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『美しい国ブータン』 [ブータン]

美しい国ブータン (かに心書)

美しい国ブータン (かに心書)

  • 作者: 平山 修一
  • 出版社/メーカー: リヨン社
  • 発売日: 2007/09
  • メディア: 新書
内容紹介
国民の98%が幸福と実感し、自殺者ゼロの国、ブータン。その生活を綴ったエッセイ。
幸せ指数世界一の社会学。物資や食料の欠乏は、心の貧困には繋がりません。物質社会・競争社会に溺れる現代人必読の書。

前回、「これが海外赴任前の最後の1冊」と書いたが、今週に入って同時進行で2冊読んでおり、いずれも読了、ないし読了見込みというところまでこぎ着けた。任地に着いてすぐにネットにつながるかどうかはわからないので、取りあえず読了したものから紹介しておこう。

今度ブータンに行きますとお伝えしたところ、平山さんが謹呈下さった1冊。僕も初めての国というわけじゃないので、多少なめてたところはあったけど、この本を読んで、ブータンの人々とどう付き合ったらいいのか、いろいろ考えさせられた。

僕の前任者は既に帰ってきており、先々週から数度にわたって引継ぎを受けた。その中で最も印象的だったのは、ブータン人は意外と期限を守らないし、それを咎める人もいない、期限について指摘すると、「そんなに厳しく言わなくても…」という反応が返って来る、云々。自分自身でいついつまでに作業しますと言わせたらやってくれるのかというと、そういうわけでもないらしい。自分で決めた期限であっても守らないことが多々あるのだとか。また、何かをやってもらいたくてお願いしようと思うと、それほど忙しそうには見えないのに、「私は忙しい」といって断られることもあるのだそうだ。

これは、知らないで行くよりも、そういうものなのだと心の準備をして行くのが精神的には良さそうだ。東京からは期限付きの作業を求められても、現地ではそうそう思い通りに結果は得られない。往々にして無理は現地の日本人スタッフに求められることになってしまう。そこは多少覚悟しておくとしよう。

さて、このブータン人が期限を守らないという点について、本書で平山さんはこう書いておられる。

 傍から見ると何とも努力しない人たちだと思う時もあった。彼らはできる仕事もやろうとせずに延ばし延ばしのするように私には思えた。「もっと効率的に仕事をしよう」と私が提案したやり方はことごとく彼らに否定された。
 物事には理由が隠れているものだ。実は彼らは努力や向上心がないのではなくて、日本人なら仕事に振り向けるべき時間を別のことに費やしているのである。もちろん彼らは彼らなりにこのままではいけないとの問題意識は持っている。しかし、それ以上に既存の仕事のやり方を変えるリスクを取りたくなかったのである。
 つまり仕事が効率的になるとより多くの業務量が降りかかることを彼らはわかっていたのだ。そうなると今の生活が維持できない。家族のために、生活のために割く時間が少なくなる……だからこそ「改善がすべてではない」と一見平凡に見える生活を必至で守っていたのであった。彼らは現状に不満を持ちながらも状況を受け入れ、その状況を楽しむ術を心得ている。必死ながら、人生を楽しんでいる。(p.51)
ここを読んだら、自分もそうしたいと思うようになった。いかに東京から「働け」と言われても(笑)。

それに加えて彼ら多くのブータン人は無理をしない。最初は無責任な……と腹を立てていたが、自分自身もこの感覚に慣れると楽である。こうして自分も同じ理由で休みを取りやすくなり、身体に疲れも溜まらない。
 しかし、近年、ブータン人もオーバーワークで倒れる人もいる。もともと閉鎖的な人間関係の社会に加えて、一部の人に仕事が集中しやすい。その中で責任感が強い人に過度の負担がかかってくるからだ。
 確かにブータンの生活環境に日本や西洋のタイムスケジュールを持ち込むとかなりのストレスになる。なぜなら、まだまだ電気水道などの社会インフラが整っていないため、生活をするのにも日本の数倍の労力が必要になるからである。これに慣れるまでは、ほんとうに苦労する。(pp.109-110)

う~ん、現地に行ったらストレスが溜まるのは目に見えているようだが、どういなすかな~? 現地のやり方に自分を合わせるのは簡単だけど、東京の本社がそれをどこまで許容してくれるのかは結構疑問だ。できれば、平山さん、日本人なりの対処法のヒントでも書いておいて欲しかったなぁ。

一部の人に過度の負担がかかる一方で、多くの人は無理をしないのだから、国民の97%は自分が幸福だと答えるというのもわからぬではないな。僕自身も含め、僕の周囲の人々が、無理を強いられていないかどうか、注意して見守ることとしよう。

本書は、平山さんがいろんなところで書かれたエッセイなので、分析的な記述はあまりなく、ブータン人の行動様式については、檜山さん本人の推測がけっこう入っているような気がする。全体のトーンとして、日本人もそんなにシャカリキになって生活せず、ブータン人の無理しない生き方を参考にしようという趣旨で書かれている。気楽に読むにはいい本だ。

 本来の人間の生活はそれほど我慢をしなくても満たされているものである。私はブータンでの刺激のない生活を送っていた数年間、特に何かをしたいとは思わなかった。また、その状況に適度に満足していたのである。
 自分の欲をスケールの小さい段階に制御できる。そして、その欲求の支配者になる。これこそが幸福になるための第一歩ではないだろうか。(p.24)

平山さん、本ありがとうございました。


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