『ポジティブな人だけがうまくいく3:1の法則』 [読書日記]
内容(「BOOK」データベースより)フェースブックの友達関係にある某が、「〇〇代までに男がしておくべきこと」、「なぜ〇〇は〇〇なのか」といったタイトルのビジネス本、実用哲学本「しか」ない男性は苦手と書いていた。まあこの手の本は僕は「自己啓発書」と呼ぶことにしているが、それはともかく、ここでのポイントはこの手の本しか読まないというところで、決して読むのがいけないと言っているわけではない。
天才心理学者が証明した感情の“黄金比”。ビジネス、教育の現場で大注目の「ポジティブ心理学」の実践書。
本書を翻訳して出版した日本実業出版社の意図は、この本を自己啓発書として売り出したいというところにあったのだろう。この本は意外と売れているらしいし、こういうのに潜在的にすがりたいと思っていた読者というのが多かったのだろうと想像する。
では、僕自身が何故こんな本を読もうとしたのかというと、これがここ10年ぐらいの間に学術研究のフロンティアを切り拓きつつある「ポジティブ心理学」の本だからである。その開祖は、米国心理学会の会長を務めたこともあるマーティン・セリグマン博士で、いずれ博士の著書も読んでみたいと思うが、そのセリグマン博士が会長を務めていた1999年の米国心理学会全国大会にて、これまで心理学は人が抱くネガティブ心理の側面ばかりを研究してきたが、ポジティブ心理についてももっと研究を積み重ねていく必要があるというようなことを言ったのがはじまりらしい。著者バーバラ・フレドリクソンは、セリグマン博士の直系の弟子である。
そうした点から、僕はどちらかというと学術書に近い捉え方でこの本を読みはじめた。
フレドリクソンの画期的な研究結果である、上昇スパイラルに導く「ポジティブ感情とネガティブ感情の黄金比」について本書は解説しようとしている。その要点を僕なりにまとめてみると、
➀いつもかも100%のポジティブ思考状態でいる必要はない。ポジティブ思考が必ずしも成功を引き寄せるわけではなく、ネガティブ思考でいる状態も必要。
②ポジティブ思考状態とネガティブ思考状態の時間の黄金比「ポジティビティ比」は3:1であり、ネガティブ思考状態でいる時間よりもポジティブ思考状態でいる時間が3倍あると、人や組織は上昇スパイラルに入り、人の健康状態が改善するとか、仕事のパフォーマンスが上がるとか、組織だったら業績が上がるといった好循環を実現できる。
本書は、これまでのポジティブ心理学の研究成果に基づき、ポジティブ感情がいかに人生に欠かせないか、どうコントロールすればよいかを、学術的に解説している。だから僕は学術的な興味から本書を手に取ったのだが、どうやったらポジティビティ比3:1を実現できるのか、現時点で自分のポジティビティ比がどうなっているのかを知る方法を具体的に述べており、その意味では自己啓発書でもあるわけだ。単に「ポジティブが1番!」と大声で笑い合い、心の奥と対峙せずに自己をもみ消すのは、ジワジワと心をむしばみ、病理へとつながっていく危険な生き方だと著者は指摘している。
―――などとカッコいい解説を付けて述べてきたが、実は最後まで読み終わる前に図書館の返却期限が来てしまい、後ろも控えているのでギブアップして返却してしまった。尻切れトンボな読書となってしまったが、かといってもう一度借りたり買ったりして読むかというと、「う~ん」とうなってしまう。
自分のポジティビティ比がどれくらいかを把握するための自己診断テストの解説を読んでいると、なんだか自分のポジティビティ比があまり高くない、ネガティブ思考に陥っている時間の方が圧倒的に長いという現実を突き付けられたような気がして、読んでいること自体にネガティブ感を味わされた(笑)。
フェースブックの友達には、毎晩のように飲んでいて、その様子をやたらと写真掲載する人とか、食事会に出かけて何を食べたか、何を飲んだか、誰と飲んだのかを写真掲載下さる人とか、「昨日は〇〇、今日は〇〇」と、関東圏内あるいは全国各地を飛び回っている人とか、いろいろな形でフェースブックを活用されている方がいらっしゃる。休む時はしっかり休んで釣りやスキューバダイビングに出かけるとか、1週間程度の海外バカンスに出かけるとか、オンとオフのメリハリをしっかりとっておられる方が多い。僕なんぞは事前に申し込んでいた仕事がらみのセミナーですら、直前になって目の前の仕事をやり残しで抜ける心の余裕もなく、欠席してしまうことが多いし、週末にわざわざ疲れるために遠出や旅行に行こうという気にもなれず、自宅周辺でグダグダしてることが多い。そういう点ではオンとオフの切り替えがド下手だと思う。
確かに、自宅周辺でグダグダしているといっても、剣道の稽古やジョギング/ウォーキングはやっているわけで、ただただボーっとしてるわけではないし、たくさんの本を読んでその記録をブログで残すことは小まめに励行している。そういうのがポジティビティ比の改善に繋がっているのかどうかはよくわからないが、この程度のごく短い時間しかオフが作れないというところが情けなく、多くの友達に対するコンプレックスになっている。
そういう、自分でもわかっていることを改めて指摘された感じがして、あまり気持ちの良い読書ではなかった。
コメント 0