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『マジック・キングダムで落ちぶれて』 [読書日記]

マジック・キングダムで落ちぶれて (ハヤカワ文庫SF)

マジック・キングダムで落ちぶれて (ハヤカワ文庫SF)

  • 作者: コリィ・ドクトロウ
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2005/08/09
  • メディア: 文庫
内容(「BOOK」データベースより)
未来の地球で人類は不老不死を達成した。すでに一世紀以上生きてきたジュールズは、ディズニー・ワールドのマジック・キングダムに住んで、スタッフとして働くという長年の夢をついに実現した。ともに働くガールフレンドのリルは、彼の15パーセントの歳で、ふたりは幸せな日々を送っている。だが、彼を思いもよらぬ事件が待ちうけていた…ディズニー・ワールドで働く不老不死のジュールズの冒険を描く、ユーモアSF。

コリィ・ドクトロウ作品第2弾。

ひとことで言えばよみにくかった。なんで舞台がディズニーワールドなのかとか、なぜそのディズニーワールドの中の、さらに狭いエリアになるマジック・キングダムで住むことができるのかとか、なぜそのマジック・キングダムの中にあるホーンテッド・マンションと大統領ホール(ホール・オブ・プレジデント)との間で覇権争いなどやる必要があるのかとか、そもそものところでわからなかった。

一度通読した上でもう一度読み返してみたらもっと味わい深い作品になるかもしれないし、もっとディズニー・オタクであれば作品中で出てくるアトラクションの固有名詞を見て、その位置関係などを想像しながらもっと楽しめるかもしれない。

しかし、これだけ難解な作品を、いま一度読み直す気力は正直起きない。

ただ、ストーリーの難解さとは別に、この本で描かれている「我々のあり得る未来」はなかなか興味深い。

第1に、この作品、貨幣経済から信頼経済へのパラダイムシフトが進んだ社会の姿を描いている。お金を出してモノを買うというのではなく、人から得た尊敬や信頼を表す仮想通貨「ウッフィー(Whuffie)」の残高からの引き出しでモノやサービスを消費している。このウッフィーという通貨は、自分が本当に悪い人かどうかはともかく、人から悪く思われるだけでも目減りする。しかも誰がどれだけ残高を有しているのかが閲覧もできるという代物だ。

ウッフィーがどう使用されるか、目減りしてしまったら何が起きるかは、作品を読めば具体的に理解できるようになるだろう。

第2のポイントは、人類がいずれ人格や記憶のバックアップを常に取っておくという技術をいずれ確立し、3Dプリンターでクローンを速成する技術と組み合わさって、事実上の「不死」を確立するという点である。

病気やケガ、事件などによって現在の肉体に危機が及べば、バックアップを呼び出してクローンの肉体に人格や記憶を植え付ければよい。今の自分の年齢よりもはるかに若い肉体を持つクローンに乗り換えることだってできる。そうすればいつまで経っても若いままでいられる。

でも、バックアップを頻繁に取っていないと、再生した時にはバックアップ時と再生時とのタイムラグが大きければ大きいほど、その間の記憶は喪失してしまう。

さしあたって、今すぐ新しい肉体を手に入れなくてもいいので、しばらくは死んでおいて、何十年か先に再生することだって可能になる。肉体との分離ができないコールドスリープとは違い、記憶や人格だけを保存して未来に持ち越すのである。

なんかすごい世の中だ。荒唐無稽とはかならずしも言い切れない。技術の革新が進めば、今世紀後半ぐらいには確立されるかもしれない技術だからだ。

そして、このバックアップと再生の技術を使えば、何が起こり得るか、これも作品を読めば具体的に理解できるようになるだろう。

本作品は難解で、1回読んだだけではなかなか理解できないかもしれない。しかし、こうした技術に関する予備知識を得た上でもう一度読み返してみると、いろいろと示唆に富んだ情報が盛り込まれているように思う。小説として味わうのではなく、近未来に起こり得る社会の姿の一端を見てみるつもりで、本作品にも挑戦されては如何だろうか。

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