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『株価暴落』 [池井戸潤]

株価暴落 (文春文庫)

株価暴落 (文春文庫)

  • 作者: 池井戸 潤
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2007/03/09
  • メディア: 文庫
内容(「BOOK」データベースより)
巨大スーパー・一風堂を襲った連続爆破事件。企業テロを示唆する犯行声明に株価は暴落、一風堂の巨額支援要請をめぐって、白水銀行審査部の板東は企画部の二戸と対立する。一方、警視庁の野猿刑事にかかったタレコミ電話で犯人と目された男の父は、一風堂の強引な出店で自殺に追いこまれていた。傑作金融エンタテイメント。
今月に入って4作目の池井戸作品のご紹介になる。短期間にこれだけ続けると飽きが来ないかとも思うが、今月読んだ4作品は銀行が舞台となっているという1点を除けばストーリーの共通性はあまりないので、新たに読むたびに新鮮なカタルシスを味わうことができた。

なぜこれほど集中したかというと、『銀翼のイカロス』を除く3作品は、近所のコミセン図書室に収められている文庫版で、たまたま借りることができたからというのに過ぎない。以前から狙っていた本であり、書架で発見したら迷わず手に取ることにしている。池井戸潤は人気が出てしまったので、一瞬でも借りるのを躊躇すると、誰かに借りられてしまう恐れがある。

月末が近くなってきていて、僕はお盆休みの帰省中に読まねばと思いつつどうしても読み切れなかった専門書2冊の読み込みを最優先でやらねばならない状況である。ところが、お盆休みが明け、その間に借りていた3冊を図書室に返却に行ったところ、たまたま新着本の棚に『株価暴落』の文庫版があるのを発見してしまった。千載一遇のチャンスである。他に優先しなければいけない専門書があったものの、就寝前のひと時や朝出勤前の風呂、トイレ等の時間を利用して少しでも読めると踏み、僕は新たにこの本を借りることにした。

本にまつわるエピソードが長くなってしまったが、ここからが本題―――。

半沢直樹の白水銀行バージョンってところでしょうか。舞台は半沢の勤める東京中央銀行のライバル行である、旧財閥系の白水銀行である。さしずめ、東京中央銀行は三菱東京UFJ銀行、白水銀行は三井住友銀行(のうちの住友銀行)といったところだろうか。正義を貫く漢はどこの銀行にも1人ぐらいはいるということでしょうか。それと、そうした漢を温かく見守る上司も…。それくらい、実は『株価暴落』は半沢直樹シリーズに近い要素を持つ。しかも、主人公が沈みかけた大企業の再建を担当させられ、しかもいったんは再建計画に合意し、巨額の融資を実行したものの、再建計画の進捗が芳しくなく、そんなところに追加融資を求められるという展開も、『銀翼のイカロス』と似ている。読んでいて既視感にとらわれるとしたらそういうポイントだ。

でも、『株価暴落』の場合は、これに企業をターゲットにした連続爆弾テロを絡ませるというサスペンス性もある。半沢直樹シリーズはあまりミステリーとは言えないが、『株価暴落』に関しては犯人を追う警察と、警察に追われる容疑者とその周囲の人々も描いており、れっきとした金融ミステリー作品に仕上がっている。最近の池井戸潤さんはこうした金融ミステリー作品をあまり出していないが、カネに絡む犯罪というは実世界においても多い筈なので、いくら作品を世に出しても、出し過ぎるということはないと思う。とても面白かったし、これからも出してほしい。

最後に再び池井戸作品にまつわるエピソードを1つ。

23日(土)、僕は、会社の剣道部が所属する剣連の月例合同稽古会が十条で行なわれることになっていたので、そのついでにその近所に住んでいるKクンに連絡を取り、食事一緒にすることにしていた。正午過ぎ、ちょうど自宅を出ようとしている時に夕立になり、合同稽古参加を断念。でも、その後夕立は1時間ほどで上がったので、十条まで出かけ、Kクンには会った。

Kクンは僕が学生時代に米国留学の資金集めのためにやっていた神田神保町の書店でのバイト仲間で、それからの付き合いなので既に30年近くになる。板橋のご実家には何度も泊めてもらったことがあるし、お父さんお母さんにもご馳走になることも度々あった。年末年始を東京で過ごす時は、K家で新しい年を迎えるのが恒例行事だった時期もある。お互い結婚し、しかも僕の場合は地方や海外での勤務で通算すると10年も東京を離れていた時期があり、そうそう頻繁に会うことはできなくなったものの、フェースブック等のSNSに頼らずとも常に連絡は絶やさないようにしてきた無二の親友である。

神田神保町でのバイトの延長で、Kクンは出版業界に就職し、今もK社に勤めている。僕はその出版社が出している本も年に数冊は読んでいるので、酒を飲みながらも話題は本の話が中心。僕の場合、ちょうどその日に『株価暴落』を読み終わったので、話は自然と池井戸作品にも及んだ。当然ながら『銀翼のイカロス』の話にもなったが、Kクンとその奥様のYさんは未だ読んでいないということだったので、ネタばらしはやめておいた。

僕は自分では相当な読書家だと思ってはいるが、妻や職場の同僚の多くはそうでもないため、自宅でも職場でも、読んだ本の話で盛り上がることなど皆無に等しい。最近職場の庶務担当の女性に最近どんな小説読んだか尋ねたことがあるが、「小説あまり読まないんですよね」と言われてしまった。本の話で盛り上がれるリアルな飲み友達がどんなに貴重なのか、改めて痛感させられたこの週末であった。

なお、『株価暴落』は10月からWOWWOWでドラマ化されるそうだ。僕はその話を読了してから知ったが、もしコミセン図書室がそれを読んで新たにこの作品を入庫させていたとしたら、相当な先見性だと敬服してしまう。主人公・坂東を演じるのは織田裕二さんだそうだ。でも織田さんといえばワイシャツの第一ボタンを必ず外してネクタイをルーズに締めているというイメージがやたらと強いため、正統派のバンカーである坂東とはイメージが合わないような気もするのですが…。

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