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『データでわかる2030年の日本』 [仕事の小ネタ]

データでわかる2030年の日本

データでわかる2030年の日本

  • 作者: 三浦 展
  • 出版社/メーカー: 洋泉社
  • 発売日: 2013/05/10
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
内容(「BOOK」データベースより)
日本の人口はどこまで減る?
高齢化はどこまで進む?
未婚化は止まるか?
都市、郊外、地方はどうなる?
雇用や所得は増えるのか?
世界に先駆けて激変する日本で生きるために知らないとまずい衝撃の予測。これがニッポンの新常識。
僕は三浦展さんの著書のうち、次の3冊をこれまでにブログで紹介している。
 『下流社会』(2006年6月紹介)
 『団塊世代の戦後史』(2008年6月紹介)
 『東京は郊外から消えていく』(2012年10月紹介)
そのいずれでも指摘している通り、データの羅列が多くて総ページ数の3割から4割が図表で占められており、早く読み終われるけどあとで記憶に残らない、コスパが悪くてわざわざ金を払って読む気にならない、などと辛辣なコメントを残してきた。同じ感想は多くの読者の方が持たれるに違いない。

ただ、元々この著者は時代や社会や市場の将来予測をするのに基本的なデータを日頃から使っている人なので、忘れた頃にたまに著書を読んで情報の更新に努めておくとよい。

著者は序文の中で、次のような問題意識を開陳している。
 今、日本は大変な転換期にあります。人口が減り、高齢者が増え、働き手である若い世代が減っていく。社会保障費は拡大し、消費税をはじめとした税金もおそらく上がっていくでしょう。高度経済成長期につくった道路などのインフラも老朽化していきます。2030年、あるいはさらに2050年、2060年といった将来に、いったい日本がどうなっているのか、とても心配です。(中略)私は毎月何度も講演をして、日本の将来の人口や消費についても毎回話していますが、日本の人口が今後どれくらい減るか、どれくらい高齢者が増えるかといった、ごく基本的なことですら、よく知らない人が多いなと感じています。ビジネスパーソンですら、そういうことを知らない人がいる。
 日本の社会が高齢化していることは誰でも知っている。でも、どれくらい高齢化しているかを、きちんと数字でわかっている人はいない。ただ、なんとなく、ぼやーっと、高齢化しているんだと思っているだけです。(pp.4-5)
これが本書を書く問題意識だったということだ。

著者によれば、1971年から74年の間に生まれた「団塊ジュニア」の世代は、2030年に50代後半となり、2040年には65歳を過ぎて、高齢者になる。彼らが高齢者カテゴリーに突入すると、日本の高齢化率は36%にまで上昇してピークを迎える。その時、団塊ジュニアの高齢者を支える若い世代は全然少ない。こうした人口構造になっていくことについて、我々日本人は自覚があるのかと著者は問うている。団塊ジュニアよりも10歳ほど年上の僕は、生きていれば2040年は70代後半であり、若い世代に未だ負担を強いているに違いない。

しかも、団塊ジュニアが高齢者の仲間入りを果たすと、次に待っているのはこれら日本の人口構造上最も多い数を占める年齢層の死亡数が増え、一気に日本の人口は減っていく。団塊ジュニアは都市居住者が多い筈だから、大都市を中心に人口が激減し、インフラや制度が支えきれなくなっていく。「2030年までの間に、われわれ日本人は、社会のさまざまな仕組み、制度を根本から変えていき、2040年からの社会に備えなければならないのです」(p.6)と著者は言う。その通りだと思う。放っておいたら僕たちの2030年、2040年はどういう姿になっているのかを先ずイメージして、そうならないようにするにはいつまでに何をどうしていけばいいのかを、真剣に考える必要がある。

時代に流されていけば、本書で描かれているようなことはまず間違いなく起きる。著者は、過去30年間、少子化が進んだことが、日本の高齢化を早め、将来の国力を低下させる原因になると述べている。そして、これだけ若い人が減ったら、経済活動は衰え、社会制度の運営も難しくなり、オリンピックでの獲得メダル数も減ると予測する。
2020年には東京オリンピックが開催できたとして、それがメダルをたくさん取れる最後の大会になるでしょうね。高齢者ばかりなんですから。戦争をしたら、すぐに負けるでしょう。
 もちろん戦争はしないほうがいい。若い人が減少する社会では、ますます平和外交が必要になるでしょう。(p.103)
東京五輪は消える間際のロウソクの火みたいなものか。そうかもしれない。そのうち、日本政府は、普通のオリンピックじゃメダルも期待できないから、年齢別カテゴリーの導入とか、ねんりんピックの世界版の普及のようなことを言いはじめるんじゃないだろうか。それと、オリンピックはまあ許せるとして(それでも新国立競技場建設反対論は著者にはもっと唱えて欲しいが)、世の中年寄りばっかりになっていく中でどうやって戦争するんだというのは、著者には声を大にして叫んで欲しいと思う。

データを図表によって見える化して、羅列している。事態の深刻さを描くには十分なんだけど、データ集で終わっちゃってる感じがするのが残念。先に挙げたオリンピックや戦争に関する記述は、ちょっと茶化しておしまいというのではなく、もっと本気で論じて欲しい。著者のお得意の手法なんだけど、これを読んで何か行動につなげる動機づけになりそうかというと疑問。データだけ示して、それをどう理解し、どう行動するのかは読者任せというのではもったいない。こういうお話は本にしておしまいというのではなく、この中のデータを使っていろいろなところで講演活動を展開して、もっと多くの人に知ってもらうことが必要だと思う。

この本は初刷が2013年5月。僕がこの本を借りた近所の図書室に入庫したのがいつなのかは不明だが、僕の前に借りた方は2013年9月に借りておられる。その後2年弱の間、この本は図書室の蔵書として眠っていて、誰も借りていないということだ。三浦展という人がどれだけネームバリューがあるとしても、本書はそうそう売れるタイプの本ではない(三浦さんのことは知っていても、コスパを考えたら買って読むには躊躇がある)。だから、講演資料集として、講演活動にどんどん使っていかれたらいい。

うちの業界が2030年にどんな姿になっているのか、非常に興味がある。足元の日本がこういう状態なら、僕らの仕事のやり方も相当な変革が求められるだろう。

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