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『SFを実現する』 [仕事の小ネタ]

SFを実現する 3Dプリンタの想像力 (講談社現代新書)

SFを実現する 3Dプリンタの想像力 (講談社現代新書)

  • 作者: 田中 浩也
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2014/05/16
  • メディア: 新書
内容(「BOOK」データベースより)
遠隔転送装置、スモールライト、万能工作機械…3Dプリンタはまだ序章でしかない!大注目の次世代工学者が描く新しい「モノづくり」とは?

先月上旬、大型連休の真っ最中に、フィリピンのボホールで、第1回アジア・ファブラボ会議(FAN1)が開催された。主催者のお一人から「来てみないか」とお誘いを受けていたのだが、連休の前後は僕も東京で結構重要な仕事が控えていたため、折角だけれどお断りすることにした。7月上旬には今度は第10回世界ファブラボ会議(FAB10)というのがスペイン・バルセロナで開催される。別の主催者からパネリストを派遣できないかと言われ、自分自身で行くことも考えたのだけれど、これもその前後に東京で重要な仕事があるため、どうしても行くことができない。

参加するにあたっての大きな問題点は、これらの会議が4日とか5日とか、比較的長期間にわたって行なわれることだ。ものづくりのワークショップもあるので、長期間になるのは致し方ないところなのだが、僕らが声をかけてもらえる理由はこうしたデジタル工房の新設にあたってスタートアップ費用を拠出できることにある。僕ら自身が工作機械を使いこなして何かを作るのに深く関わっているわけではないので、僕らのような立場の者が会議開催期間中のどこでお呼びがかかるのか、どこにいたらいいのかがわかりにくい。ウェブサイトを見ても、かっちりした会議日程がなかなか掲載されないので、「この日のこのイベントに出たいので出張させて欲しい」と上司に前広に事前了解を取り付けることが難しい。

FAN1の話題に戻るが、このフィリピンでのイベントには東京新聞(中日新聞)が記者を派遣しており、5月には度々東京新聞がファブラボについて記事で取り上げていた。加えて5月に出版されたのがFAN1の仕掛け人の1人である慶応大学の田中准教授の近著。SFとあるので何事かと思ってよくよく読んでみると、Social Fabricationの頭文字を取ったものだった。

田中先生の著書は過去にも読んでおり、ファブラボについて予備知識もあったので、そういう状態で読む上ではある程度わかりやすかった。フィリピンのファブラボの話、インド・プネ郊外で2000年代初頭に既に登場していたファブラボVigyan Ashramの話等も触れられ、冒頭のものづくり全体のパラダイムシフトの話から、ファブラボの世界的な普及に至るまで、最新の情報を得ることができる。ファブラボは世界各地での設立が本格化して未だ5年も経っておらず、まだまだ新しいムーブメントだし、これからも急速に普及していくだろう。その時々の状況をこのように切り出して定点観測するような読み物があると、一般読者には便利だ。

《フィリピンのファブラボ第1号「ファブラボ・ボホール」開所式の様子です》

ただ、ちょっと悩みも。わかりやすいことはわかりやすいのだが、カタカナが多くて概念的なカタカナ造語もいくつかあったので、正直ついていくのが大変だった。あまり概念的な言葉を使われると、これからものづくりを目指してほしい高校生あたりに読ませるには少し難しいかもしれないというのが気になった。また、僕的にはファブラボってどうやって採算を取っているのか、どうやって開業に至るのか、ある程度類型化して示してほしかったのだけれど、そこまでのお話はなかったのがちょっと残念。自分なりにカスタマイズしたものづくりの楽しさ、面白さは、本書を読めば十分伝わってくるし、エントリーポイントとしてそれは大事かもしれない。ただ、それを普及拡大していく場合、それへの投資に金を出すことを考えたりする立場からすれば、それが採算の取れるビジネスモデルなのかどうかは結構大事だ。

とはいえ、こうした3Dプリンターを用いた新たなものづくりの形が、思いもよらない形で若い人を惹きつけたりすることもありそうだ。僕は工学部志望のうちの長男には大学に進む前にファブラボを一度でいいから見学してみて欲しいと期待していた。ガンプラいじりが好きな我が長男は、自分で工具をいじってガンダムに装着する武器等をプラスチック加工して作ったりして遊んでいる。それ自体もすごいことだと思うが、それをもっと発展させてくれればと密かに思っていた。ところが、なぜか最近、中3の娘がファブラボで3Dプリンターを見てみたいと言い始めた。特に娘にこれまでこんな話はしたことがなかったのに、どこで聞いたか「ファブラボ」云々だと。その動機は初音ミクのフィギュアなのかもしれないが、動機がどうあれ、100%文系の女子がものづくりに興味を持つというのもちょっと面白い。どこかのファブラボでガイドツアーなど企画してくれていたら、我が家の子供たちを連れて行って来たいなと思っている。

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