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このまま2030年を迎えると… [持続可能な開発]

ProjectingProgress.jpgSusan Nicolai, Chris Hoy, Tom Berliner and Thomas Aedy
Projecting Progress:
Reaching the SDGs by 2030

Overseas Development Institute (ODI) Flagship Report, Sept. 2015
http://www.developmentprogress.org/publication/projecting-progress-reaching-sdgs-2030




9月、英国のシンクタンクであるODIは、世界が現在のトレンドで2030年を迎えた場合、果たして持続可能な開発目標(SDGs)を達成できるのかどうかを分析した初めてのレポートを発表した。

このレポートは、17項目あるSDGsの各ゴールから代表的なターゲットを1つ選び、それを計測する合計17の指標を用い、15年後の目標達成度を、現時点でできる限りの精度で予測したものである。分析には各指標ごとにスコアカードを作成し、達成見込みに応じてAからFにグレード分けし、さらに3クラスに大分類した。

結果は、現在までのトレンドがそのままのペースで続いた場合、国際社会はすべてのゴールで目標達成が不可能であるとの予測となった。

次に現在のトレンドが継続すれば2030年にはかなりゴールに近いレベルに到達するグレードBの指標群を「リフォーム・クラス」、ゴール達成には今後かなりの努力とスピードアップが要求されるグレードC、D、Eの指標群を「レボリューション・クラス」、最後に現在誤った方向に進んでおり早急な見直しが必要な指標群を「要反転クラス」に分類した。

3つのクラスに該当する指標は以下の通りだ。(数字はSDGsのゴール・ターゲット番号)

 リフォーム・クラス:3指標が該当。
 1.1 貧困撲滅、8.1 LDCs経済成長、15.2 森林減少防止

 レボリューション・クラス:9指標が該当。
 3.1 妊産婦死亡率削減、4.1 万人の中等教育、16.1 暴行殺人件数削減、17.1 国内資源活用、
 2.1 飢餓撲滅、6.2 万人の衛生施設(トイレ)へのアクセス、7.1 万人の電気利用、5.3 幼児婚根絶、
 9.2 LDCs工業化

 要反転クラス:5指標が該当。
 10.1 所得の平等化、11.1 スラム人口削減、12.5 廃棄物削減、13.2 気候変動対策、
 14.2 海洋環境保全

但し、このスコアカードの解釈には注意も必要である。このスコアカードは全世界合計での評価であり、国・地域により達成見込みが大きく異なる。

地域別の特徴としては、サブサハラ・アフリカは2030年までに最貧困層の比率が減少するが、人口増加により貧困の絶対数は増加し、中等教育も全体の2/3と目標から大きくかい離する見込みであり、SDGs達成には相当規模の支援が依然必要である。

一方、南アジアは3.5億人が貧困を脱出するが、妊産婦死亡率は目標の2倍と依然高水準である。東アジア・大洋州では、貧困と妊産婦死亡率は著しい改善が予想されるが、不平等は拡大する見込みである。

ラテン・アメリカも貧困削減位は大きな進捗が予想されるが、暴行殺人発生率は依然どの地域よりも高くなる。富裕国においてもSDGs達成には大きな変革が必要であり、環境への最大の悪影響はBRICSとOECD諸国から生じていて、今後も影響は拡大していくと見られている。

ODIは、SDGsを本気で達成するというなら次の2点についての強力な取組みが必要だとする。

第1に、全世界の政府・市民が野心的なSDGs達成に向け各自の責任を自覚し、今まで以上の活動努力をできるだけ早くスタートさせることである。

第2には、SDGsは国・地域によってスタート位置が異なるため、各国では自国レベルに合わせた適切な目標を設定し、柔軟な実行計画を策定することである。

以上がレポートの概略である。

やはり衝撃的なのは、このまま"Business as Usual"でいては国際社会はSDGsを一つも達成できない恐れがあるという強烈なメッセージである。

これに加えて有用なのは、ふんだんに盛り込まれたボックスコラムである。特に、36ページにあるボックスでは、ODIが過去に行った50件弱のケーススタディをメタ分析して、進展をもたらす推進力(Driver)になったのはどんな要素かという共通項を導き出している。

これは僕がこれから年度末にかけてまとめなければいけないペーパーでも参考情報となり得る。


タグ:SDGs
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