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『まるわかりインダストリー4.0』 [仕事の小ネタ]

まるわかりインダストリー4.0 第4次産業革命 (日経BPムック 日経ビジネス)

まるわかりインダストリー4.0 第4次産業革命 (日経BPムック 日経ビジネス)

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 日経BP社
  • 発売日: 2015/04/02
  • メディア: 単行本
内容紹介
本書では、今グローバルに起きているインダストリー4.0の動きについて、その本質をわかりやすく解説するとともに、ドイツ、米国、インドをはじめ各国の先進事例をリポート。牽引する米欧有力企業のトップインタビューや、有力コンサルタントの分析も交え、インダストリー4.0時代に求められる、ものづくりや組織作り、働き方とは何かを明らかにします。企業と日本の持続的な成長を考える上で必携の書になるとともに、時代が求める働き方とは何かを考えるうえで、ビジネスパーソン一人ひとりにも重要な指針を示す一冊です。

これまでに日経ビジネスが取り上げた「第四次産業革命」に関連した特集記事のいくつかをドッキングさせて1冊にしたもの。従って、気にならない程度ではあるが記事の間に多少の重複はある。ビジネス誌の特集記事はそのテーマについて概観するのにはちょうどいいボリュームであるわけで、その意味ではこのムックも「第四次産業革命」や「IoT(Internet of Things、もののインターネット)」に関する入門書として最適だ。

とりわけわかりやすかったのは、ドイツが国を挙げて進めようとしている製造業の革新「インダストリー4.0(第四次産業革命)」が同じく生産効率化を掲げて磨き上げられてきたトヨタの生産方式(カンバン方式)とどこがどう違うかという説明。本書によれば、トヨタ生産方式は最終製品の「マスプロダクション(大量生産)」のための生産システムだが、インダストリー4.0は、様々な生産ラインをつなげ、膨大なデータを即座にやり取りすることを目標としていて、顧客の要望に応じて、仕入先や生産工程を自在に組み替えられるようになることを目指している。つまり、1個ごとの生産システム、「マスカスタマイゼーション(個別大量生産)」のための生産システムということになる。今までテーラーメードの生産はコストがかかり、なかなか実現しなかったものが、センサーやソフトウェアを用いて実現可能になるということなのだとか。

これを1つの具体例で描いたのがダイハツ「コペン」に関する記事。同じトヨタ系列とはいえ、この車に関して、ダイハツは、従来なら自社で抱え込んできた車体のデザインや製造を第三者に開放している。そのため、樹脂製の外装パーツに関しては、個人や外部の企業であっても、3Dプリンタを用いることで作製できてしまう。車としての基本機能は同じであったとしても、外装に関しては、個々の個人やメーカーのデザイナーの思想や趣向が反映しやすくなる。「なんとかデザイン社」がコペンをベースにして、個性豊かな車を売り出すといったことが頻繁に起き、ダイハツのような自動車メーカーはより基本機能のブラッシュアップに注力するといった役割分担になっていく。

本書によると、トヨタもいずれは基本機能を有する車台を提供する、いわば下請のような役割に変化していくとすら予言している。

規模は全然違うけど、日本の市民工房でよく見られるのは、スマホのケースにレーザー加工機で彫り物や印刷を施し、自分だけのスマホケースに仕上げるというようなものだと思う。これも、一種のカスタマイゼーションだろう。

ただ、巷を現在にぎわす「第四次産業革命」「インダストリー4.0」「IoT」といった言葉の他に、「第三次産業革命」という言葉も存在する。これらはどこがどう違うのか、本書はおそらくそれらをごっちゃで扱っているため、どこがどう違うのかがよく分からなかった。また、産業界の危機感はよく伝わってくるが、それじゃそういう産業界に今後も若い人材を送り出すことになる大学はどうなったらいいのか、そこまで踏み込んだ記事はなかったように思う。

僕なりの理解で言わせてもらうなら、インダストリー4.0はあらゆるものを「つなぐ」という発想に基づくもので、それだけにあらゆる分野・領域の知見もつなげられるような仕掛けが必要になると思う。とすると、今のように、学科がいくつにも分かれていてその中でもゼミによってさらに分断されているタコツボのような工学教育の建付けはこれからの産業界のニーズとは必ずしも合っていないように思える。

先日、うちの長男の進路のことを考えて、理工系フェア進学説明会というのに行ってきた。一応ものづくりには関心もあって、工学部志望のうちの長男だが、説明・相談会で担当者を送り込んできていた大学の説明を聞いてみた感じでは、勿論そういうところに来る関係者といったら入試担当なんだろうから仕方ない面はあるものの、「インダストリー4.0」や「IoT」といった産業界のニーズに大学の工学教育がどう応えてきているのかという質問にはあまり明確な答えをしてくれる大学は少なかった。(逆に、「そういう業界の方ですか?」と僕自身が訊かれてしまった。)

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