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『私たちはどうつながっているのか』 [仕事の小ネタ]

私たちはどうつながっているのか―ネットワークの科学を応用する (中公新書)

私たちはどうつながっているのか―ネットワークの科学を応用する (中公新書)

  • 作者: 増田 直紀
  • 出版社/メーカー: 中央公論新社
  • 発売日: 2007/04
  • メディア: 新書
内容紹介
人は出会い、つながる。会社や友人関係、地域社会も、個人と個人が結びつきネットワークを作ることで成り立っている。それでは私たちはどのように他人とつながっているだろうか。私たちのネットワークの上では何が起こっているだろうか。本書は、スモールワールドやスケールフリーといった最新のネットワーク科学を、毎日の生活に活かそうと提言する。己を知り、他人を知り、そのつながり方を知って、ひとつ上の自分へ!
新書サイズで、通勤時の持ち運びにも便利な本なのに、読み切るまでに想像以上の時間がかかってしまった。第4章あたりまで展開された「スモールワールド・ネットワーク」のお話はわかりやすかったが、第5章から始まった「スケールフリーネットワーク」の話の展開があまり頭に入って来なくて、読むスピードが極端に鈍ってしまったのである。前半部分の挿絵はかわいくて、易しく書いて読ませようという著者の意識も感じられたが、後半はかなり硬い記述に終始したような印象である。各章の末尾にその章のまとめというのが囲みで挙げられているが、第4章までののまとめはわかりやすいが、第5章以降のまとめは、挙げられている要点そのものがわかりにくかった。

この本を読むにあたっての僕の問題意識は、僕自身が個人的にどう人脈作りを意識していくかということよりも、自分が所属する組織を構成するメンバーひとりひとりの持つネットワークを把握して、時に繋がっていないところを新たに繋いだり、遠くの人との繋がりを作ってその知見を引っ張り込むなどして、組織としての生産性をどう高めていったらいいのかを考えたいというところにある。

ワッツやストロガッツのモデルについては今さらこの場で紹介するまでもないし、グラノヴェッターの有名な転職の際に頼りにする情報源に関する研究、バートの主張した「構造的空隙」なども、ネットワーク研究の本には必ず登場する有名なものばかりなので、ここでは説明は省略し、上に述べた僕の問題意識に基づき、本書に幾つかマーカーで線を引いた文章の引用でここは代用させて欲しい。


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三角形のふんだんにあるネットワークに、近道というスパイスを少しだけ混ぜこむ。すると、6次の隔たりが実現されるとともに、クラスターも保持される。(p.51)

枝がはられていない穴(空隙)がビジネスチャンスなのだ(中略)。往々にして、ビジネスの種は異なる複数の専門性が出会うことで生じる。(p.57)

 内輪びいき=安心に頼りすぎると、自分のコミュニティの枠を超えた出会いと一般的信頼の醸成は阻害される。一般的信頼が欠けていると、情報が入ってきにくい。新しい情報は、自分と似た人ではなく自分と異なった人からもたらされやすいからである。内輪でつきあってばかりいるために、外の人と交流すれば得られる価値を逸してしまう。(中略)
 そこで、内輪づきあいへの偏向を他人を信頼することによって解き放ち、一般的信頼の成立する社会を目指す、というわけだ。これは、スモールワールド・ネットワークのメッセージと合致する。一般的信頼がない社会派、自分と異なるコミュニティとの情報交換がないネットワーク、つまり近道のないネットワークである。そのようなネットワークでは6次の隔たりが実現できていない。逆に、赤の他人を信頼する社会は、近道に富み、短い距離が実現されている。(pp.62-63)

 現在の日本も閉鎖的な社会と無縁ではない。会社が閉鎖性を助長してしまうことはよくある。労働時間が長いために他の人間関係に割く時間がなくなり、会社内の人づきあいだけになってしまう場合は多いだろう。(中略)また、精神的に追いつめられた人は、自分のコミュニティの外に気を向ける余裕を失ってしまうことがあるだろう。
 年をとるほど閉鎖的になってしまう傾向もある。(中略)社会人になると仕事で忙しくなる。出会いの機会も学校やサークルが用意してくれるわけではない。忙しさのゆえに人間関係が単純化していくことが多い。仕事が忙しすぎなくても、周りから忙しい人と決めつけられてしまうことさえある。さらにもう少し年齢が上がれば、結婚して疎遠になる友達が増えてくる。(中略)仕事に打ち込む人はやりがいが出てくる年頃にさしかかり、さらに忙しくなって人づきあいから離れていきやすい。そのような人の周りからは、枝も近道も減る。(pp.64-65)

 自分の知人を見渡して同質な人ばかりならば、自分の周りのネットワークが(中略)近道を欠いている可能性がある。情報を求める気持ちや好奇心があるならば、外の風が入るように自分の周りを意識的に変えなければならない。一番簡単な方法は、複数のコミュニティに属するよう意識することである。(中略)
 上手にネットワークを築いている人は、自分と異なる世界で見つけた友人や、現在は道を同じくしない旧友とも連絡を保っていることが多い。(pp.65-66)

自分自身は必ずしも近道を持っていなくてもよい。自分のある程度近くに他のコミュニティへ抜け出す近道があれば、あなたは短い距離で多くの人とつながっていられる。そこで、さまざまな種類の友人を保つのが苦手な性格の人は、せめて近道を持っている人とつながっていることを心がけるとよさそうだ。(p.67)

近道が自分の近くにあれば、個人としては、情報の入手や発信が容易になる。組織を束ねる立場としては、組織のメンバーが近道のことを意識してくれることによって、組織内全体での情報交換が円滑になる。(p.72)

近道を作るには、自分のコミュニティ内で枝を作ることよりも高いコストがかかる。(中略)また、近道を維持するためには、異なるコミュニティの人と知り合ってからも、関係を保ち続ける必要がある。この相手とは職場や学校で自然に会うわけではない。すると、たまに連絡してみるようなマメさによって、関係が維持される。(p.74)

6次の隔たりが組織作りに教えることを要約すると、風通しのよい組織を作ろう、ということだ。風通しがよい組織とは、組織内のどの2人も遠すぎない距離でつながっている、つまり、組織内で意思疎通がしやすい、ということだ。(p.76)

組織を作る側は、成員が短い距離で結ばれているだけではなく、ネットワークに三角形が不足しすぎないように、成員が三角形を結べるように仕向けた方がよいだろう。その目的の1つは、誰かが抜けたときに備えるためである。より重要な目的は、ネットワーク全体やネットワーク内のコミュニティの連帯感を醸し出して個人を動機づけるためである。個々人の精神衛生のためといってもよい。(pp.107-108)

1つの会社内の人々をつなげるといっても、異なる技術を持つ人の力を結集するのと、似た技術を持ち同じ環境下にある人をつなぎ直して円滑化を図るのと2つの場合がありうる。前者は6次の隔たり、後者はクラスターに対応し、2つは相補的なのだが、6次の隔たりばかりが強調されがちである。今後はクラスターを強化するコンサルティングというのも、案外有望なのかもしれない。(p.114)

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なんとなく、普段の会社員生活の中で経験して感じていることを、文章化してもらっているような気がしてならない。マーカーで線を引っ張った箇所は、上から目線で「おまえはどうだ」と言って引用を紹介しているわけではなくて、僕自身も、意識していてもなかなかできないことである。

今月末まで僕が3年以上を過ごしてきた職場は、上で述べられているような「成員の三角形」が出来ていない人も所々にいて、ある仕事を担当している人が急に抜けたりした場合、それをバックアップできる人がいないという事態が起きうるところだったと思う。他ならぬ僕自身が今回抜けることになり、僕のやっていた作業につて、マネジメントからヒアリングを受けるようなことが今週行われた。一応後任は来る予定ではあるので当然引き継ぎはしていくものの、職場内での連携があまりなくて、連帯感とか僕自身はあまり感じてこなかったし、1人で業績目標を背負わされて過ごすのは精神的にはきつかった。

来月から異動する部署は、もっと成員間の連携で動けるところだと思っている。仕事の内容はきついことには変わりはないけれど、周囲に自分の仕事のことがわかってくれている人がいると思えるだけでも大きな違いがあるような気がする。

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