定の縛りを設けるというのは重要な政策決定だろう。

ちなみに、非水力の債務上限は35%だが、現状は25%程度だと聞いたことがあるので、まだ多少は借入の余地はあることになる。

ブータンの1人当たりGDPは、こうして水力発電事業があることによって、かなり高い数字となっているが、実態上僕の身の回りの人々が平均的に30万円近い年間所得を得ているかというと、その実感はほとんどありません。多くの水力発電事業はインドからの投資で開発が進められており、発電所建設にかかる資機材の多くはインドからの調達、そこで働く労働者の多くもインドから来ている。従って、インドが投資した資金はインドに還元されるような仕組みになってしまっていて、ブータン国内の企業や労働者の所得に必ずしも直結していない。

1人当たりGDPを基準にしたら、2020年にはブータンはLDC(低開発国)ステータスを卒業する。これは政府の政策目標でもある。そうなると、普通に基準を適用したら日本ですら無償資金協力を実施していくのは今後難しくなっていくだろう。ブータン政府は前段で述べたような事情を以って特段の配慮をと訴えていくのだろうが、どこまで考慮されるのだろうか。

一方で、新たな資金源の検討という課題もあって、トブゲイ首相は今年2月のTEDトークでも、温室効果ガスの吸収をアピールして、排出権取引での収入を期待していたように思うが…。

タグ:電力 LDC
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