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寸評:今週読んだ本(2014年8月中旬③) [仕事の小ネタ]

夏休みはあっという間に終わってしまった。雨続きだったこともあって、読書はそれなりに進んだが、走り込みは思ったようにはできず、容易に外出できない家族もストレスをためてとんでもないことになった。

この間に読んだ本については、多すぎるために寸評を書くにとどめてきたが、まだまだ紹介しきれていない本がある。全ページを読んだわけではなく、ある問題意識に沿って拾い読みしたものなので、「紹介」というにはやや不十分かもしれないが、一応備忘録として書いておきたい。

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The Quality of Growth

The Quality of Growth

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: World Bank
  • 発売日: 2000/10/09
  • メディア: ペーパーバック
内容説明
Part of the World Bank's Millennium Program, this book offers a retrospective of the World Bank's development efforts since 1991.
2000年発刊からなんと14年も積読にしておいた末、なんと今になって必要に駆られてお盆休みを使って読んだ。発刊当時すぐに購入した理由は、本書の中で自然資本の蓄積について書かれた第4章の執筆を担当したのが僕の知り合いの世界銀行の職員だったからで、話のネタにしようと思って1冊購入したが、その方もその後忙しくなってしまい、なかなか交流の機会を設けることができないうちに、僕はワシントンでの駐在を終えて帰国することになってしまった。

当時の世銀の中心論調であった「貧困削減」には経済成長が必要不可欠だが、重要なのはその質だとして、分配の不公平性、自然環境の持続可能性、資本移動のvolatilityの抑制、市場の歪みを是正するガバナンスの重要性を指摘している。但し、この時点では未だ気候変動は課題としてクローズアップされておらず、最近議論が喧しいレジリエンスへの言及もない。14年前の論調を知るには良い本だ。買ってすぐに読まなくても、蔵書として長くキープしていればそれなりにいいこともあるということを認識させられた。

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The Growth Report: Strategies for Sustained Growth and Inclusive Development

The Growth Report: Strategies for Sustained Growth and Inclusive Development

  • 作者: World Bank
  • 出版社/メーカー: World Bank
  • 発売日: 2008/07/23
  • メディア: ペーパーバック
内容説明
Why have only 13 developing world economies achieved sustained, high growth since World War II? Why is engagement with the global economy necessary to achieve high growth? Why do some countries' growth strategies fail to win the public's confidence? Why are equity and equality of opportunity important components of successful growth strategies? Why do many countries, blessed with natural resource wealth, not achieve high growth? Why has no country ever sustained rapid growth without high rates of public investment? Why does it not always pay to devalue the exchange rate? When does it? Why is childhood nutrition so important to economic growth?Why do some economies lose momentum when others keep on growing? Why has no country ever sustained long-term growth without urbanizing? Why should there be an end to energy subsidies? Why do global warming and the rising prices of food, energy and minerals pose challenges to potential future growth in developing countries? Why does the aging of the world population matter for developing countries growth and employment prospects?" The Growth Report" does not have all the answers, but it does identify some of the key insights and policy levers to help countries achieve high, sustainable and inclusive growth. The result of two years work by 19 experienced policymakers and two Nobel prize-winning economists, "The Growth Report" is the most complete analysis to date of the ingredients which, if used in the right country-specific recipe, can deliver growth and help lift populations out of poverty.
ノーベル経済学賞受賞者を含む著名な経済学者が名を連ねた「開発と成長に関する有識者委員会」が2008年にまとめた報告書で、通称「成長レポート」と呼ばれる報告書だ。この報告書にも思い入れがあって、当時僕はインドに駐在しており、デリーで開催された報告書のグローバル・ローンチに出席させてもらったのである。僕はインド計画委員会の委員の1人であったC先生と大学院の専攻の関係で面識があり、会場で先生にご挨拶しに行ったところ、先生はご機嫌で周囲にいた何人かの有識者の方々に「マイ・ボーイ」という言い方で僕のことを紹介して下さった。その中には成長委員会の座長だったマイケル・スペンス教授も含まれていた筈だが、恐れ多くて名刺を差し出して交換してもらうところまでには至らなかった。

その思い出深い出来事をアレンジして下さったC先生は、今年お亡くなりになってしまった。

さて、この報告書であるが、過去に持続的な経済成長に成功した国々の経験をレビューし、同様に持続的な成長を遂げるために取り得る共通の政策課題を整理したものである。過去に高度成長を記録した国々が、それが可能となる良い環境にあったこともわかり、これから持続的な成長を志向する国々の直面している課題の大きさを逆に痛感させられる。日本が高度成長を遂げた1950年代後半から60年代にかけては、朝鮮戦争の特需があったし、米国の経済拡大もあって輸出主導の成長戦略が取りやすかった筈で、今同じようなことを途上国がやろうと思っても、容易に高度成長を実現させられるような環境ではない。最近では「持続可能な成長(Sustained Growth)」という言葉が頻繁に用いられるようになっているが、その原点となったのはおそらく本書だろう。

今読んだのは必要にかられたからだが、「成長の質的側面がいつ頃から言われ始めたのかを調べたい」という僕の問題意識に合った答えが多少は見出せたかなという気がする。「質」という言葉ははっきりとは使われてはいない。ただ、先に紹介した2000年の世銀の報告書との比較で言えば、やはり分配面の重視や市場の失敗を是正する政府の役割の重要性は成長レポートでも触れられている。

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