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喜多川泰の作品2冊 [読書日記]

毎年書いてたかどうかわからないが、7月9日、10日は、それぞれ僕の結婚記念日と誕生日であった。この時期は妻を含め家族と一緒に過ごすことが多いが、今年に限っては海外単身赴任中であり、同じく海外赴任直後で家族呼び寄せまで少し時間のあった9年前以来、1人で祝う記念日となった。

しかも、今年は9日、10日が週末にあたった。こちらでもいくつか行事があったため、1人でしんみりと記念日を祝うという雰囲気ではなかったけれど、妻と娘からは早々にLINEでメッセージをもらい、そういうやりとりがあることが嬉しかった。

こちらは祭日だった8日も含めると三連休の週末となった。外出している時間も相当長かったが、帰宅してからじゃあ持ち帰ってきていた仕事をでもやろうかと思ってもなかなか身が入らない。そんなときには小説でも読もうかという気持ちになり、キンドルでお取り寄せしたのが喜多川泰著『株式会社タイムカプセル社』だった。

株式会社タイムカプセル社 十年前からやってきた使者

株式会社タイムカプセル社 十年前からやってきた使者

  • 作者: 喜多川 泰
  • 出版社/メーカー: ディスカヴァー・トゥエンティワン
  • 発売日: 2015/11/19
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
内容紹介
新しい人生を始めよう。何度でも。
人生は、いつでも、何度でも、どこからでも、やり直せる。人は日々の生活の中で、自分が抱いていた夢や希望をいつの間にか忘れてしまう。5人の登場人物は、十年前の自分が未来の自分に宛てて書いた手紙を読むことを通して、自分が素直な気持ちで実現したかった夢、抱いていた希望に気づく。そして自分自身からのメッセージに背中を押され、前に進み始める。その手紙を届ける主人公自身もまた、5人の人生に触れていく中で、自分の本音に気づき、新たな人生の一歩を踏み出す。感動のストーリーとともに人生の再出発への勇気を贈る喜多川泰、デビュー10年目の最高傑作。

この内容紹介よりも、キャッチーだったのは表紙の帯にある、「夢をあきらめ、居候生活を続ける明日香のもとに、ある日、白いスーツに白い帽子、白い靴の、奇妙な2人組の男が現れた。彼らが差し出したののとは…」と、サブタイトルにある「十年前からやってきた使者」だった。僕はこの2つのメッセージを組み合わせ、これはきっと時空を超えたタイムトラベラーの話だと勝手に解釈して読み始めたが、時空を超えてやってきたのは白ずくめの2人組ではなくて、10年前に自分が自分宛に書いた手紙だった。

10年経ってなんとなく進むべき道を見失っているときに、10年前の自分自身が出した手紙が届く。それを読んで、自分がやりたかったことが何だったのかを思い出したり、励まされたり、悩んでいる自分が馬鹿らしく思えたり、宛先になっている今の本人にどのような化学反応を起こすのか、5人の同級生の人生のやり直しの起点を描いている。

白ずくめの2人組が宛先となっている今の差出人に対して話す言葉は結構お仕着せがましく、また話も出来過ぎていて、いかにも読者が泣きそうなツボを押さえて書かれている。あまりにもできたドラマのシナリオみたいで、作者は相当計算ずくで書いているなとわかっていても、最後の数十ページはやっぱり目がうるっときた。このあたりは、妻や娘がいる男にとっては最もつらいところで、やられた感が相当にある。なんだか作者の計算にまんまと乗せられた気がして、泣いてる自分が情けなくもなった。泣かせる技法は重松清以上に露骨だ。

喜多川作品を、「小説というよりも、一種の自己啓発本」だと評する人もいるようだが、まさにその通りだと思う。

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さて、そんな喜多川作品は、ブログで紹介するのは初めてだが、実は『株式会社タイムカプセル社』の前に、もう1冊読んでいた作品がある。僕はてっきりブログで紹介したつもりだったが、過去を調べてみると、どうも紹介した記録が残っていないようだ。この際だからこれも紹介しておこう。

「また、必ず会おう」と誰もが言った。

「また、必ず会おう」と誰もが言った。

  • 作者: 喜多川 泰
  • 出版社/メーカー: サンマーク出版
  • 発売日: 2010/11/18
  • メディア: 単行本
内容紹介
主人公・秋月和也は熊本県内の高校に通う17歳。 ひょんなことからついてしまった小さなウソが原因で、単身、ディズニーランドへと行く羽目になる。 ところが、不運が重なったことから最終便の飛行機に乗り遅れてしまう和也。 所持金は3,400円。 「どうやって熊本まで帰ればいいんだ……」。 途方に暮れる彼に「おい! 若者」と声をかけたのは、空港内の土産物売場で働く1人のおばさんだった――。 人生を考え始めた高校生に大人たちが語りかける、あたりまえだけどキラリと光った珠玉の言葉。 誰の人生にも起こりうる出来事から物語をつむぐ名手、ベストセラー作家の喜多川泰がお届けする感動の物語。

サンマークという出版社も自己啓発本を得意としているので、この本もそんな香りがプンプンした。

初めての作家だったが、ことこの作品に関していえば、うちの子供達にこそ読んでほしいと思った。そうやって親が道を敷いて読ませるという考え方自体がが良くないとも作品中のエピソードからは言われてしまいそうではあるが。

母親が我が子の進路に気を回し過ぎて、子どもの考える機会を奪っているという僕の考えは、今年2月頃の我が家の夫婦口論の定番ネタになっていた。そんなときにたまたま読んだ本書は、我が意を得たりという内容の作品だった。親が勝手に気を回していろいろ提供したりすると、子どもが失敗したときに、親のせいにする口実を与えてしまう。自分の生き方は自分で決めて、結果には自分で責任を負わなきゃね。そんな当たり前のことを、気付かせてくれる作品だ。但し、そうそう偶然の出会いが続くものでもない。そのあたりは、喜多川作品の共通の特徴ともいえるかもしれない。

だんだん思い出してきた。僕、この本を今春大学受験を全敗で終えて、高校卒業を迎えた我が家の長男に、「受験勉強もひと息入れて、気分転換に読んでみたら」と言って本書を渡したのだった。長男は読んではいたようだが、感想は聞かせてくれなかった。彼が本書を読んで何を感じ取ったのかは、今後の彼の生き方が教えてくれることだろう。



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