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『イスラーム国の衝撃』 [読書日記]


今から1年ぐらい前が「イスラーム国」という言葉を聞いた最初だった。ちょっと前だったら中東で国をまたにかけてテロ活動を展開しているといったらアル・カーイダだったと思うが、「イスラーム国」というのが急に登場し、またたく間にイラク・シリア国境地帯で勢力を拡大した。まさに突然という言葉がピッタリだったのだが、この既存の国家の国境線におかまいなしに勢力を拡大し続けるその姿を見ていると、世界史で習った7世紀のイスラム帝国を想起させる。ウマイヤ朝の時代には、西欧のスペインや中央アジア、パキスタンあたりまで勢力下に置かれた。

「イスラーム国」に対する僕の理解は、正直メディアで報道する範囲に限られている。日本人人質事件が起き、メディアで取り上げられるようになった今年の年明け、新聞紙上の書評欄でも「イスラーム国をどう理解すればいいか」というので幾つかの本が紹介されていた。東大の池内恵先生が書かれた『イスラーム国の衝撃』もその中の1冊で、発刊時期が日本人人質事件が大詰めを迎えていた時期でもあったので、この本はかなり売れた。

イスラーム国の衝撃 (文春新書)

イスラーム国の衝撃 (文春新書)

  • 作者: 池内 恵
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2015/01/20
  • メディア: 単行本

内容(「BOOK」データベースより)
既存の国境を越えて活動し、住民から徴税し、「国家樹立」をも宣言した「イスラーム国」―なぜ不気味なのか?どこが新しいのか?組織原理、根本思想、資金源、メディア戦略、誕生の背景から、その実態を明らかにする。

便乗本だと思われるかもしれないが、著者自身がこの本をまとめようと思ったのはむしろイスラーム国が国際舞台に登場した頃だと思うので、発刊時期が日本人人質事件と重なったからと言ってそんじょそこらの便乗商法とはわけが違う。著者はアジア経済研究所の研究員もされていたということだから、中東のいずれかの国に長期滞在して地域研究の基盤となる情報収集と人的ネットワークの構築をしておられた筈である。本書で開陳されているのもその一部でしかない。読んでいて、著者ももっと書きたいことがあったんだろうなと思うところもしばしばだ。新書のボリューム上の制約で、書ききれなかったことも多いかもしれない。

でも、それであっても十分難しい。新書とも思えないほどの難解さ、読みづらさがある。元々中東情勢やイスラームの思想にさほどの造詣があるわけでもないので、やたらと出て来るイスラームの教義に関する専門用語とか、登場する人物の名前とか、果ては中東の地名とか、とにかくすんなりと頭に入って来ない。入門書だと言いつつも、この本がさっぱり頭の中に入って来ないというところに、僕自身の不勉強ぶりを改めて痛感させられる。

もう1つの読みづらさの理由は、既存の国家の境界線をまたいだ活動を展開しているからだ。単に軍事的な意味での勢力圏はシリア・イラクにまたがるエリアなのかもしれないが、活動グループのネットワークは中東・北アフリカどころか全世界に広がる。だから地理的に特定地をフォーカスした描き方にできずに舞台があちらに飛んだりこちらに飛んだりする。

自分がこのテーマに全然ついていけてないことがよくわかった。ただ、シンプルに僕が疑問を抱いていたことにはある程度は答えてくれている1冊だとは思う。「ISIS」だったり「ISIL」だったり、やたらと呼称にバラつきが生じているのはどうしてなのか?あれだけの軍事活動を展開するのに必要な資金はどのように調達しているのか、巷間言われているような、先進国からイスラーム国へのカネの流れを遮断すれば本当に彼らの活動に打撃がを与えることができるのかとか、なぜ欧米や日本の若者がこれに向かおうとして中東に集まって来るのか、彼らはなんでああした広報が行えるのか、それをイスラーム教徒はどう捉えているのか―――これらの疑問には、著者なりの説明がされている。それはそれでわかったけれど。

そして中東・北アフリカの未来像だが、解説されていることをそのまま捉えたら、イスラーム国は未だ発足して歴史が浅いと言いつつも、意外と根強く今後も残っていくのではないかと思った。本書では触れられていないが、こういう形で出てきた新たな勢力は、現在の国民国家中心の国際社会によってどう受け入れられるのか、国際交渉はどうしても成り立たないものなのか、そんなところには依然として興味がある。



タグ:中東 池内恵
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