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『プラットフォーム戦略』 [仕事の小ネタ]

プラットフォーム戦略

プラットフォーム戦略

  • 作者: 平野敦士カール、アンドレイ・ハギウ
  • 出版社/メーカー: 東洋経済新報社
  • 発売日: 2010/07/30
  • メディア: 単行本
内容(「BOOK」データベースより)
グーグル、アップル、アマゾン、楽天、Twitter、フェイスブック、任天堂…。21世紀も高成長を続ける企業に共通する「プラットフォーム戦略」とは何か。
僕が今の職場で本の出版のお手伝いをした方が、その著書の中で参考文献として挙げておられた本である。本文の中での言及はなかったので、どのような理由で本書を参考文献に挙げられたのか知りたいと思い、一度読んでみることにした。その方の著書の文脈からすると、バックグランドや専門性が異なる人々が集まってワイワイガヤガヤやれる「場」を設けることで、新しいアイデアや新しいコラボ企画が生まれてくるように仕向けることではないかと想像したが、実際に本書を読んでみた印象はちょっと違っていた。

なぜ本書が参考文献として挙げられたのか、疑問が拭えなかった。

著者によれば、日本で初めて「プラットフォーム戦略」という言葉を使ったのは大前研一氏だという。氏は本書に対する推薦文も書いておられるが、大前氏によれば、「プラットフォーム戦略」とは、「多くの関係するグループを「場」に乗せ、マッチングや集客などさまざまな機能を提供し、検索や広告などのコストを減らし、外部ネットワーク効果を創造することで、「新しいエコシステム」を構築する戦略」だという。古くは任天堂のファミリーコンピュータ、ソニー・コンピュータエンタテインメントのプレイステーション、最近ではマイクロソフトのWindows、検索エンジンのGoogle、世界的な小売業に発展したアマゾンや楽天、そして現在iPhone、iPadで世間を騒がせているアップル、さらにはTwitter、フェイスブックなどのSNSまで、昨今のビジネスは言わば「プラットフォーム戦争」とも言うべき様相を呈しているという。

確かにそうかもしれません。実際、本書で紹介されているほとんどの事例はわかりやすく、著者の言う「プラットフォーム戦略」とは何かを如実に表している。


今一度、著者自身の言葉で「プラットフォーム戦略」を定義してみると、

1.多くの関係するグループを「場」(プラットフォーム)に乗せ、
2.マッチングや集客などさまざまな機能を提供し、
3.検索や広告などのコストを減らし、
4.クチコミなどの外部ネットワーク効果を創造する
ことで、新しい事業のエコシステムを構築するという戦略です。(p.6)

このうち、僕が冒頭に述べた別の方の本の中で、この方の文脈で使っておられる「プラットフォーム」といったら、1と2のレベルまでで、3以降についてはほとんど言及しておられない。そして、1と2だけであれば、一橋大学の野中郁次郎教授が提唱されている「知識経営」や伊丹敬之教授の「場のマネジメント」の方が、この方の主張を支持する理論としては適切なのではないかと思った。

野中先生や伊丹先生が仰っていることは大前氏が「プラットフォーム戦略」と言い始めるよりも前のことだろうと思うので、本書の真骨頂は、1から4までをパッケージにしていることなのかなと勝手に理解した。でも、僕自身のモチベーションも、どちらかというと1と2までにあり、今のところ3や4までは求めていないので、何かちょっと違うなと思いながら読み切った。

読んでなんとなくわかったような気持ちにはなれる本だ。経営コンサルタントがパワーポイントでプレゼンをやっているものを、文章に起こし直したような印象で、まとまっていてわかりやすいことはわかりやすいのだが、感動があまりなくて、具体的な行動にはなかなか結び付かない気がする。

この著者の本を今後も読むかどうかはわからないが、著者が集められた事例は豊富なので、できることなら、それらがなぜ可能だったのか、プラットフォームの形成にあたって、誰がどう動いたのか、どのような環境の下でプラットフォームが形成されていったのか、組織の中での1人の社員の行動がどのように組織全体の行動にまで繋がっていったのか、つまり、形成の初期条件のところをもっと掘り下げた本を書いて欲しいなという気がした。そこの部分を強調しすぎると、野中先生や伊丹先生の主張との差別化が難しくなるというジレンマはありそうですけど…。

奇しくも最近、アップル社がiPad、iPad Miniの新機種を発表した。僕も11月の異動を前に、タブレット端末を初めて購入しようかと考えあぐねているところで、グーグルのAndroidを搭載した他社のタブレット端末にするか、iPadにするか、どうしようか悩んでおります。アップルにしてもグーグルにしても、その端末がマーケットシェアを獲得するに至った理由については、「プラットフォーム戦略」の典型例として本書でも紹介されている。

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