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『フリーエージェント社会の到来』 [仕事の小ネタ]

フリーエージェント社会の到来―「雇われない生き方」は何を変えるか

フリーエージェント社会の到来―「雇われない生き方」は何を変えるか

  • 作者: ダニエル ピンク
  • 出版社/メーカー: ダイヤモンド社
  • 発売日: 2002/04
  • メディア: 単行本
内容(「MARC」データベースより)
フリーエージェントとは「インターネットを使って自宅で一人で働き、独立していると同時に社会と繋がっているビジネスマン」のこと。フリーエージェントたちの実態を把握し、それにともなう社会の変化を分析・予測する。
この本は、先週、ちょうど米国短期滞在中に読んだ。フリーランス的生き方を実際に随分と見せられて日本との違いを痛感させられたところだった。また、クリントン政権下でライシュ労働長官やゴア副大統領のスピーチライターを務めていた著者のエピソードの中に、毎月第1金曜日朝8時30分の前月雇用統計発表直後の労働長官談話のエピソードが出てくるが、ちょうど5月3日(金)に発表された4月の全米雇用者数の数値が予想以上に改善していたのが話題になっていたので、本の中で描かれていた統計値発表までの政府内での動きについてリアルに理解ができた気がする。(お陰で、今週帰国してからのドル円相場の100円再挑戦や日経平均株価の高騰といった、先週末の米国雇用統計を受けた市場の流れが続いている。)

本書の中では、その米国の雇用統計では補足できない働き方をする人々が増えてきているのを正確には捕捉できていないと指摘されている。定義の仕方によれば、今では3300万人、就労可能年齢人口の4人に1人が、会社組織に縛られず、自己雇用により自分らしい生き方をしているのだという。著者自身も、大統領府のスピーチライターとして過労で倒れるぐらい超多忙な日々を送っていた中で、ふとこういう周囲に振り回されて働き続けるのが本当に楽しいのかと疑問に思い、そして職を辞するという経験をしている

今回の訪米でもまざまざと見せつけられたのは、平日の昼間でもトレイルランやサイクリングをしている人が老若男女を問わず沢山いること、そして、広い自宅に書斎や専用のトレーニングルームまで設け、自分なりのライフスタイルや働き方を実現させている人がとても多いことだった。そういう人ばかりをたまたま見かける機会があっただけではないかという指摘もあるかもしれないが、大邸宅とは言わない普通の住宅地であっても、平日夕方に自分で芝刈り機を運転している人は大勢見かけたし、住宅街のところどころからバーベキューのいい匂いが漂ってきた。通勤に地下鉄を使っているような人々も、夕方5時とか6時台になると自宅最寄り駅の改札から家路を急ぐ姿が普通に見られる。5時以降はプレイベートな時間で、子供の演奏会にドレスアップして観賞に出かけたりもできるし、夜9時過ぎないと暗くならない今の季節は、パーティーだって多い。今回お世話になった剣道の先生の1人によれば、剣道の稽古には取りあえず参加し、頭をリフレッシュして帰宅し、シャワーを浴びた後で2、3時間自宅書斎で仕事をすると仰っていた。ああなんて生活…。会社勤めをされていても、このライフスタイルの自律性は羨ましい限りだ。

自分の働き方を自律的に決めている人が多いのが米国なのだと改めて思った。

それに比べると、会社勤めというのを前提として社会が成り立っているのが日本だと思う。休暇を終えて帰国した後、僕が今抱えている仕事は、極端な話、資料を閲覧できればほとんどは職場でないところでもできてしまうような作業である。連休直後に僕が自分でセッティングした会議や打合せがあってどうしても出勤しなければいけない日はあったが、そうした会議もなく、やることが資料を読み込んでレポートを書いたり、その資料に赤ペンを入れたりするような作業しかない場合は、職場にまで足を運ぶ必要性をあまり感じない。

そういう意味で、連休明けの今週の仕事では、休暇疲れもあったのかもしれないが、日によっては体がだるく、職場までの道のりが途方もなく遠いものに感じることもあった。

しかし、問題は職場以外の場での執務環境の確保にもある。そもそも日本だと自宅で仕事というのすら落ち付いてできない。家は狭いし家族もいる。かといって日中や通勤帰りにスタバとかに行っても、同じようなことを考えてそこで長時間仕事や勉強をやっている人で店内が溢れかえっている。席を見つけられずに仕方なく店を出るパターンが多い。図書館の自習スペースも言わずもがなだ。

CIMG2947.JPG

上の写真は、僕が10年前に米国駐在していた頃、仕事からの帰りに立ち寄って、当時通っていた大学院のテキストを読んだり、提出レポートの構想をまとめたりするのに利用していたスタバだ。ここがあったから修士の学位が取れたと言っても過言ではない。10年経って再び訪ねてみると、心なしか床面積が拡張され、席の数が増えたような気がする。本書の中でも登場するお話だが、スタバのCEOは、長時間店内で過ごしてもらい、そこで読書や商談をしてもらえるように、床面積を拡張して座席数を増やしたのだという。

夕方から夜のスタバや図書館があてにならない中、僕が思い付いたのはむしろ早寝早起きして早朝の空いているファミレスで、テーブルの上に資料を広げて2、3時間仕事に集中するという方法である。お金がかかるので毎日はできないが、週末に無理やり作業時間を捻出するにはかなり有効だ。

米国以上に制約がある中で、自宅に近い場所で仕事や勉強に集中できる場をどう作れるのかは大きな課題だと本書を読みながら改めて痛感させられた。同じことを考えている人は都市部では多いのだから、行政も企業も知恵を絞ってどうやったらニーズに応えられるか考えてみて欲しいと思う。

さて、こう考えてくると、少なくとも今僕が会社で請け負っている仕事は、性格的にはフリーエージェントに近い働き方が許されているものなのかなと思う。そろそろ異動の時期なので、現在の会社で働き続けることを前提として場合にはいつまでも今のような働き方を続けるのは難しい。ただ、いったんその蜜の甘さを知ってしまうと、会社の机にしがみついて長時間の勤務に精を出すという生き方に再び体が慣れられるかどうかが心配だ。それに、今年50の大台に乗り、あと5年もしたら給料は大幅にカットされるのが目に見えているのだから、組織の中でだけではなく、自分のこれまで得てきた知見で自律的に食っていける仕事の仕方を模索していくべき時期に来ていると思う。

そのための大前提は、FA宣言した時に自分に何ができるのか具体的なセールスポイントがあることだ。それなしにFA宣言すると、人材派遣会社に自分の労働対価の何割かを吸い取られながら黙々と単純労働を繰り返すような日々に甘んじる結果に陥る。最初から独立起業を志す人であっても、一度は会社勤めをしておくことが必要だというのが本書のメッセージでもある。最初から独立させることを前提にしていて、社員の平均年齢が非常に若い企業も日本にはある。そういうところで短期間でビジネススキルを学び、人的ネットワークを拡げておくことが、独立後の起業の成否に大きく繋がる。

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